第226話、わたくし、ウイッチーズが普通に戦闘機に乗って闘っても、OKだと思いますの。

『──こちら、ワルキューレ1、目標を肉眼で確認。やはり予想通り、「きっ」と「おう」の二段構えの模様』




『……そいつは、やっかいやな。同じ旧ニッポン軍の特攻機といえども、ジェット機とロケット機では、速度等の性能も作戦高度等の航行ルートも、全然違うでえ?』


『単純に直進しかできない固体ロケットエンジンの桜花は、航行ルートは明快だけど、何分速度が速いしね』


『橘花は巡航速度も最高速度もジェット機にしては大したことないけど、降下体勢に入ると、レシプロ機とは違ってプロペラの旋回速度の限界を無視できるので、下手すると音速突破もあり得て、捕捉が難しくなるよ!』


『となると、橘花に対しては、降下体勢に入る前にとっとと仕留めて、桜花に対しては、真正面からの正攻法で挑むというのが、無難な線ってところかしら?』


『よし、それで行きましょ! ワルキューレ2とワルキューレ3は、橘花を、ワルキューレ4と私ことワルキューレ5は、桜花を、ワルキューレ1は、引き続き全体的な状況の把握を、──ってことで、OK?』


『『『『──らじゃっ!』』』』


 すぐさま、先導機パスファインダーであるワルキューレ1以外の、四機編隊シュバルムから、二機編隊ロッテの二グループに分かれて、大海原上空を我が魔導大陸へと迫りつつある、謎の武装航空勢力に対して、邀撃行動を開始した。


 今回敵勢力は、これまでの『零式艦戦ジーク』や『一式戦オスカー』等のレシプロ戦闘機ではなく、極度に速度性能を優先させた、ジェット機とロケット機を投入してきたが、何ら問題は無かった。




 何せこちらは旧ニッポン軍機など比較にならない、同時代のドイツ第三帝国の超科学の粋を尽くした、最終決戦兵器たるジェット邀撃機である、He162A2『ザラマンダー』のラムジェット改良版という、超高速ヴァージョンなのだから。




『──こちらワルキューレ2、橘花を降下体勢移行前に、後方よりR4Mロケット弾の斉射にて、撃墜!』


『──こちらワルキューレ4、桜花を前方上空からのR4Mロケット弾斉射により、撃墜!』


『ワルキューレ1、了解! これより、聖レーン転生教団魔導大陸空軍基地へと、帰投する!』


『『『『──らじゃっ!』』』』




 あまりにもあっけなく、敵特攻隊を殲滅するや、意気揚々と帰途につく、聖レーン転生教団空軍新設特殊部隊、『ワルキューレ』。




 ──またの名を、『魔法令嬢、ちょい悪シスターズ』。




   ☀     ◑     ☀     ◑     ☀     ◑




「──ああ、タチコお姉様、ご無事だったのですね? お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様、よくぞご無事で、お戻りを! ……もちろん、たとえ今回の舞台イベントでお亡くなりになろうとも、このユネコが、世界と時間そのものをねじ曲げて、何度でも何度でも、甦らせて差し上げますからねえ♡ けして逃がしはしませんよ、お姉様は私だけのものなのです! あなたはただ、この閉ざされた『空戦ゲーム』的世界の中で、永遠に『生と死の無限ループ』を繰り返しておられればいいのです♡♡♡」




 基地に帰投して、ワルキューレ5こと、タチコちゃんが乗機から地上に降り立った途端、すかさずむしゃぶりつくように駆けつけてくる、彼女の『使い魔』兼『魂の妹ソウルシスター』のユネコちゃん。


「……もう、ユネコったら、少しは落ち着きなさい。みんなが見ているでしょう?」


 そんなクレイジーサイコレズと言うか、ガチのヤンデレと言うかの狂態を、笑顔でのほほんと受け容れる、懐がマリアナ海峡レベルで深い、『御主人様にしてお姉様』のタチコちゃん。


