第264話、わたくし、Me262こそが、至高の戦闘機だと思いますの。(その3)

メリーさん太「──というわけで、本編のほうもなかなか白熱しているようですが、ここからは前々回に引き続いて、【連載第262話突破】を記念しての、人類史上空前絶後の最高傑作ジェット戦闘機、Me262の詳細なる解説コーナーを行っていこうかと思います!」




ちょい悪令嬢「──いやいやいや、せっかく白熱しているんだったら、こんな余計なコーナーなんか設けないで、普通に本編を続行しようよ⁉」




メリーさん太「……まだそんなこと言っているの? この『Me262解説コーナー』は、もはや作者にとっては、読者様に対する『公約』のようなものであって、今更取り止めるわけにはいかないの」


ちょい悪令嬢「いや、この作品はあくまでも『悪役令嬢』モノなのであって、読者の皆様は原則的に、軍用機の解説コーナーなんて、求められていないわけでして」


メリーさん太「その本編自体が、『悪役令嬢』路線をほっぽり出して、『魔法少女』路線をひた走っているじゃないの?」


ちょい悪令嬢「…………」


メリーさん太「わかったのなら、大人しく解説コーナーの相方を務めるがいいの」


ちょい悪令嬢「だったらせめて、今回本編で扱った、He162の解説コーナーにすればいいのに……」


メリーさん太「それはあまり意味が無いの。それというのもMe262とは違って、He162は実戦においては、ほとんど活躍を期待できなかったの」


ちょい悪令嬢「何で? Me262と同じジェット機だったんでしょう?」


メリーさん太「その性能の高さから、大戦末期においてはドイツ空軍の事実上の主力機として、あらゆる分野で使用されていた、押しも押されぬ『万能機』であるMe262に対して、その強引な開発過程により、戦闘機として以外使いようのない余裕の無さが、最新鋭のジェット機であるはずのHe162にとって、致命的な欠点となったの」


ちょい悪令嬢「ああ、そういえば、当時のジェット機って、実は戦闘機には向いていなかったと言うのが、前々回における最大の問題提起だったっけ」


メリーさん太「そうなの、Me262にしろHe162にしろ、戦闘機として使うにはあまりにも高性能すぎて、ドイツ空軍が完全に持て余してしまったの」


ちょい悪令嬢「……高性能だから持て余したって、意味がよくわからないんだけど、前々回の話だと、『ジェット機ならではの高速性』が問題なんだっけ?」


メリーさん太「それというのも、飛行機が飛行機を撃墜するには、なるべく長い時間機関砲とかで敵機を撃ち続けることこそが肝要なんだけど、双方が同じ速度で飛行しているのならいつまでも撃ち続けることが可能だけど、そんなわけにはいかず、しかも彼我の速度の差──いわゆる『相対速度』が大きいほど、銃撃する時間が短くなって、それだけ撃墜が困難になるの」


ちょい悪令嬢「なるほど、ジェット機は相手が戦闘機だろうが爆撃機だろうが、とにかく圧倒的に『相対速度』が大きくなるから、逆に撃墜しにくくなるんだ?」


メリーさん太「最高時速が870キロのMe262は、対戦闘機においては、米英の主力機よりも200キロも、対爆撃機においては、四発重爆撃機の巡航速度よりも500キロも速かったので、例えば相対速度が小さくなる後方から攻撃した場合ですらも、射程距離内に達して照準を合わせたかと思ったら、すでに敵機を追い抜いてしまっているといった有り様で、なかなか有効打を与えることができなかったの」


ちょい悪令嬢「つまり、後ろから追いかけている場合においても、敵機のほうが時速500キロで、あっという間に後ろに遠ざかって行ってしまうわけだから、確かに銃撃する暇なんてほとんど無いわねえ……。何か『スピードが速すぎるのが、最大の弱点』とか言うと、いかにも『笑い話』みたいだけど、当時のジェット機パイロットたちにとっては、けして笑い事じゃ無かったのね」


