第207話、あたしメリーさん、『艦○れ』は艦む○めを永遠に閉じ込め続ける、『時の牢獄』だと思いますの。

メリーさん太さん「──では、早速前回の、【解説編】に移ろうかと思うの」


ちょい悪令嬢「ええっ、本編のほうはずっと休んでいるというのに、番外編のほうのケリを先につけるわけですの⁉」


メリーさん太さん「前回のだけで留めておくと、まさしく『穴埋め』そのものになってしまうの。よって【解説編】は、できるだけ早く済ませたほうが望ましいの」


ちょい悪令嬢「……それはそうかも知れないけど、せっかく本編が盛り上がっていたところだったのに、何も番外編のほうを優先しなくてもいいのでは?」


メリーさん太さん「番外編と言えば、そもそも現在の【魔法令嬢編】だって、番外編なの」


ちょい悪令嬢「──うっ。あ、いや、【魔法令嬢編】や【現代日本編】も、本編ではダイレクトに触れにくい『作品の核心部分』に、あえて間接的に接触コンタクトして反応を確かめるための、『補助的パート』なのであって、ある意味『本編の一部』と見なしても構わないってことでしたけど? それにそもそも前回は、『艦○れ』という、他人様のゲーム作品に関する話だったではありませんか⁉」


メリーさん太さん「『艦○れ』と言えば、今まさにネット上が熱いの! 注目の『北○棲妹』ちゃんが、どうやら『ガリバ○ディ』が深○棲艦化したものと思われることにより、その姉である『ほっ○ちゃん』のほうは、艦む○めの『オーよど』が闇堕ちした姿ではないかと、現在話題沸騰なの………ッ」


ちょい悪令嬢「だから、いくら番外編とはいえ、『艦○れ』のことばっかりあれこれコメントしていては、いろいろとまずいんじゃないかって言っているでしょうが⁉」


メリーさん太さん「……『艦○れ』だから、『あれこれ』とか?」


ちょい悪令嬢「やかましいわ!」


メリーさん太さん「別にこれは導入部の『肩慣らし』として、全然無関係な『艦○れ』を取り上げて、いじっているわけではないの。ちゃんと本筋にも関係しているの」


ちょい悪令嬢「『艦○れ』が本作の本筋に関係しているですって? 確か前回もそのようなことをおっしゃっていたけど、本当なんですの?」


メリーさん太さん「ほんとほんと、『艦○れ』のように隠しテーマどころか、本編の根源的テーマそのものに関連してくるから、あまり深く追求すると、ヤバいくらいなの」


ちょい悪令嬢「ええっ、そのような重要案件を、それこそこんな番外編で触れても、大丈夫なのですか⁉」


メリーさん太さん「……はるは、大丈夫なの」


ちょい悪令嬢「だから、いちいち混ぜっ返すなよ⁉」


メリーさん太さん「まあ、任せておくの。あくまでも『艦○れ』のキャラやイベントに例えることによって、本作の真のテーマがネタバレしないように、うまく解説を行うつもりだし」


ちょい悪令嬢「だからといって、単なる『艦○れ』の解説コーナーにならないように、バランス感覚を忘れずに、お願いしますわよ?」


メリーさん太さん「メリーさんは、大丈夫なの」


ちょい悪令嬢「それはもういいって、言っているだろうが⁉」


メリーさん太さん「まずは、『軽いジャブ』的な事例から始めるの。前回例に挙げた海上自衛隊の護衛艦の『かが』に関するイベントにおいて、太平洋戦争中の大日本帝国の正式空母の擬人化美少女キャラである、『艦○れ』の『加賀かが』が、キャンペーンイラストとして採用されたことがあったの」


ちょい悪令嬢「へえ、それは確かに『艦○れ』にとっては、その存在意義を大きくアピールできる好例ですわね。現代日本の海自の艦艇のイベントに、戦時中の実在の空母のイラストなんかをそのまま利用したら、大問題になりかねないけど、あくまでも可愛い女の子のイラストであったのなら、真剣に文句を言うほうが馬鹿馬鹿しくなるだろうしね」