「ほんま、タチコはんのところの主従は、いつ見てもラブラブやな♫」


「……見ているこっちが、胸焼けしそうだけどね」


「これで二人共、魔法令嬢と使い魔として、やることは人一倍やるのだから、リーダーとして文句の付けようが無いんだがな」


 そのようにはやし立てるのは、ワルキューレ2のチーム随一のムードメーカーのユーちゃんに、ワルキューレ4の実は夢魔サキュバスの血を引いているくせに身持ちの堅いメアちゃんと、ワルキューレ1のみんなの頼れるリーダーのヨウコちゃんであったが、そのようなゆるゆるの感想でいいのであろうか? ……特にユネコちゃんの狂乱ぶりとか。


「ほんとそうだよ、ユネコちゃんの御主人様想いは、うらやましい限りだよ! …………どこかの駄メイドとは大違い(ボソッ)」


 な〜んちゃって! 空気の読めるワルキューレ3の、他称『チームのマスコット』、わたくしことアルテミス=ツクヨミ=セレルーナは、ちゃ〜んと場の流れに合わせた発言に努めるとともに、ついでに己の使い魔をまんまとディスってあげたのでした。ケケケ☆


 ……おやおや、格納庫の扉の所からこちらを窺いながら、涙目でハンカチを噛みしめているのは、自他共に認める『万能メイド』の、メイ=アカシャ=ドーマンさんではありませんか? 一体どうなされたのでしょうね♡ キヒヒヒヒ。


 そんなこんなで(一部を除いて)和気藹々と、今回も大活躍を果たしてくれたHe162A2を収容した、第1格納庫から表に出たところ、




「──ちょっとあなたたち、一体何をやっているの⁉」




 わたくしたちの前途に立ちはだかるかのように現れる、白衣姿の妙齢の女性。


「「「「「──でけえっ⁉」」」」」


 ストロベリーブロンドのウエーブヘアに縁取られた、彫りの深く艶麗なる小顔の、尋常ならぬ色っぽさも、タイトミニからすらりと伸びている、見惚れるほどの脚線美も、それぞれ十分に目を惹くが、やはり何といっても、白衣の下の清楚なブラウスの胸元を、はち切れんばかりに押し上げている、双丘の凄まじさは、名うての登山家やスイカ栽培のプロであろうとも、ぶったまげるレベルであろう。


「「「「「…………ありがたや、ありがたや」」」」」


「──人の胸元に向かって、手を合わせて拝むんじゃない、この小娘JSどもが! そんなことよりも、自分たちの非常識な行動こそを反省しなさい!」


「……へ、非常識な行動って、何のことでしょう?」


 えらい剣幕でがなり立てる、普段は温厚なはずの保健医にして、実はあらゆる世界を気の向くままに、自分の見ている夢ということにできる、チート級の超常的存在である夢魔サキュバスである、エアハルト=ミルク先生に対して、恐る恐る問いかけるヨウコちゃん。


「何のことも何も、あなたたちたった今、ジェット機に乗って、謎の敵の討伐に行っていたでしょう?」


「ええ、それこそが我々『魔法令嬢』の任務であり、聖レーン転生教団から直々に賜った指令でしたので」


「それがおかしいと、言っているのよ⁉」


「「「「「はあ?」」」」」




「魔法令嬢って言ってみれば、『魔法少女』とか『魔女っ子』のことでしょう? そんな『ウィッ○ーズ』だか『航○魔導士』だかが、謎の敵と戦いに行くために、魔法の箒とか、スト○イカーユニットとか、魔導○珠とかを用いずに、今となってはマニアックな、第三帝国の最後の実用ジェット機『国民戦闘機フォルクスイエーガー』He162A2なんかに乗って、飛んで行ったりするものですか!」




「「「「「あ」」」」」




 ……いけね、そういえば、そうでした。

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