第233話、わたくし、夢も小説も世界そのものも、アナログではなくデジタルだと思いますの。

「──はい、ということで、とうとう作者が、倒れてしまいました」




「えっ⁉」




「……そりゃあそうよねえ、本作と、『なろう』オンリーの『なろうの女神が支配する』だけで無く、『カクヨム』オンリーの『転生法』まで更新再開していたんじゃねえ」


「──それで、大丈夫なの⁉」


「まあ、大丈夫なんじゃない? こうして新作を書いているくらいだから。昨日はパソコンの前に座るだけで吐き気を催して、どうにもならなかったらしいわよ?」


「……ここ最近、やけに調子が良かったと思ったら、てきめんに反動が来たわね」


「何事も、調子に乗りすぎるのは禁物という、いい例じゃないの?」


「それで、どうするの? このまま私たち二人で、だらだらと雑談を続けるつもり?」


「まさかあ、ちゃんと本編のほうも進めるわよ。──とはいえ、今回は無理できないから、雑談形式メインとなること自体は否めないけどね」


「まあ、今回に限り、読者様にも、ご勘弁いただきましょう」


「昨日だって早朝にちゃんと、さっきに言った、『なろうの女神が支配する』と『転生法』の更新を行っているし、完全にサボったわけでも無いしね」


「……身体の調子が悪いのに、そんなことやっているから、倒れるのよ」


「まあ、それはそれとして、ちゃっちゃと本編を始めるわよ! ──では、読者の皆様、今回は私こと、聖レーン転生教団直営の『魔法令嬢育成学園』初等部教師の、ミサト=アカギと」


「同学園保健医の、エアハルト=ミルクの二人で、お送りいたしますので」




「「どうぞよろしく、お願いいたしまーす!」」




「さて、前回ラストに予告した通り、今回は『多元的論』に基づいて、実はこの【魔法令嬢編】が、いくつもの世界の集合体だったりすることについて、詳細かつ簡潔明瞭に解説していこうと思うんだけど、それに関して、前回までの『多元的理論』についても、少々捕捉を付け加えておこうと思います」


「何で? 『多元的夢理論』については、もはや語り尽くしたと言っていいほど、あれこれ細かいところまで解説したじゃない?」


「だからあくまでも、『多元的小説論』に関すること限定よ。そもそも『世界を夢見ながら眠り続けている存在がいるとしたら、誰もが当然のように抱く疑問』について、言い残したことがあるもの」


「『世界を夢見ながら眠り続けている存在』──つまりは、『夢の主体』に対する疑問って、『何でこの世界を夢見ているはずの夢の主体が、この世界の中にいるの?』や、『それとも夢の主体の本体は、夢の主体と同類のヤバいやつらばかりが暮らしている、ヤバい世界で眠っているの?』以外に、何かあったっけ?」


「簡単に言うと、『世界を夢見ている』とか言うけど、具体的には、って、ことよ」


「ど、どんな風って……」




「基本的に夢って、あくまでも個々人が主観的に見るものじゃない? よって、どうしても夢の中で見ることのできる範囲って、自分の周囲に限られるわけだけど、そんなんで果たして、『世界を夢見ている』と言えるのかしらねえ?」




「あ、そ、そういえば………………………って、いやいやいや、違うでしょう⁉ あなたも言っていたように、『夢の主体』って神様みたいなものなんだから、夢の見え方も普通の人間とは違っていて、世界中の光景をマルチディスプレイのようにして、一度に見ていて、しかもそれをすべてちゃんと認識できているとかじゃないの⁉」


「……それって、古典物理学の『ラプラスの悪魔』みたいね」


「え……」


「お偉い学者様に限って、自分の学説をごり押しするために、『おまえら凡人には理解できないだろうが、人間を超越した「事象認識能力」を持っている者さえいれば、俺様の学説の正しさは証明されるのだ!』とか、非現実的なことを叫び続けて、そこで思考停止してしまうのよねえ」


「うっ」


「それに『範囲』だけで無く、『時間』のほうも問題なのよ? まさか『世界を夢見ながら眠り続けている存在』たる者が、現在の出来事をリアルタイムに見ているだけじゃないわよね? やはり神様的存在としては、『未来の出来事』とかも見ているべきだよね? ──さあ、一体『夢の主体』は、時制の異なる夢を、どんな風にして一度に見ているのでしょうか?」


