第308話、わたくし、最初の艦む○、『エースの赤城』ですの♡(後編)

「──こちら、エース1、各機、状況を報告せよ」




『──何よ、ミルク、こんな寄せ集めの部隊で、肩肘張っちゃって』


『──そうよ、「お母さん」、リラックス、リラックス』


『──我らはもとより、一騎当千のつわもの揃い、何か問題があるとでも?』




 大海原を極東島国方面へと、最新鋭ジェット機Ta183『フッケバイン』を駆って四機編隊飛行シュバルムしながら、隊長『エース1』である私こと、魔導大陸特設空軍次官にして、聖レーン転生教団直営『魔法令嬢育成学園』保健医でもある、エアハルト=ミルク(一応現役の元帥)が、僚機の(先ほどの発言順に)エース4からエース2とエース3へと問いかけたところ、とても作戦行動中の空軍パイロットとは思えない、だらけきった返答を返してくる、小学校教師に魔法令嬢にメイドさん。




「……あれ、私以外のメンバーは、(いかにもラノベあたりの登場人物にありがちな)顔ぶれ的にも、別にだらけきっていても、構わないような──いやいやいや、あくまでも『表の顔』はそうだとしても、その本性は、転生教団特務司教に、特設ジェット戦闘機部隊パイロットに、魔法令嬢の使い魔にしてかいめいじゅうだったりするんだから、構いやしないのだ! それに最近は、たとえメイドさんといえども単身で、軍艦並みの戦闘能力を秘めているそうだし。──ていうか、メア! どさくさに紛れて、なに人のことを『お母さん』なんて、呼んでいるのよ⁉」


『──いやもう、「アニメ版アズ○ン」ネタは、いいから』


『──だって「この世界線」では、あなたは私のお母さんでしょう?』


『──まったく、メイドの私まで、駆り出すなんて。文句を言いたいのは、こっちのほうですよ。……ああ、アルテミスお嬢様は、今頃何をしておられるのでしょうか?』




「──もう、みんなもうちょっと、真面目にやってよ!」




 ついにキレ気味に叫んでみたものの、そのようなことで動揺するような『可愛らしいタマ』は、今この場には存在していなかった。


『……そうは言うけど、そもそも表向きは育成学園の初等部の教師の私が、何で動員されたのか、さっぱりわからないんだけど?』


『一応私に限って言えば、正規のジェット機パイロットとはいえ、それこそJS女子小学生に過ぎないんだしね』


『私なんて、メイドで使い魔ですよ? 魔法少女が箒やスト○イカーユニットを使って、空を飛ぶのならわかりますが、使い魔がジェット戦闘機に乗って出撃するって、一体どこのミリオタWeb小説なのですか?』


 ……こ、こいつらときたら、もう〜〜〜〜〜!!!


「私たちがこうして選抜されたのは当然、この世界の『真実の姿』を承知している、『境界線の守護者』だからに決まっているでしょうが⁉」


『えっ、その裏設定、こんなところで明かしてしまうの⁉』


『まさか、この【魔法令嬢編】も、いよいよ大詰めとか?』


『そもそも「境界線の守護者」とか、御免被りたいんですけどねえ。某「即死チート」作品にたとえれば、「侵略者アグ○ッサー」に対する「賢者」のようなものじゃないですか? それって立派な「死亡フラグ」では?』


 ……もう、嫌。


 何が悲しゅうて、サキュバスの私が、こんな自分勝手な奴等の、まとめ役をやらなければならないのよ?


 普通のWeb作品だったら、他でもなくサキュバスこそが、いろいろと騒動を起こす役回りでしょうが⁉


「──いいわよ、みんな、勝手にしてちょうだい! 私知らないから!」


『……おいおい、いい歳して、いきなりキレないでちょうだいよ。一応「任務」の最中なんだからさあ』


『つまり、またしてもポッチ氏のサルベージ船が、「問題物件」を引き当ててしまったために、私たち「ワルキューレ隊」だけに、任せられなくなったってところでしょう?』


『特に、アルテミスお嬢様を、「真実」に触れさせるのは、時期尚早ですものね』


「──ちょっ、みんなわかっていて、私のことをおちょくっていたわけ⁉」


『あははは、怒らない怒らない』


『ちょっとした、冗談じゃない、「お母さん」?』


『──おっ、どうやら「目標ターゲット」が、見えてきたみたいですよ?』


 ……くっ、こいつら、散々人のことを、いじり倒しやがって。


 見てなさい、後でたっぷりと、思い知らせてやるからねえ⁉


 ──まあ、そんなことよりも、確かに今は、『任務優先』ね!


