第227話、わたくし、少年兵のためのジェット機なら、『ドイツ幼女団』も乗れると思いますの。

 あまりにもごもっともな指摘に、一斉に呆然となる、他称『魔女っ子たちウィッチーズ』。




「そ、そう言われてみれば、確かにその通りやん⁉」


「……ずっと言われるがままに、ジェット機に乗って出撃していたから、もはやすっかり、当たり前のことだと思っていたぞ?」


「最近、年端もいかない女の子がジェット機に乗って謎の敵を討つといったのが、流行っていたし、絵面的にもウケるからね」


「まあ、あのアニメの場合は逆に、大陸のほうから謎の敵が来て、ニッポン側の軍用機で迎え撃つというのが、パターンでしたけど」


「それに何よりも、最近この作品ときたら、更新が滞っていて、ここらで作者お得意の、ドイツ軍機による空戦シーンによって、スカッと爽快に筆を進めたいというのもあったのでしょうね」


 ようやく我に返って、今更ながらに口々に思い当たるところを口にしていくウィッチーズであったが、聞いているほうとしては堪ったものではなかったようだ。




「──そのように何の疑問も持たずに、流されるようにジェット機に乗せられておいて、よく操縦なんかできたわね⁉」




「ああ、基本的な三軸方向の姿勢制御なんかは、我々の身の内に秘められた魔導力によって、ゲンダイニッポンでいうところの、『コンピュータ制御のオートパイロット(フライ・バイ・ワイヤ)』を完全にやりこなしているから、ゲームセンターのフライトシミュレータ程度の操作能力しか要求されなかったので、私たちのような初心者でも、何も問題はありませんでしたよ?」


「いや、そもそもジェット戦闘機なんて、パイロットの規格が大人専用に造られているから、あなたたちのようなJS女子小学生には、操縦しづらいというか、下手すると『操縦桿に手が届かない』まで、あり得るんじゃないの⁉」


「……それやけど、誠に遺憾なことなんですが、このHe162A2って、元々実用化された当時のドイツにおいても、『ヒトラーユーゲント』という少年兵向けに造られた機体であって、うちらのような『ドイツ幼女団(※実在したヒトラーユーゲントの下部組織)』レベルの体格の者でも、どうにか適合できるサイズで設計されているんですわ」


「何その、非人道的な、最終決戦兵器⁉」


「末期も末期の末期戦状態だったから、仕方ないのよお母さん、何せ私たち『幼女』だし、その、ほら、『戦記』的にもね?」


「末期戦の(第三)帝国軍のジェット機を駆って、ウィッチーズが魔導力を使った特殊な操作システムで、正体不明の敵と空戦を展開するって、どこまで盛り込むつもりなのよ⁉」


「パ○ツ! パン○です! し○ふ絵だから、恥ずかしくないもん!」


「──どさくさに紛れて、『ふね』のほうまで、盛ろうとするんじゃない!」


 ……いけない、つい悪ノリをしてしまった。──しば○絵、最高! 『北○様×大○っち』の百合ップル、萌え〜♡


「で、でもですねえ、ここ最近やたらと、ガチなヤンデレ展開が続いたことですし、読者の皆様におかれましても、緊張し通しであられたかと思われますので、ここいらで息抜きのエピソードも、必要であるかと存じますが?」


「まさにそのヤンデレ展開のほうも、問題アリだったじゃないの⁉」


 は? ヤンデレ展開のほうの、問題って……。




「──それは聞き捨て、なりませんわ!」




 その時すかさず物言いをつけたのは、当然のごとく、話題の焦点のユネコちゃんであったが、こんな時もタチコちゃんに抱きついたままであるのは、「さすがは(ヤンデレの中のヤンデレの)妹様」──略して『さすいも』としか言えないよね☆


「私のお姉様に対する、果てしなき『ヤンデレ愛』のどこに、問題があるというのですか? このように前回お亡くなりなったお姉様を、自然のことわりに背いてまで無理やり生き返らせて、この生と死の無限ループを繰り返すばかりの、聖レーン転生教団による『実験のための実験のための実験』の世界の中に、永遠に閉じ込め続けようとする、この執着心、これぞ『大陸一のヤンデレ』と呼ばずして、何と呼ぶのですか⁉」


 何を胸を張って、作品世界の裏設定をモロにバラしつつ、自慢げに言い放っているのよお⁉


「……だから、そこがそもそも、おかしいと、言っているんでしょうが⁉」


「な、何ですって?」




「そもそもあなたって、某魔法少女よろしく、自分の最愛の魔法令嬢のタチコさんが、教団の仕業による無限ループに囚われ続けているのを、救い出そうとしていたはずでしょう? それがいつの間に、某邪悪な宇宙的使い魔そのままに、タチコさんを閉じ込める側に回ってしまっているのよ⁉」




「………………………あれ? い、言われてみれば、どうしてこんなことに⁉」


「どうしてもこうしても、あるか! あなた自分の行いにも気づかずに、無意識にそんな大それたことをやっていたのかよ⁉」


「え、ええと、おそらくは自分でも知らぬ間に、救い出すよりはむしろ、自ら愛する者を無限ループの中に閉じ込めて、永遠に自分だけのものにしたほうが、よりヤンデレらしいと思ったのではないでしょうか?」


「──何とまさに、絵に描いたような、『ミイラ取りがミイラになる』展開パターンだった、だと⁉」


 ……うん、そうだね、確かにヤンデレ的には正しいかも知れないけど、使い魔的にも妹的にも、御主人様であるお姉様を、無限ループの中なんかに閉じ込めたりしちゃ、駄目だよね。


 ユネコちゃんも自覚があるようで、慌てふためいてタチコちゃんのほうへと向き直り、平謝りに謝り始めた。


「す、すみません、お姉様、とんでもないことをしでかしてしまって!」


 しかし当のお姉様は、まさしく『マリア様』そのままの、慈愛に満ちた微笑みを浮かべるばかりでした。


「気にすることなんて無いわ、だってわたくしは、ユネコと一緒にいられるのなら、それでいいのですもの♡」


「お、お姉様……ッ」


 そしてひしと抱き合う、『魂で結ばれた姉と妹ソウル・エンゲージ・シスターズ』。


 まるで一幅の宗教画を見せられるかのごとく、神々しき有り様であったが、




 ──タチコちゃんの瞳に、光がまったく見受けられなかったのが、非常に気がかりであった。




「……可哀想に、すっかりヤンデレ妹による、『死に戻り』ループ地獄によって、完全に人格を破壊されてしまって」


 そんな二人を見ながら、何だか恐ろしいことをつぶやいている、ミルク先生。


 ──まさに、そんな時であった。




「あらあら、みんなどうしたの? こんなところに集まって」




 突然、格納庫の周辺に響き渡る、新たなる声。


「……ミサト先生」




 そうそれは、聖レーン転生教団直営の『魔法令嬢育成学園』初等部教師にして、私たち『魔法令嬢、ちょい悪シスターズ』の直接の指揮官である、ミサト=アカギ先生のご登場であった。

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