第333話、わたくし、軍艦擬人化美少女を異世界転生させる方法は、3つほどあると思いますの。(前編)

「はあい、『いつでもどこでも何度でも、あなたのスマホのお邪魔する気満々』のキャッチフレーズでお馴染みの、キュートな『都市伝説』の女の子、あたし『メリーさん』デッス!☆」




「──そんなメリーさんがいますか! 第一あなたのキャッチフレーズは、『あたしメリーさん、今あなたの後ろにいるの』でしょうが⁉」




 ここは、世界宗教『聖レーン転生教団』総本山聖都『ユニセクス』の、教皇庁地下最深部に極秘に設置されている、『アハトアハト最終計画研究所』。


 くたびれきっている上に汚れが目立つ白衣を、聖職者お仕着せの漆黒のカソックの上に羽織っているその姿は、いかにも『マッドサイエンティスト』を彷彿させるものの、実はこの教団最高峰の頭脳が集結している研究所の、チーフ研究員にして実質上の最高責任者である、私ことアルベルト=フォン=カイテル司教は、ボサボサに伸びきった長髪をボリボリとかきながら瓶底眼鏡の奥の瞳を細めて、すぐ目の前にいきなり出現した、名実共に『非常識』を体現している、見かけ五、六歳のほどの金髪碧眼の絶世の美少女に向かって、さも忌々しげに怒鳴りつけた。




「堅いことは、言いっこなしなの! 今回は【連載第333回記念特別番外編】だから、前後の脈略なんてまったく考えずに、一編ワンエピソードまるまるお祭り騒ぎでOKなの!」


「番外編多いな、この作品⁉ しかも『333』回って、一体何の記念なんですか?」


「ちゃんとタイトルに書いてあるの。せっかくの番外編だから、前回までの【座談会】で取り沙汰された、『艦む○の異世界転生の方法』を、、どのようにして実現すればいいか、三案ほど考案してみようと思うの♡」


「──またよりによって、すっげえヤバいネタが、来たもんだな⁉」


「こういうネタは、早い者勝ちなの。パクられる前に、さっさとやりおおせるに限るの」


「……いや、この企画自体が、パクリのようなものではないのですか?」


「『何度も同じことを言わせるな!』なの! 旧帝国海軍の各種艦船は、歴史上れっきとして実在していたのであり、創作物上の著作権問題なぞは存在せず、兵器の擬人化自体についても、著作権を問題にすると、すべての作品が存在できなくなるから、お互い様なの!」


「いつまでも、そのような強気の姿勢でいられたら、いいんですけどねえ……」


「つべこべ言わずに、あなたはあたしが前もって依頼していた、実験の結果だけを、今この場で発表すれば、それでいいの!」


「──何でそんなに、『上から目線』なのですか⁉ あなた自身が先の【座談会】でおっしゃっていたように、我々教団とあなたとは、単なる一時的なビジネスパートナーでしょうが⁉」


「そうは言っても、今回の【ハロウィン特別編】における『火消し役』は、相当骨が折れたの。──それこそ、著作権ギリギリだったの」


「──うっ」


「ただでさえ、『第666獣化形態ビーストモード』は、膨大なる魔導力を消費するというのに、肉体だけでなく精神までも、非常に疲弊してしまったの」


「た、確かに、今回の件の決着は、あなたに頼る他はなく、大変ご苦労をおかけしたのは、厳然たる事実でありますが……」




「だったら、少々無茶な要求ぐらい、笑顔で呑んでくれるべきなの。それにそもそも、こんなことを頼めるのは、現在『世界そのものを創り出す』と行った、大規模なであり、しかも『クトゥルフ神話』における不定形暗黒生物『ショゴス』を、宗教観や倫理観を度外視して使い放題状態にある、あなたたち教団以外には無いの」