メリーさん太さん「その上『加賀』には、現在の海自の制服を着用させているから、イラストを見ただけでは、戦時中の艦艇と断言することはできないの」


ちょい悪令嬢「おお、ある意味『クレーム対策』は、バッチリというわけですな」




メリーさん太さん「──しかも、実はこれこそが、今回の蘊蓄コーナーにおける、『核心部分』でもあるわけなの」




ちょい悪令嬢「へ? 『艦む○め』に、現在の海自の制服を着せることこそが、核心部分って……」


メリーさん太さん「果たして、『艦む○め』としての正式なコスチュームをまとっている『加賀』と、『かが』のキャンペーンのために海自のコスプレをしているイラストの少女とが、『同一人物』であると、断言できるのかしら?」


ちょい悪令嬢「えっ、こういったコラボ企画的には、少々奇抜なコスプレやシチュエーションとなってしまっていても、『そのキャラ』は、あくまでも『そのキャラ』自身であるわけでしょう? ──例えば、本来は敵キャラである『ほっ○ちゃん』が、他の艦む○めたちと一緒においしそうに牛丼を食べているという、本来あり得ないシチュエーションであっても、『ほっ○ちゃん』は『ほっ○ちゃん』でしかないように」




メリーさん太さん「忘れてもらっては困るの、海自のキャンペーンにおいて使用された、『かが』のために作成されたイラストの女の子は、あくまでも海自が存在する現在のキャラクターだけど、『艦これ』の『加賀』が存在しているのは、70年以上の昔の『過去の世界』か、軍艦が女の子の姿をしている『パラレルワールド』なのだからして、この『かが』と『加賀』は、少なくとも現在における物理法則においては、まったく別の存在のはずなの」




ちょい悪令嬢「はあ? ただ海自のコスプレをするだけで、『艦○れ』のキャラが、まったくの別人になってしまうですって⁉」


メリーさん太さん「確かにコラボイベントはあくまでもお遊びみたいなものだから、そこら辺の世界観はいい加減になっても構わないと思うの。だけど、あくまでも物理法則に則れば、時代や下手したら世界すらも異なる存在である、『かが』と『加賀』とが、同一人物であり得るはずがないの」


ちょい悪令嬢「そんなもの、単なる『揚げ足取り』でしょうが⁉ 『かが』と『加賀』は、普通に『同一人物』と見なして、構わないんじゃないの?」


メリーさん太さん「慌てるでないの。あたしも別に、二人の間に『同一性』がまったく存在していないなんて、言ってはいないの。たとえ基盤としている世界や時代が異なろうとも、少なくともその脳内にある『記憶と知識』を、同調シンクロさせることは十分可能なの」


ちょい悪令嬢「──そ、それって、まさか⁉」




メリーさん太さん「そう、本作得意の、ユング心理学の言うところの、ありとあらゆる世界のありとあらゆる時代のありとあらゆる存在の『記憶と知識』が集まってくるとされる、いわゆる『集合的無意識とのアクセス方式』なの。現代の『かが』に『加賀』の『記憶と知識』をインストールするとともに、『艦○れ』の『加賀』にも『かが』の『記憶と知識』をインストールすれば、物理的には別人であるはずの二人を、完全に同調シンクロさせることができるの」




ちょい悪令嬢「確かに…………って、ちょっと待って! ようく考えてみると、たった一度のコラボイベントのために、そんな七面倒なことを、いちいちやる必要があるの?」


メリーさん太さん「だからこれは、『軽いジャブ』に過ぎないと、言ったはずなの。このシンプルなケースによって、根本的な考え方である、『集合的無意識とのアクセス方式』を再確認してもらっただけなの」


ちょい悪令嬢「と言うことは、次はいよいよ──」


メリーさん太さん「もちろん、『艦○れ』における最重要設定である、『艦む○めと深○棲艦との関係性』についてなの」


ちょい悪令嬢「ああ、やはり……」




メリーさん太さん「現在においては、艦む○めが轟沈されれば深○棲艦となり、深○棲艦が轟沈されれば、その場で『ドロップ』される艦む○めとして生まれ変わるというのが、定説となっているけど、『生まれ変わり』とはまさしく、『転生』そのものであり、ここでこそ本作における『真に現実的な異世界転生のメカニズム』である、『集合的無意識とのアクセス方式』が適用されるべきなの」




