第206話、あたしメリーさん、実は『艦○れ』は、アンチ歴史改変の神髄だと思うの。

「……トラ○プ大統領は、きっと間違いなく『艦○れ』をやっていると、思われる節があるの」




 ………………………………は?




 何の脈絡もなしに登場してきた『都市伝説娘』の、あまりにも予想外に言葉に、わたくしこと、ホワンロン王国筆頭公爵家令嬢アルテミス=ツクヨミ=セレルーナは、しばしの間呆気にとられながらも、すぐさま恐る恐る問い返した。


「め、メリーさん、いきなり異世界に来たかと思えば、何をわけのわからないことを言い出しているのよ⁉」


「あたしが異世界にいるのは、最近のトレンドとして、十分アリなの。何なら、『警視庁』に行くのも、OKなの。まさか本作の第110話で行われたことが、最新の商業作品の改稿部分においても、実施されるとは思わなかったの」


「あ、うん、それはともかくとして、何で唐突に『時事ネタ』なんかブッ込んできたわけ? しかも、本編の流れをガン無視して」


「ここ四、五日ほど、更新が完全に停止していることからおわかりのように、現在本作の作者は、『絶不調』の状態にあるの。こういう時には、少々内容的に問題があっても、本人が書きたいように書かせるべきかと思うの」


「……それは何となく、わかる気がするけど、何でよりによって、『トラ○プ大統領』と『艦○れ』のカップリングなの? その食い合わせは、ちょっと無理があるんじゃないの?」


「そんなことはないの、今回の完全な『おもてなし』外交路線を鑑みると、安○総理──つまりは、日本政府側の基本スタンスは、いかにも『五十代男性が喜びそうなもの』に統一されているの」


「えっ、そうだったっけ?」


「ゴルフに始まって、大相撲観戦に、六本木での串カツ屋でのお食事と、まるで『五十代サラリーマン男性のお得意様に対する接待』のフルコースなの」


 ……ああ、確かに。


「そしてそのとどめが、海上自衛隊の護衛艦『かが』における、『リアル艦○れ』ごっこなの」


 ──そこが、わからない。


「何で現在の最新鋭護衛艦における、日米両首脳による親閲が、『リアル艦○れ』ごっこになるわけ?」


「実は『かが』は、近々正式に『空母』に改修されることが決まっており、これはまさしく太平洋戦争中の『一航戦』の主力空母、『加賀』の復活と見なせるの」


「うん、だからさあ、それって『かが』を空母化することによって、これまでの国産ヘリコプターメインだった艦載機が、米国製のF35メインになって、一機100億円もする最新鋭機を数十機──下手したら、100機以上新規購入することにもなりかねないという、アメリカ側からすると『大商談』であり、対日赤字の大幅削減効果が見込まれて、日米軍事同盟の強化と共に、貿易摩擦の緩和すらも実現することによって、両国間の友好関係のタイト化を強調することで、現在米国政府における外交面や経済面で最も頭を悩ませている、中国や北朝鮮を牽制することが目的なのではありませんの?」


「甘い、甘いの、そんなの、単なる隠れ蓑に過ぎないの。軍事同盟の強化に貿易摩擦の緩和? ちゃんちゃらおかしいの。すでにそんな時代ではないの。もはや現在の世界の潮流は、日本のサブカル文化の輸出による、ウィンウィン関係での世界支配なの!」


「サブカル文化の輸出による世界支配って、何そのいかにも駄目そうな洗脳侵略は? そんなので本当に、『ウィンウィン関係』なんかになれるわけ⁉」




「確かに『艦○れ』は登場当時、ある意味史実を冒瀆しかねない、単なる『軍艦擬人化萌え美少女ゲーム』と見なされた時代もあったの。特に東アジア諸国からは、史実の『歪曲的な美化』とも批判されたの。しかし数年前の『劇場版アニメ』によって、プレイヤー側の操作キャラである艦む○めと、敵側の深海○姫との、恐るべき真の関係が明らかにされて以降は、艦む○めたちが史実に沿って設定された各ゲームイベント内において、という、『狂気と絶望の宿命』を背負わされている、『アンチ歴史改変』──ひいては『アンチ(軍事)ゲーム』であり、究極的には強烈なる『反戦思想』すらも垣間見ることができるという、アジアの皆様はもちろん、当時の明確なる敵国であられたアメリカの皆様にも、安心してプレイしていただけるようになっているの」




 そ、そうかなあ、何か、あまりにも穿った見方のような、気もしないでもないけど。


「……それで、どうしてトラ○プ大統領への『おもてなし』が、『艦○れ』なの?」


「ほとんどの人は知っているかと思うけど、トラ○プ大統領は全世界的に『不動産王』と呼ばれるほどの成功者であり、文字通り『アメリカンドリーム』を成し遂げた彼には、一見もはや『欲しいもの』なんか、何も無いように思えるの」