 ──くっ、さすがは名うての『都市伝説』、いかにもいたいけな幼女の外見をしながら、老獪なる策士そのままに、的確にこちらの痛いことを突いてきやがる。


「……わかっておりますよ、ご依頼の件についてはちゃんと、準備万端ご用意いたしております」


「そう来なくっちゃなの、もったいぶらずに、早く見せるの!」


「──では最初に、こちらからどうぞ」




   ☀     ◑     ☀     ◑     ☀     ◑




実験例ケースその①】



「──大和やまと、行きまーす☆」


「行くな! あんたや武蔵むさしを出航させるだけで、どれ程莫大な重油が必要になると思っているの⁉」


「……お陰で、比較的燃費のいい、私たちこんごう四姉妹が、酷使されるばかり」


「──金剛お姉様が、『ルー語』を、使っていない、だと?」


「『ルー語』って、何よ? 私は生粋の、英国生まれよ⁉ キングスイングリッシュ、バリバリなのよ!」


「ふふふ、実は今日は私の、進水式だったりするんだよ!」


「おめでとう、ずいかく、お姉ちゃんも、嬉しいわ♡」


「……グレイゴーストめ、いつか必ず、この手で倒してみせる……ッ」


「えっ、あなた、『あっちのほう』の、瑞鶴だったの?」


「──あっちも何も、私はこの世に、『一隻』しかいないよ⁉」


「……どっちかというと、しょうかくさんのほうが、入れ替わっても、わかりにくいと思うけどねえ」


「そうそう、何かぱっと見ただけじゃ、区別がつかないよね?」


「ほら、あれよ、『ターンエー・ガン○ム』の、デ○アナ様とキ○ル嬢!」


「「「それだ!!!」」」


「……ふん、五航戦ごときが、図に乗りおって」


「うふふ、いいではないですか、さん、こうして私たち二人、同時に発見サルベージされたことだし♡」


「──まあ、あかさんったら♡」


「……あ、あのお、今日は私の、進水式でも、あるんですけどお?」


「あら、うみかぜさん、あなたもいたんだ?」


「ひ、ひどい、ゆうだちさん、同じ『イ○ソ艦隊』なのに⁉」


「また、こうして、皆さんに会えて、丹陽タンヤン感激です!」


「もちろん、このヴェールヌイもだよ、ハラショー!」


「──こら、それは戦後の『倍賞艦』としての名前でしょう? ゆきかぜちゃんにひびきちゃん?」


「「ああ、みやさん、お久し振りい!」」


「おお、まだ生きていたのか、かみかぜばあさん」


「いやだ、人のことは言えないでしょうが、ながおばあちゃん?」


「──ちょっと、歳のことは言わないでよ、お二人さん⁉」


「「てんりゅう大先輩、チースッ!」」


「『先輩』も、禁止!」


「「わははははははははは」」




※まだまだネタはいっぱいあるのですが、キリが無いので、この辺にしておきます。




   ☀     ◑     ☀     ◑     ☀     ◑




「……何なの、これは?」




海底の魔女セイレーン』秘密基地たる巨大要塞『ルルイエ』内に密かに設けられた、『深海鎮守府』に勢揃いした、まさしく『軍艦の娘さんたちによる語らい』と形容する他はない、姦しい会話の様子を、当研究所に備え付けの遠隔モニターを通して目の当たりにして、呆然とつぶやく都市伝説の美幼女さん。


「何なのも何も、あなたからリクエストを受けていた、『異世界転生のシステムを利用した、軍艦と美少女のハイブリッド実験の、サンプルその①』ですけど?」


 そのように、実験責任者である私がしれっと答えれば、今度は彼女には珍しく血相を変えて、こちらに掴みかからん勢いで食ってかかってきた。




「『軍艦と美少女のハイブリッド』って、ただ単に、が、それぞれ女の子の声音でしゃべっているだけじゃないの⁉」




 存在自体が『非常識』なメリーさんからの、「おまえのほうこそ、非常識だろうが⁉」とでも言わんばかりの、痛烈なるツッコミのお言葉。


 そうなのである。


 いかにも某ソシャゲのパクリそのままな会話シーンであったものの、別に不自然に軍艦の艤装をくっつけた美少女たちが、キャピキャピおしゃべりに花を咲かせているわけではなく、モノホンの軍艦同士が『女の子言葉』で語らい合うと言った、ある意味『SAN値』の強度を試される、ものすっごく狂気かつ不条理な絵面シークエンスだったのである。


「──いや確か、物言わぬ剣や自動販売機に異世界転生する作品等もあったことだし、人間が軍艦に転生するやつがあっても、構わないではありませんか?」


「構うとか構わないではなく、これのどこが『軍艦の擬人化美少女』なんだよ⁉」


「もちろん、転生していただいたのは、現代日本でも選りすぐりの美少女の方ばかりなのですけど?」


「何つう、美少女の無駄使い! ──ていうか、そもそもどうして軍艦が意思を持っていて、当たり前のようにしゃべれているのよ⁉」




「お忘れになっては困りますが、『彼女』たちは見かけ上は軍艦ですが、そのすべてが、不定形暗黒生物である『ショゴス』によって形成されているのですよ? 脳みそが存在して、感覚器官や発声器官があっても、別におかしくは無いでしょうが?」




「──最近この作品、『ショゴス』とさえ言っていれば、すべて許されるとでも、思っているんじゃないだろうなあ⁉」




「これを、『艦○れ』だと、言い張る勇気!」


「やかましい! どこぞのイラスト投稿サイトの『タグ』かよ⁉ これだったらむしろ、まさにその某ソシャゲの『パクリ』であったほうが、よほどましだったよ!」







※以下、【後編】に続きます♡

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