「ほら、! 『例の台詞』、お願い!」


『えっ、──ああ、「もくひょうを、肉眼で確認……か」って、いい加減にしないと、怒られるわよ⁉』


 などと、毎度『お約束』の掛け合い漫才をしているうちに、わざわざ口に出すまでも無く、あまりにも巨大すぎる『目標ターゲット』が、細部まで手に取るように確認できる距離へと、迫ってきた。




 すぐ近くに待機している大型のサルベージ船が、あたかもミニチュアに見えるほどに、巨大なる裸身を何ら恥じることなく晒しつつ、実物大のぜろせんを鏃とする弓矢を構えている、長い黒髪もつややかな、極東風美人。




「……あれが、先史文明の遺物たる空中母艦『KAGA』に引き続いて発見された、『最初の軍艦娘バトルFガール』ってわけね⁉」


『あいつ、また性懲りもなく魔導大陸目掛けて、自爆カミカゼアタック専用の零戦を、ぶっ放す気よ!』


『今のところは全弾、沿岸部に着弾しているので、目立った被害は無いけど、このままにしておくわけにはいかないわ!』


『でも、いかがします? 我々の武装ごときでは、いかんともしがたいかと思いますけど?』


 ──確かに。


 相手は何と言っても、旧帝国海軍が誇る正規空母の、擬人化美少女型決戦兵器なのである。


 本来なら、雷撃機の十数機も、必要であろう。




「……いや、ちょっと待って、あの『軍艦娘バトルFガール』、何だか見覚えがない?」




『『『そ、そういえば!!!』』』


 先史文明の人型決戦兵器に対する妙な既視感に、私たちが戸惑っていると、当の『KAGI』が、こちらへと視線を向けた。




 ──特に、識別コード『エース4』の、ミサト=司教へと。




『……ちょっと、何よ、私がどうしたと言うのよ⁉』


『『「…………」』』


『み、みんなまで、どうしたのよ⁉ 何か言ってちょうだい!』


「……ミサト」


『何さ、ミルク』




「随分と大きな、『隠し子』がいたものよね」




『──な、何言っているのよ、違うわよ⁉』


『でも、あんなにそっくりですし』


『……ちゃんと認知してあげないと、娘さん、可哀想ですよ?』




『だから、違うと言っているでしょうが⁉ ──ああ、もう、これは転生教団における極秘事項なんだけど、特別に教えてあげるわ! あのKAGIは、他でもなく、「私のプロタイプ」に当たるのよ!』




『『「ええー⁉」』』


「え、あれって、『すべての軍艦娘バトルFガールのプロトタイプ』なんでしょう⁉」


『……と、言うことは』


『ミサト先生も、艦む──もとい、「軍艦娘バトルFガール」だった……?』




『そうじゃなくて、聖レーン転生教団の影の実行部隊、異端審問第二部の、私のプロトタイプなわけよ!』




「……ああ、そうか」


『確かに、教団の異端審問第二部は、人外の化物シスターばかりですものね』


『そうか、異端審問部は、「軍艦娘バトルFガール」同等の、戦闘能力を秘めていたのですか……』


『いい? これって、トップシークレットですからね? 漏らしたら、「宗教裁判」沙汰よ! ……まあ、ここにおそろいの「化物」の皆さんからすれば、「お互い様」でしょうけどね』


『『「──誰が、化物よ!!!」』』


 そのように、私たちが馬鹿騒ぎを行っている間に、物騒な弓矢を消し去り、ミサトの載っているTa183に向かって、(むき出しの)胸に手を当て一礼するKAGI




『──コマンダー認証、完了。それに応じて、自動全方向攻撃行動、停止。これよりはあなた様こそが、当艦の「司令官コマンダー」でございます、どうぞ幾久しく、よしなに』




『おまっ、なに勝手に、人のこと、自分の「司令官ごしゅじんさま」に設定しているのよ⁉』


「そうね、そこはやはり、『提督アドミラル』のほうが、『艦○れ』っぽくて、モアベターだったわよね」


『私は「アズ○ン」派なので、「指揮官フリートコマンダー」が良かったです』


『私は、「百合レズー○アーン」派──げふんげふん、「アニメ版アズー○レーン」派なので、穢らわしき男ども──げふんげふん、「提督」も「指揮官」も必要ないと思います』




『あんたら、他人事かと思って、言いたい放題言うんじゃないわよ⁉』




 大海原に響き渡る、ミサトの絶叫。




 こうして無事に、(『アニメ版アズー○レーン』における、『指揮官不在問題』を解決しつつ)KAGIの回収も終え、私たちは任務を達成したのであった(w)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る