第251話、【連載250話突破記念】わたくし、すべては夏の暑さが悪いと思いますの。(前編)

 ──ここは、魔導大陸のどこかにひっそりと存在する、超法規都市、その名も『KADOWAKAカドワカ』。




 大陸全土から、『真っ白なハイ○ース』が集まってくる、夢と狂気のナイトメア・オブ番外地・ディストピアである。




 そして今日も今日とて、罪深き純白の『拐かKADOWAKA師』が一台、市内へと引き寄せられてきた。




「……ここが、我ら『同好の士』にとっての、理想郷アルカディア、KADOWAKA市か」


「あら、ヨウコちゃんは、初めてだっけ?」


「──あ、大鯨シン・クジラ大姉、ハイ○ースの運転、お疲れ様です!」


「お気遣いなく〜、もはや私くらいのレベルになると、ハイ○ースの運転も、この地図上には存在しない秘匿都市に来るのも、慣れたものよ〜」


 さすがは、大姉、お名前に『クジラ』が付いているだけあるな。一体何のレベルかはさておき、私なんかじゃ及びもつかないぜ☆


 ……実際、大鯨シン・クジラ大姉って、同じ女である私こと、『魔法令嬢、ちょい悪シスターズ』のリーダー、ヨウコ=タマモ=クミホ=メツボシから見ても、いかにも頼りがいのある『デキル女』って感じだからなあ。


 しかも、年の頃十代半ばと思われるものの、極シンプルなセーラー服の上からエプロンをまとった、あたかも幼稚園や保育所あたりでバイトをしている女学生といった出で立ちは、温和で妙に大人びた顔つきとも相俟って、幼女たちに不用意に警戒心を抱かせることなく、彼女の言うように今回のような、『KADOWAKAし作業プレイ』には打ってつけであった。


「……しかし、ネット上で知り合った際には、魔導大陸聯合艦隊にお勤めとお聞きしたので、てっきり某戦艦や某空母の方々を想像しておりましたが、まさか潜水艦部隊の取り纏め役である、あなただったとは」


「ふふっ、だって聯合艦隊広しといえども、名前に『クジラ』が付いているのは、私だけですもの」


「そうか、そうですよね、納得です! 幼女専門の拐かKADOWAKA師として、むちゃくちゃ『手際』が良かったのも、やはり『クジラ』ならではですね!」


「そういうヨウコちゃんだって、大したものよ〜。さすがはHe162を専用機とする、『ワルキューレ隊』のリーダーさん、『あの子』たちが大人しく従ってくれて、助かったわ〜」


「い、いや、私なんて、それくらいのことしか、役に立ちませんから……」


「またまた、ご謙遜を〜。──あっ、そろそろ、あの子たちを車から出してあげましょうよ」


「おお、そうですな、いつまでも窮屈な思いをさせては、可哀想ですしね」


 至極当然なるご指摘を受けて、ハイ○ースの後部ドアを慌てて開けると、いかにも待ちかねていたかのようにわらわらと飛び出してくる、五人の幼女。


 おうとつのまったく見られない丸っこい体躯を包み込む、純白のスクール水着に、淡いプラチナブロンドのショートボブの髪の毛に縁取られた、小作りの可憐な顔の中で夏の太陽を浴びて煌めいている、水色の瞳。


 あたかも子猫やひよ子あたりを彷彿とさせる、この上なく可愛らしい集団であるが、実は何と魔導大陸特設空軍所属の、最新鋭ジェット戦闘機He162A2『ザラマンダー』の概念が具現化したもの──いわゆる『妖精』のようなものなのであった。


「──りーだー殿、ここは一体、どこでありますか?」


 人呼んで『ザラマンダー幼女団』の一人、『きき』嬢が、私へと尋ねてくる。


「うふふふふ、素敵な場所だよ。楽しみにしておいで、『特別な遊び』を、存分に味合わせてあげるから♡」


「本当で、ありますか⁉」


「やった! やった!」


「さすがは、りーだー殿!」


「それでこそ、本機の自慢の、まいすたーであります!」


 短い手足を精一杯振り回して、全身で喜びを表す幼女たち。


 ぐふふふふ、絶景絶景、先程までの海水浴の時と同様に、白スク水のままであることも、高得点だぜ!


 何といっても、大鯨シン・クジラ大姉は、聯合艦隊の潜水艦の取り纏め役だけあって、スクール水着関係はお手の物だからな。




 ──待っているがいい、我が愛する『ザラマンダー』たちよ、スク水を最大限に活用した、めくるめく快楽のプレイへと、いざなってあげるから♡




 そのように胸中で、改めて意を決するや、大鯨シン・クジラ大姉へと目配せする。


 それを受けて大きく頷き、子供たちに向かっていかにも『優しいお姉さん』の表情となって語りかける、今回のイベントの『主宰者』。


「──さあ、みんな、いつまでもお外にいたのでは、暑いでしょう。早く、あの建物の中に入りましょう」


「おお、まるでお城のような建物が、目の前に⁉」


「見知らぬお姉さん、あれは一体、何なのですか⁉」


「うふふ、あれこそがかの有名な、『愛の巣ラブホテル』よ!」


「……らぶイ、ほてる、でありますか?」


「何とも夢があって、いい名前ですな!」


「ええ、ええ、きっと『夢のようなひととき』が、みんなを待っているわ、さあ、行きましょう♡」


「「「「「──JAやー!」」」」」


 元気いっぱい返事を返して、大鯨シン・クジラ大姉の後について、ホテルの正面玄関へと行進を始める幼女団。


 それを見守りつつ、お互いにアイコンタクトを交わして、含み笑いを漏らす、私と大鯨シン・クジラ大姉。


 ──いや、さすがは、大陸きっての紳士淑女の聖地、KADOWAKA市!


 本来なら、こんな幼女連れの女性だけのお客さんなんて、さすがのラブホテルでも、お断りするところであろうが、むしろ「上客さん、いらっしゃあ〜い♡」といった感じで、大歓迎ウエルカムな有り様なのであった。


 ……もしかして、大鯨シン・クジラ大姉が『常連客』として利用している、『定宿』だったりして。


 そんな感じで、これからの展開に、エロエロ──じゃなかった、いろいろと想像を巡らせていた、まさにその時。




「──待ちなさい、そこの慮外者たち!」




 突然、趣味が悪いまでにケバケバしい色合いのホテルの前の広場にて響き渡る、大音声。


「──っ。あ、あれは⁉」




 何と、いつの間にか、ハイ○ースの屋根の上に立ちはだかっていたのは、色とりどりのバトルコスチュームに幼い肢体を包み込んだ、四名ほどの少女たち。




 ──それは間違いなく、この私がリーダーを務めている、『魔法令嬢、ちょい悪シスターズ』のメンバーであり、『ザラマンダー幼女団』の指揮官マイスターでもあるところの、『ワルキューレ隊』のご登場であったのだ。
















「……すべては、この夏の猛暑が、悪いのです」




 ──などと、本作の作者は供述しており、引き続き捜査陣は、真相の究明に全力を尽くすとのことですので、関係各位の皆様におかれましては、何卒広いお心で、ご寛恕くださることを、切にお願いいたします。(後編に続く)

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