「ぐっ…………そ、それは、あれよ、『夢の主体』は、すんごい早回しで夢を見ているからして、もう今頃は、西暦2020000000000000000000000000年開催の、第百万回目の東京オリンピックの夢をご覧になられているのよ!」


「……何でそんなに、東京ばかりでオリンピックを開催しているのよ? ──つうか、その時点では、地球そのものが滅亡しているのでは?」


「さもなくば、人類が滅亡した赤茶けた大地の上で、一台だけテレビが置かれていて、『サザ○さん』と『ドラ○もん』のが、視聴者が誰一人いないのに、流され続けていたりしてね♡」


「──怖っ、すんげえ嫌な未来の光景ね⁉ つうか、『夢の主体』は『あらゆる世界を夢見ている』とも言われているんだから、見るべき世界は一つだけでは無く、それこそ誇張無しに『無数』にあるのよ? それを全部マルチディスプレイと早回しで見ているわけ?」


「な、何よ? さっきから私のことを、屁理屈で追い込もうとして! ──そうよ! 『夢の主体』って実は、現在においてはSF小説とかの創作物フィクションの世界にしか存在し得ない、論理的に真に理想的な『量子コンピュータ』みたいな存在なんだから、量子ビット処理能力によって理論上無限の情報処理マルチタスキングを実現して、無数の世界の無数の時代の無数の場面を、一度に夢として見て、そのすべてを認識することができるのよ! どうだ、参ったか! せいぜい私のこの破れかぶれの『トンデモ理論』を、あざ笑うがいいわ!」




「──正解」




「………………………………………へ?」


「いやあ、破れかぶれかどうかは知らないけど、さすがは夢に関する専門家プロフェッショナル夢魔サキュバス、見事正解にたどり着くとは、お見それいたしました♡」


「えっ、えっ、それって、どういうこと? まさか本当に、『夢の主体』って、量子コンピュータみたいなものだったわけ?」


「う〜ん、それもあながち間違いじゃないけど、そもそも夢──というか、その大本である『世界』そのものが、『アナログ』と言うよりも『デジタル』的な存在であるわけなのよ」


「──世界そのものが、デジタルですって⁉」




「普通みんな、『世界』と言うと、当然のように時間の流れが付随しているものと捉えがちだけど、実はこれはさっきも言及した、今や完全に否定されている古典物理学の決定論における、『アナログ的思想』に過ぎないの。なぜなら世界というものを時間の流れと一体のものとして捉えると、たとえそれが短期間のものであろうが、世界の未来というものがその時点で『決定』してしまうので、世界全体の行く末はもちろん、個々人における、『この分かれ道は右に進もう』とか『今日は調子が悪いから、Web小説の更新をサボろう』とかいった意思までも、といった、もはや黴の生えた『運命論』になってしまいかねないでしょう? しかし残念ながら、今や小学生のお子様ですらようくご存じのように、『我々の世界の未来には無限の可能性があり得る』のであり、世界というものはたとえ短期間とはいえ、けして時間などといったものが付随したりはせず、『一瞬のみの時点』によってのみ構成されていなければいけないのよ」




「──あーあー、そうだった! それって本作で何度も言及してきた、『世界停止論』のことでしょう⁉」


「その通り。しかもこれは別に、作者独自のトンデモ理論というわけではなく、ちゃんと現代物理学の中核をなす量子論に則っていて、何せ世界の全物質の最小単位である量子の、たった一瞬後の形態と位置とを予測することが不可能なんだから、人間等の物体や世界そのものの一瞬後の状態を予測することなんて絶対に不可能なのであり、このことから世界(=時間)というものは、古典物理学の言うように連続したものなんかではなく、一瞬一瞬ごとに独立していることになるの」




「……すると、そんな世界を見ている、『夢の主体』って……」




「もちろん、ある意味デジタルそのものである世界を、普通の人間が夢見ている時のように、アナログ的に認識しているはずが無く、すでに何度も述べている『世界というものはあらゆるパターンが最初からすべて揃っている理論』とも併せて、無限の『一瞬だけの時点』という名の世界のすべての情報を、最初から脳みそという名のHDハードディスク内にインストールされている、超高性能の量子コンピュータみたいなものなのであり、別にリアルタイムに特定の夢を見ているわけではなく、必要な時に必要なだけの情報ユメを取り出して、そのつど認識しているって次第なのよ」

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