第237話、あたしメリーさん、今『夏のホラー企画』案を練っているの。

「──というわけで、今年も『夏のホラー企画』開催の季節が、やって参りました!」




「はあ?」




「そして、ホラーと言えば都市伝説、都市伝説と言えば、あたし、メリーさん。つまり夏のWeb小説界隈は、メリーさんを讃えるためにあるの!」




「ちょ、ちょっと、あなた急に、何わけのわからないことを、言い出しているのよ⁉」


メリーさん太「ああ、大丈夫大丈夫、前回からの流れを、いきなりぶった切ったように見えるかも知れないけど、今回は【本編】では無く、ある意味【座談会】みたいなものだから」


ちょい悪令嬢「な、何よ、【座談会】って?」


メリーさん太「ほら、あたしたちのセリフの前に、【座談会】用の量子魔導クォンタムマジックチャットルームの、HNハンドルネームが付いたでしょ?」


ちょい悪令嬢「あ、ほんとだ、いつの間に⁉」


メリーさん太「それというのも本日は、『小説家になろう』様における恒例企画、『夏のホラー2019』の受付開始日だったので、本作の作者のほうも、三作品も同時にエントリーしようとして、全力を振り絞って、とうとう力尽きて倒れてしまったの」


ちょい悪令嬢「──よく倒れるな、この作者⁉」


メリーさん太「まあまあ、あまり無理をさせると、先日のように三日ばかり寝込むことになりかねないから、ここは大目に見てあげるの」


ちょい悪令嬢「……企画用の作品のために、看板レギュラー作品である本作の手を抜くなんて、本末転倒と思うけどなあ」


メリーさん太「完全に更新をサボってしまった、『なろう』オンリーの『なろうの女神が支配する』や、『カクヨム』オンリーの『転生法』よりは、ましな扱いなの」


ちょい悪令嬢「──いやだからさあ、そもそも四本も毎日更新しようとすること自体が、間違いなんじゃないかなあ⁉」


メリーさん太「そこに新企画があれば、参加しようと思うのが、Web作家のさがなの」


ちょい悪令嬢「そんなことばかりしていると、本当に死ぬぞ⁉ ──だったら『カクヨム』様の『シチュエーション斬り‼』コンテストみたいに、既存の作品をエントリーすればいいじゃないの?」


メリーさん太「『夏のホラー2019』の参加要項によると、未発表の新作の、短編、あるいは完結済みの連載作品しか、受け付けないらしいの」


ちょい悪令嬢「は? 『未発表の新作』なのに、『完結済み』って……」


メリーさん太「そうなの、そこがどうにも、解せないの」


ちょい悪令嬢「でも、それって間違いなく、運営様公式の、参加要項なんでしょう?」


メリーさん太「短編については、問題ないの。元々一話完結だから、『未発表の新作』であろうとも、公開すると同時に、『完結済み』の作品になるの」


ちょい悪令嬢「うんうん」


メリーさん太「問題は、連載作品のほうなの」


ちょい悪令嬢「……つまり、あらかじめ全話を作成しておいて、一挙に全部公開して、初公開と同時に完結扱いにするわけ?」


メリーさん太「確かにそれだと、参加要項の記述と合致するけど、連載形式である意味が無くなるの。だったらいっそのこと、(短編ならぬ)単発の長編作品にすればいいの」


ちょい悪令嬢「ああ、まあねえ」


メリーさん太「そもそも作品受付期間が二ヶ月ほどあるのだから、その間に連載形式で、一話ずつ投稿していくほうが自然だし、何よりも効率的なの」


ちょい悪令嬢「そうよねえ、必死こいて全話を完成させてから、一度に公開するよりも、二ヶ月間もある企画開催期間中に、ゆっくりと一話ずつ作成して、そのつど公開していくほうが、より無難よね」


