第306話、わたくし、最初の艦む○、『エースの赤城』ですの♡(前編)

「……まさか続け様に、『KAGI』まで、見つけてしまうとはな」




 その時私こと、新大陸きっての資産家で、現在話題の的の冒険家でもある、ポッチ=アランは、巨大なサルベージ船の管制室コントロールルームの司令席に座しながら、我知らずにつぶやいた。




 ほんの昨日、先史文明の秘密の鍵を握ると思われた、かつての古代兵器、巨大空中母艦の『KAGA』を発見しつつも、謎の武装勢力の特攻機部隊に襲撃されたり、その大ピンチを救ってくれた魔導大陸特設空軍のJS女子小学生パイロットチームから、KAGAそのものを横取りされてしまったりと、筆舌に尽くしがたい大騒動があったばかりだというのに、何と新大陸への帰路において、当最新鋭サルベージ船に搭載している、深海探索レーダーが、KAGAとほぼ同じ規模の大きさを誇る、先史文明の遺物を探し当てたのである。


「……あれだけ、彼女たちに面と向かって、『私のほうはこれからも、先史文明の秘密に取り憑かれた冒険家の役割を、ちゃんとこなしていくつもりだ』とか何とか、言ったばかりなのに、舌の根も乾かぬうちに、前言を撤回するわけにはいかないよなあ」


 元々KAGAを持ち帰って、本国の研究所で徹底的に調査する予定だったので、今からKAGIのサルベージを行うための、資材や人材や本国までの燃料等の必要な物資は、十分に残存しているのだ。


 後は、総責任者である私の、決断のみにかかっていた。




「──何を悩む必要があるんです、ポッチさんらしくもない」




 すると突然、あたかもこちらの胸中を見透かすかのような言葉をかけられてしまい、思わず振り向けば、右隣の副長席で、いかにも好好爺といった風貌の男が微笑んでいた。


「……ルーク」


「私たちは皆、ポッチさんを慕って、今ここにいるのです。あなたがあなたの『冒険心』に則って行動する限り、命令を拒否する者なぞいません。──さあ、あなた自身のお望み通りに、決断なさってください」


 まるで私の心を後押ししてくれるかのように、やんわりと決意を促してくれる、最も信頼を置く『我が片腕』。


 ……さすがは、ルークだな、私が最も聞きたかった言葉を、的確に言い当ててくる。


 それぞれ自分の席に着いている、他のクルーたちも、やる気に満ちた目つきで、私のほうを見つめていた。


 ふふふ、本当に私は、良い部下たちに恵まれたものだな。


 ──とは言え、全面的に、心を許すわけにも、いかなかった。


 例えば、腹心のルークは、確かに仕事上は頼りになるが、かの偉大なる極東一のクリエーター、パヤオ=ヤザキ氏に言わせれば、「ポッチ=アラン氏のサルベージチーム所属の、ルーク副長こそが、世界中で最も、腹黒い男と言えよう」と断言なされるほどに、元コンピュータ技師の私なんか及びもつかないほどの、長きにわたる冒険家人生の中で、無能なトラブルメーカーの部下たちを、『事故』等を装って何人も始末してきたなどといった、黒い噂が絶えなかったりするのだ。


 ……う、うむ、ここのところは、私まで『無能な上司』と思われて、けして『下克上』されないようにするためにも、即刻断を下すべきか。




「──よし、みんな、早速サルベージの準備に取りかかってくれ! 今度こそ我々の手で、先史文明の貴重な遺産を、引き上げようではないか!」




「「「おおーっ!!!」」」


 総司令である私の命令一下、熱気と喧噪に包み込まれる、管制室。


 うんうんと、にこやかに頷く、なぜか瞳だけが笑っていない、ルーク副長殿…………怖っ。




 ──そんななかに、私の左手を包み込む、小さな手のひら。




「……君」


 おもむろに振り返れば、そこにいたのは、とてもクルーの一員とは思えない、純白のワンピースを幼い矮躯にまとった、とてつもなく可愛らしい四、五歳ほどの女の子であった。


 こちらを気遣うように見つめている、純真無垢なるつぶらな瞳。


「……ええと、確か『らな』ちゃん、だったかな?」


 そうなのである、実は彼女こそは、昨日のKAGAにまつわる騒動以来、なぜか私にひっついて離れようとしない、ジェット戦闘機He162の妖精的存在、『ザラマンダー幼女団』の一人であったのだ。


 しかし、なぜかあたかも『実の孫娘』であるかのようにも感じられる、彼女と一緒にいると、自然と心が温かくなり、悩みや不安が払拭されるのも、また事実であった。


「そうか、私を勇気づけてくれているのか、ありがとうな」


 そう言って、部下たちには定評がある、強面こわもて顔をどうにか笑み歪ませると、感情なぞ無いと思われていた、人形そのままの端整なる小顔が、まったく何の前触れもなく、初めての微笑みを浮かべたのであった。




 まさしくそれは、『天使の微笑み』であった。




「──うおおおおおお、らなたん、きゃわわ! らなたん、最高! やっぱりパ○オ監督の最高傑作は、『未来少年コ○ン』だぜ!」


 強面サルベージ親方が、ペ○修羅道へと、堕ちた瞬間であった。




「……そこ、あんまりうるさいと、粛正しますよ?」


 ヤベえ、あっちはあっちで、いつも笑顔を絶やさないはずのルークが、表情を一切消し去って、氷のような視線でこちらを見つめてやがる。


 ここは自重して、さっさとサルベージ作業を開始することにするか。


 そのように、今回も前回に引き続き、古き良き『パ○オ監督初期作品大リスペクト大会』を繰り広げていた、


 まさに、その刹那であった。




「──指令、直下の海底最深部に、高エネルギー反応!」




 突然、大声を張り上げる、分析官の女性スタッフ。


 そしてそれに引き金にするようにして、次々と声を上げていくクルーたち。




「発現元は、KAGIかと思われます!」


「いや、待て、これは……ッ」


「そ、そんな、馬鹿な⁉」




「どうした、報告は簡潔明瞭に行え!」


 そんな私の叱咤の声に対して、更なる驚愕の言葉を返してくる、クルーたち。




KAGIが……KAGIが、変形しております!」


「現在、形状不安定!」


「量子解析装置による、波形パターンも、赤から青へと移行中です!」


「違う、このパターンは、まさか──」


「白、白です、分析パターン、白!」




「間違いなく、『軍艦娘・バトルFガール』です!」




 ──な、何だと?




 世界をたった七日間で滅ぼしたという、先史文明の最終人型決戦兵器が、いまだ生き残っていて、しかも軍艦から人型への変形能力すら保持していただと⁉




「──目標、浮上します!」


「映像、出ます!」


 クルーたちの怒鳴り声に応じるようにして、宙空に浮かび上がる、巨大なるホログラム映像。




「「「──なっ⁉」」」




 海面上へと姿を現す、髪の毛をも含む、一糸まとわぬ全身のすべてが、純白に染め上げられた巨体。


 そして見開かれる、鮮血のごとき深紅の瞳。




 ──まさしく、『人魚姫セイレーン』、そのままに。




「……まさか」


「あれが……」




「──そうだ、あれこそが、最初の軍艦娘バトルFガールKAGIだよ」



















「……司令、パ○オなのかエヴ○なのか、どっちかに統一してくださいよ?」


「あ、いや、ルークさん、それは作者に言ってもらえるかな?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る