メリーさん太「あくまでも、旧式の機銃や機関砲を、使い続ける場合はね。──しかし、そこで救世主が現れたの! まさにMe262同様に、他国の技術力よりも十年以上先を行くドイツにおいては、何と超高性能空対空ロケット弾『R4M』の開発に成功して、これまでよりも遠くの射程距離から、高い命中率かつ絶大なる破壊力によって攻撃可能となって、うすのろの米英の戦略爆撃機をバッタバッタと撃墜していき、結果的には、完全に制空権を奪われた圧倒的に不利な状況の中で、500機以上の敵機を葬り去ったの!」


ちょい悪令嬢「おおっ、ようやくジェット機に適応した武器が登場したわけね。これぞまさしく、『鬼に金棒』?」




メリーさん太「これだけでも、人類史上初の実用ジェット戦闘機として、面目躍如だったんだけど、Me262の活躍の場は、けしてこの『昼間戦闘による敵戦略爆撃機の撃墜』だけに限らなかったの。かの『ヒトラー総統によるごり押し』で強行された、『高速爆撃機化』においても、終戦間際に怒濤のように攻め寄せてきた、ソビエト赤軍地上部隊に対して、爆弾のみならず大口径機関砲を叩き込むことによって、かなりの戦果を上げて、戦後スターリンに、『たとえ性能が優秀とはいえ、我が国において、Me262のコピー機を造ることだけは、断じて許さん!』と言わしめながらも、ソビエト空軍の最初の正式採用ジェット機には、ちゃっかりとMe262と同じJumo004エンジンを採用させるといった、(少々ツンデレ気味なw)多大なる影響を及ぼしたくらいなの。また、Ar234において証明されたように、当時のジェット機において最も効果的とされた『偵察任務』では、何とあの劣悪なる戦況において、終戦に至るまで部隊内で損失機を一機も出さなかったという、架空戦記や仮想戦記も真っ青の、奇跡的な記録を達成したの。その他にも、驚いたことに、昼間戦闘用に開発された機体でありながら、何とほとんど手を加えずにそのままの状態で、試しに夜間戦闘に用いたところ、抜群の適応能力が実証されたので、夜間戦闘の撃墜王エースパイロットたちにあてがって実戦に投入したところ、夜間戦闘用に復座に改造された新型Me262の導入を待つまでも無く、レーダー無しの単座の昼間戦闘仕様のままで、最新のマイクロレーダーを搭載したイギリス夜間戦闘機部隊を圧倒して、イギリス空軍に夜間戦闘用のジェット機(※ヴァンパイアの改良版)の開発を急がせたほどなの。……ちなみに、当時の夜戦においてドイツ軍パイロットのクルト=ヴェルター中尉が記録した、約25機の総撃墜数は、ジェット機による撃墜数としては、夜間昼間合わせて、いまだに破られていなかったりするの」




ちょい悪令嬢「……はあ〜、本当にMe262って、戦闘機としてだけではなく、いろいろな用途にも利用できて、しかもそれぞれの分野で十分に活躍しているわけなんだあ」


メリーさん太「当時の黎明期のジェット機としては、信じられないくらいの実績であり、これこそがMe262を、『時代を超えた永遠の傑作機』とも呼び得るゆえんなの」


ちょい悪令嬢「確かに、現在のように、ジェット機が当たり前のように存在している状況においては、あらゆる分野で他の軍用機を圧倒する機体なんて、再びまったく新しい飛行用エンジンでも開発されない限りは、実現不可能だろうし、そういう意味ではMe262こそが、『永遠の傑作機』と呼ばれることは、納得の一言に尽きるわね」




メリーさん太「それでは、なぜこのようにMe262のみが、最初期に開発されたジェット機でありながら、傑作機と評されるに値するほどの実績を残せたかについて、その技術的裏付け──すなわち、革新的な『機体設計』と、当然のごとくジェット機にとって何よりも重要な『ジェットエンジン』についても、語っていこうと思いますが、残念ながら字数も尽きたことですし、また別の機会に詳しく述べたいかと存じますので、どうぞ楽しみにお待ちください♡」













ちょい「……いや、もう軍用機の解説コーナーなんていいから、ちゃんと本編を進めようよ?」

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