メリーさん太「ということで、本作の作者自身も、参加要項をそのように(独自に)解釈して、本日から各話ごとに連載方式で、投稿していくことにしたらしいの」


ちょい悪令嬢「……だから、ただでさえ過密スケジュールだというのに、無理やり新しい連載を始めて、自らの首を絞めるような真似をしなくてもいいのに」




メリーさん太「──そんなことは、どうでもいいの! 問題は、あたし、メリーさんについてなの!」




ちょい悪令嬢「へ? 何でそこで、メリーさんが出てくるの?」


メリーさん太「もちろん今回の企画においては、作者は連載作品だけでは無く、単発の短編作品でのエントリーも、ちゃんと視野に入れていたの」


ちょい悪令嬢「……だから本当に、死ぬ気なのかよ、あいつ?」


メリーさん太「その中の一本に、あたし、『メリーさん』を、フィーチャーした作品案があったの」


ちょい悪令嬢「ほう」


メリーさん太「それが何といきなり、ぽしゃってしまったの!」


ちょい悪令嬢「何で?」


メリーさん太「今回、『夏ホラー』の正式な開催告知自体が遅れに遅れて、今年は企画そのものが取りやめになったんじゃないかと危惧さえされていたところ、ほんの数日前にようやく本年の開催を正式に発表したかと思えば、何と肝心のテーマが、『病院ホラー』ということに、限定されてしまったの!」


ちょい悪令嬢「ホラー作品で、テーマが『病院』て、何とベタな……」


メリーさん太「ベタか何か知らないけど、それだと、メリーさんの出番が無いの!」


ちょい悪令嬢「……ああ、そういうこと」


メリーさん太「メリーさん殺すには、刃物は要らぬ、、いいの!」


ちょい悪令嬢「病院内は原則的に、携帯端末の使用禁止だもんね」


メリーさん太「というか、病院を舞台にした都市伝説なんて、それこそ枚挙にいとまが無く、メリーさんが割り込む隙間なんか無いの!」


ちょい悪令嬢「むしろ、ホラーの本場ゆえにね」


メリーさん太「これは陰謀なの! メリーさんがWeb小説界において、あまりにも大人気で、猫も杓子もヒロインとして使うから、運営が規制に走ったの!」


ちょい悪令嬢「いや、それとホラー企画とは、関係が無いのでは?」


メリーさん太「そんなことは無いの! 冒頭でも言ったけど、ホラーと言えばメリーさんなの! もしもテーマを『病院』にしなかったら、今頃ほとんどの参加作品は、メリーさん尽くしだったはずなの!」


ちょい悪令嬢「そ、そうかなあ」


メリーさん太「こうなりゃ、『なろう小説』を影から支配している、『なろうの女神』の力を借りて、無理やり全参加作品の、ヒロインの座を奪ってやるの………ッ」


ちょい悪令嬢「ちょっ、何その、『メタ的テロ行為』は⁉ そんなことをして、ただで済むわけがないじゃない! 本作の作者が、運営様からお叱りを受けるわよ!」


メリーさん太「あんな死に損ない、いくらでも叱られればいいの」


ちょい悪令嬢「生みの親に対して、死に損ないとか言うな! ──ていうか、作者のほうも、ちゃんと考えてくれているようよ?」


メリーさん太「え、そのなの?」


ちょい悪令嬢「ちなみに現在『なろうの女神が支配する』のほうで連載している、作中作の『本当は怖い、異世界転生⁉』も、元々は『夏のホラー2019』用に考案していたんだけど、やはり『病院』というテーマにはそぐわないと言うことで、エントリーを諦めたそうよ?」


メリーさん太「……ああ、だから『夏のホラー2019』エントリー作品のほうは、『本当は怖い異世界転生⁉【病院編】』と、シリーズタイトルの末尾に【病院編】が付いているわけなのね」


ちょい悪令嬢「同様に、メリーさんをフィーチャーする予定だった作品案についても、『なろうの女神が支配する』のほうで公開するらしいわよ?」


メリーさん太「──何と、それ、本当⁉」


ちょい悪令嬢「しかも『夏のホラー2019』のほうでも、なんかアイディアが閃いたそうで、近々ショートショートの一本として、エントリーするかもよ」


メリーさん太「……つまり、『病院』絡みのエピソードになるわけ? あたし、メリーさんを、ヒロインにして?」


ちょい悪令嬢「こらこら、何もヒロインと決まったわけじゃ無いでしょ? 図々しい」


メリーさん太「いやむしろ、メリーさんを脇役にした病院ホラーを作成するほうが、あまりにも焦点がぼけて、難しくなるのでは」


ちょい悪令嬢「例えば、ナース役を担って、『白衣のメリーさん』とか?」




メリーさん太「おお、これぞ、『ロリ○ンホイホイ』なの!」




ちょい悪令嬢「うんうん、幼女の白衣の天使、ktkr♡」




メリーさん太「……いやそれ、本当に、ホラーなの?」

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