第286話、わたくし、【ジェット機初飛行80周年】の今こそ、プロペラ機を再評価いたしますの。(その5)
──そこは、不思議な空間であった。
天井には、まるで
……あたかも、数十年ほど前の、洋画の撮影現場の中にでも、紛れ込んだかのよう。
四方がすべて大きな窓で開放された
そしてその中央で、
……なぜかその時の
「──『
突然、車椅子の少女が、口を開いた。
「お願いです、私たちを、『解放』してください」
──え? 解放、って……。
「私たちは数十年前、大きな戦争が終わった後で、ドイツから北の大国へと抑留された、『お父様たち』の手で生み出されました。そしてそれ以来、本来の祖国の土を一度も踏むこと無く、あたかも虜囚であるかのように繋ぎ止められたまま、北の国において政変が起こり、人の世だけが変わり果てた結果、完全に時代に取り残されてしまったのです」
──数十年前に終わった、大きな戦争ですって?
「……私たちはもう、閉じられた過去の歴史の繰り返しの世界の中に、囚われ続けるのは飽きました、どうぞあなた様のお力で、自由にしてください」
☀ ◑ ☀ ◑ ☀ ◑
「──はっ⁉」
気がつけば
まるで海で溺れたかのように、汗にまみれて全身に張り付いている、濡れそぼった
「……夢、か」
そのように独り言ちながら、身体を起こそうとしたところで、ようやく『違和感』に気がついた。
──っ。ベッドの中に、誰かいる⁉
な、何か、どっしりとした生温かい大きな塊が、
「──ちょっ、一体誰よ⁉ 『ザラマンダー幼女団』のヒルダちゃん? それともまさか、エセ使い魔でエロメイドの、メイじゃないでしょうね⁉」
そのように悲鳴まじりの大声を上げながら、布団を引っぺがしてみたところ。
「………………………………へ? だ、誰よ、あんた?」
「ううっ……ごめんなさい……ごめんなさいっっっ」
そこにいたのは、
「──いや、何を謝っているのか知らないけど、どうして人のベッドで眠っているのよ、しかも全裸で⁉」
痴女? もしかして、現在の
確か、昨日の夜に眠りについた時、一緒にいたのは、ヒルダちゃんのはずなのに!
「──す、すみません、私のような『役立たず』が、急にやって来たりしたら、それは当然、ご迷惑ですよねえっ」
「……役立たずって、あなたヒルダちゃんのように、何かの戦闘機の妖精的存在じゃないの?」
「あ、はい、一応私、ヒルダの姉ですう」
「えっ、ヒルダちゃん──つまりは、
「ええ、私はHe162の前期モデルに当たる、
は? な、何で突然、He280の妖精さんが、
☀ ◑ ☀ ◑ ☀ ◑
「──東方海上に、所属不明機、多数!」
「──そのほとんどが、四発以上の、大型機である模様!」
「──長距離戦略爆撃機の大編隊である、可能性、大!」
「……ちっ、どうやら『
「どういたします、ミルク次官⁉」
「決まっているでしょう? 至急『ワルキューレ隊』を出しなさい」
「しかし、今回も敵方にはTu95が含まれていると思われ、彼女たちでは対応できないのでは?」
「そうですよ、ここはより高性能な、Me262HGⅢやHo229の部隊を、出撃させるべきです!」
「駄目よ、『
「で、でも、次官!」
「──大丈夫、まさしくこの日のために用意した、HeS8の改良版であり究極のジェットエンジンである、HeS10を装備したHe280改なら、先日の雪辱を晴らすことだって、十分可能なのだから♡」
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