「まあねえ、アメリカ各地の一等地に、すんげえ豪華な高層ビルを、いくつもおっ建てているものねえ」


「だとすると、いかにもありきたりな『接待』では、大統領の関心を惹くことなんかできないの。そこで今回用意されたのが、あたかもごく平凡な五十代のサラリーマンを対象にしたかのような、いかにも日本的かつありきたりな『おもてなし』の数々なの」


「あーあー、なるほど、ゴルフに大相撲に串カツなんて、確かに『ちょっと金をかけたお得意様への接待』そのものだよね。うんうん、アメリカの大成功者である大統領に対して、いかにも日本の庶民的な『接待攻勢』は、むしろラノベ等にありがちな、『お嬢様ヒロインのファストフード初体験イベント』的に、『本人大満足』の大いにアリな展開パターンかもね」


「もちろんそのためにも、『事前のリサーチ』が必要なのは、言うまでもないことなの」


「事前のリサーチって…………ああ、宗教上の理由から、串カツなんかで提供される類いの肉が食べられないとか?」


「それもあるけど、今回事前の調査で明らかになったのが、大統領が『艦○れ』マニアだったという新事実なの」


「それは、どうだろう?」


「もはや言うまでもなく、現在における日本の海外に対する最も影響力のある輸出品は、自動車や家電等の工業製品ではなく、サブカル文化──特に『萌え作品』なの」


「だからって、アメリカの大統領が、『艦○れ』にはまったりするかあ?」


「何度も言うように、彼は『リアル』においては、世界最高の財力も権力も手中に収めているの。しかし成功者は成功者であるからこそ、『自分の意のままにならないもの』を求め続けるものなの。そして世界最強の軍事力と経済力を有するアメリカの大統領にとっては、もはやそんなものは『ヴァーチャル』の世界にしか残っておらず、ソーシャルゲームに手を出すことになるのは必然の結果なの。そして選ぶゲームがアメリカの軍隊を指揮するものは除外されるべきなの。何せそれでは『リアル』と何ら変わらず、わざわざ『ヴァーチャル』を選んだ意味が無くなるのだから」


「──だからって、なぜに『艦○れ』に行き着くと、断言できるんだ⁉」




「それだけ、『艦○れ』が、素晴らしいゲームだからなの! いかにも可愛らしいヒロインばかりのギャルゲもどきのように見せかけておいて、実は深遠なる設定を隠し持っているという奥深さ、そして非常に自由に二次創作を生み出し得る懐の深さといったふうに、実際にゲームをしなくても、十分に魅力を感じさせる世界観は、洋の東西を問わず、熱心なる『提督』──つまりは、プレイヤーを生み出し続けており、それは大統領府等のスタッフはもちろん、ご本人のご親族等も例外ではなく、何かの拍子で、大統領自身が興味を覚える可能性も、大いにあり得るの! 特に訪日の数日前に、ゲーム作内における超人気キャラであり、アメリカ軍の空軍基地の擬人化キャラでもある、北○棲姫こと『ほっ○ちゃん』の妹キャラが初登場するといった、文字通りにエポックメイキング的イベントが行われたばかりであり、世界的な『艦○れフィーバー』が盛り上がっている最中だからこそ、アメリカ大統領の史上初の海上自衛隊艦艇の親閲は、けして偶然とは思えないの!」




 ……いや、おそらく100%、偶然以外の何物でもないのでは?


「──それでさあ、アメリカの大統領が、本当に『艦○れ』マニアなのかどうかはさておいて、その事実と本作とが、一体どう関係するというわけ?」


 まさか本当に、作者が個人的に絶不調だから、『穴埋め』的に適当なことを書き殴っているだけなんじゃないだろうな? そんなの『エッセイ』コーナーとかでやるべきだろうが。




「さっきチラリとほのめかしたように、実は『艦○れ』というゲーム自体は、ヒロインである『艦む○め』たちを史実的なイベントの中に閉じ込めて、永遠に生死を繰り返させるという、かの名作時間SFファンタジーにして、アンチ歴史改変作品の急先鋒である、『グランド・ミス○リー』そのままの超設定を隠し持っているのであって、そこら辺のところを本作における、『真に現実的な異世界転生を実現し得る』量子論や集合的無意識論に則って、詳細に解説していこうと思っているの」




「ええっ、『艦○れ』って『グランド・ミス○リー』だったわけ⁉」




「もちろんこれはあくまでも、本作の作者の『私見』に過ぎないのだけど、きっと読者の皆様にもご納得していただけると思いますので、近日公開予定の『蘊蓄解説編』を、どうぞご期待なさってください…………なの」








「……ところで今回、コメンテーターが、『悪役令嬢』であるわたくしや、『メリーさん』であるあなたである必要が、本当にあったわけ?」




「それは言わない約束なの」

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