ちょい悪令嬢「えっ、わざわざ集合的無意識を介して、『記憶と知識』の同調シンクロを図る必要があるということは、艦む○めと深○棲艦も『かが』と『加賀』のように、物理的──つまりは肉体的には、別々の存在であるわけなの?」


メリーさん太さん「深○棲艦を轟沈するとともにドロップされる艦む○めなんて、その因果関係はともかく、少なくとも物理ニクタイ的には同一個体とは思えないし、そもそも艦む○めの時と深○棲艦の時とでは、外見がまったく異なる事例も、けして少なくはないので、やはり轟沈するごとに肉体を新しくしながらも、その『記憶と知識』については、同一性を保ち続けていると見なすべきなの」


ちょい悪令嬢「……まあ、確かにいくら轟沈されても、そのままその肉体を使って生き返るなんていう、『無限転生』を実現したんじゃ、もはや物理法則に則った『生命体』とは呼べなくなるからね。別の肉体に集合的無意識を介して、『記憶と知識』だけを(潜在的に)受け継がせていくといったやり方のほうが、理に適っているでしょう」


メリーさん太さん「──とは言うものの、実はこのやり方こそが、艦む○めたちを、いわゆる『時の牢獄』に、永遠に閉じ込めてしまうことになったの」


ちょい悪令嬢「時の牢獄、ですって?」


メリーさん太さん「基本的に『史実に沿ったゲーム』である『艦○れ』においては、艦む○めは自分が轟沈された史実イベントにおいて、高確率で轟沈されることになり、そのイベント内では事実上無限に、深○棲艦との転生を繰り返していくことになりかねないの。特にご存じのように日本は敗戦国だから、ほとんどの艦む○めには轟沈の運命が待ち受けており、特に公式アニメや公式コミカライズや二次創作等の世界では、何度も何度も手を変え品を変え轟沈させられて、深○棲艦との無限転生を繰り返すことを強いられているの」


ちょい悪令嬢「ちょっと、その言い方ではまるで、何度も同じイベント繰り返すことも十分あり得る、ゲームのプレイヤーを始めとして、様々な作品展開を見せつけている公式アニメや公式漫画や二次創作の作家たちや、ひいては本家のゲーム開発者等の、関係者全員が、艦む○めたちを永遠に終わらない『轟沈と転生』の無限ループの中に、閉じ込めてしまっているみたいじゃないの⁉」




メリーさん太さん「『みたい』じゃないの、最初からそのように断言しているの。すでに終わってしまった戦争の記憶ユメの中で、心穏やかに眠り続けていた旧日本海軍の軍艦たちを、美少女の形を与えて、本家のゲームや各種メディアミックスを数限りなく創作&拡散していくことによって、けして終わりの無い『生と死の無限ループ』という牢獄の中に、閉じ込めてしまったわけなの」




ちょい悪令嬢「──っ。そ、それって⁉」


メリーさん太さん「そう、まさしく『グランド・ミス○リー』の中で警鐘を鳴らしていたように、歴史上の人物や事象を使って、勝手なストーリーをでっち上げ続けている、『歴史改変』作品の世界の中に閉じ込められてしまった、哀れなる軍人や兵器を象徴しているとも言えるの」




ちょい悪令嬢「……ゲームや小説や漫画やアニメ等の創作物が、その登場人物たちにとっての『牢獄』ともなりかねないって、もしかすると──」




メリーさん太さん「──その通りなの。『乙女ゲーム的異世界編』と『現代日本編』と『魔法令嬢編』という、まったく異なる三つの世界からなる本作も、それぞれがそれぞれに対して、『牢獄』であり、また同時に『その牢獄を生み出した創造主の世界』でもあって、特に現在展開されている『魔法令嬢編』こそは、この多重構造に対する一定の『解答』を導き出すための、ある種の『実験的フィールド』でもあるわけなの」

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