第371話、わたくし、ソビエト空軍の偉大なるSS大佐ですの。(その2)
「「「「「──何ですって、大陸北方において、これまでに無く強大なる、『悪役令嬢結界』が発生したですってえ⁉」」」」」
魔導大陸特設空軍作戦司令室に緊急招集された、
「……ええ、本当よ。場所は『紅いシロクマ』連邦共和国が密かに設けていた、空軍省の秘密研究所で、何とそこに旧『ナ○スは嫌いなのです』第三帝国の科学者を強制連行して、かつてない革新的な航空機用のエンジンを開発させていたんだけど、その中に元『魔法令嬢』の少女科学者が含まれていて、彼女が突如『悪役令嬢』化して、研究所そのものを潰滅させて逃走したそうよ」
「「「「「なっ⁉」」」」」
現在
「空軍の研究所を、潰滅させたですと⁉」
「いくら悪役令嬢と言っても、やり過ぎなんと違います?」
「……国を滅ぼされた上に、強制連行なんかされたんだから、恨み骨髄ってこと?」
「それで、その悪役令嬢は、現在どうしているのですか?」
驚くばかりのヨウコちゃんとユーちゃんに対して、割と冷静に状況を分析する、メアちゃん。
そして最後に、至極もっともな疑問を呈したタチコちゃんに対する、ミルク先生の返事はと言うと、
「……わからないわ」
「「「「「は?」」」」」
「わ、わからないって、どういうことです?」
「まさか、『悪役令嬢化』が、治まったとか?」
「……いや、それは無いでしょう。一度悪役令嬢化してしまったら、後は堕ちるのみよ」
「だったら最初から、それほど大幅な悪役令嬢化は果たしておらず、現在もあまり目立たずに、逃避行を為し得ているとか?」
元帥閣下兼保健医先生の、他の誰よりもこの件に関する情報を握っているはずの御仁のものとは思えない、あまりにも自信なさげな言葉に、それぞれ首を傾げるばかりの(
「もちろん、一度悪役令嬢になった者が、元の普通の人間や魔法令嬢に戻ることなんて、基本的にはあり得ないんだけど、彼女の『悪役令嬢結界』自体が、少々特殊なものらしいのよ」
「……特殊って、一体どのように?」
「普通、悪役令嬢がその超常の力を十全に振るうためには、夢の世界等の、物理法則が適用される現実的空間から隔離された、特殊な空間を構築することが必要でしょう? それに対して彼女──かつての『ナ○スは嫌いなのです』第三帝国きっての、ジェットエンジン技術者にして
「「「「「『悪役令嬢結界』の物質化、ですって⁉」」」」」
「ええ、彼女は何と、Yakー15やMiGー15やILー22やTuー95等の、連邦に抑留された旧第三帝国の技術者が生み出した、各種の革新的ジェット機を、任意の時と場所にて自由自在に具象化させて、狙った相手や施設や地上兵力等を、攻撃──いえ、『殲滅』することができるの」
「「「「「──なっ⁉」」」」」
「今おっしゃった機体ってすべて、『あちらの世界』では名だたる、傑作機揃いじゃないですか⁉」
「しかも、小型で高速な戦闘機と、爆撃を中心に偵察や輸送等の任務もこなせる大型機が、満遍なく配置されとるやん!」
「それを、自分が必要な時だけ実体化させて、敵対勢力を攻撃し放題ですって?」
「世界や時代すらも問わぬ、『航空兵力最強論』からすると、文字通りの『無敵』の実現以外の、何物でも無いではありませんか⁉」
──しかし、
「ちょっと待ってください、ミルク先生! ものすっごいソ連機マニア以外は、さらっと流してしまうかも知れませんが、今最後に、『Tuー95』とおっしゃっていませんでしたか⁉」
「……ええ、言ったけど、それが何か?」
「いやいや、つまり今名前を挙げられた機体って、もはやなりふり構わずメタ的なことを申しますと、そもそもすべて、『あちらの世界』の第二次世界大戦後のソビエト連邦において、敗戦国であるドイツ第三帝国から強制連行してきた、ドイツ人技術者に開発されたものばかりなんですよね?」
「うん、まさにそのドイツ人技術者陣における中心人物こそが、かつてユンカース社のジェットエンジン開発部門に在籍していて、かの人類史上初の実用ジェットエンジン『Jumo004』の生みの親の一人とも言える、フェルディナント=ブランドナー
「じゃ、じゃあ、Tuー95って、実はドイツ人技術者によって、開発されていたわけなのですか⁉」
「いえ、Tuー95そのものというわけではなく、その主動力たる、『あちらの世界』における最高傑作ターボプロップエンジン、『クズネツォフNKー12』の開発を主導したそうなんだけど……」
「それって、高性能ジェットエンジンをベースにして、当時最も理想的な減速ギアや、大胆極まる特大の二重反転プロペラ等を、効果的に付加することによって、『あちらの世界』の21世紀現在においても最高性能を誇る、まさにこれぞ『ターボプロップエンジンの極地』のことですよね⁉」
「……
いかにもあきれ気味に大きくため息をつきながら、ミルク先生が何やらおっしゃっていたようだが、そんなことなぞ耳には入らなかった。
それほど現在の
そして、その昂ぶりに抗うこと無く、
「──ひゃっふううう! さすがは、『ナ○スの科学は世界一イイイ』!!!」
「「「「「ちょっ、アルテミスさん? 何その唐突なる、ご乱心は⁉」」」」」
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