第178話、わたくし、教団の『腐』敗の実態を、まざまざと見せつけられましたの。
「──皆さんお早うございます、今日からいよいよ『二期』に入りますので、これまで以上に張り切って参りましょう!」
毎度お馴染みの、聖レーン転生教団教皇直属の『悪役令嬢』対策室、コードネーム『ブルドッグ機関』直営の、『魔法令嬢』育成学園初等部5年D組の教室にて、
──とは言え、やはりそこは腐っても学級委員、いち早く我に返ったヨウコちゃんが、すかさず問いただしていく。
「……あの、ミサト先生?」
「うん、何ですか、メツボシさん?」
「『二期』とは、何のことです? もしかして、『二学期』の間違いでは?」
「はあ? 何言っているのですか、今日から二学期が始まるとしたら、昨日までは夏休みだったことになるじゃないですか? 季節外れも甚だしい。『二期』はあくまでも、『二期』ですよお?」
──だから何なんだよ、『二期』って⁉
「そして、『二期』と言えば、テコ入れ! テコ入れと言えば、新ヒロインの『転校生』の突然の登場! ──ということで、今日から皆さんの新しいお友だちとなる、転校生を紹介いたします! アグネスさん、どうぞ、入ってきてください!」
「「「は?」」」
またしてもいきなりの事態の急展開に、生徒の誰一人としてついていけない中で、おもむろに教室入ってきて教壇に上がり、ミサト先生の横へと並ぶ、小学五年生と言うにはやけに小柄な少女。
「「「「「‼」」」」」
しかしその姿を一目見て、一斉に息を呑む、
聖レーン転生教団の少女賛美歌隊の純白のセイラーカラーのワンピース型の制服に包み込まれた、六、七歳ほどのいまだ幼く華奢な肢体に、処女雪を彷彿とさせる純白の長い髪の毛に縁取られた、精緻な人形そのままの端麗な小顔の中で煌めいている、鮮血のごとき深紅の瞳。
そう、それは間違いなく、昨夜夢の世界のバトルフィールドで、窮地に陥っていた
「──皆さん、初めまして、アグネス=チャネラー=サングリアと申します。これまでは聖レーン転生教団において、シスター見習いとして修行しておりましたが、このたび魔法令嬢としての適性が認められましたので、この魔法令嬢育成学園へと編入することになりました、これよりは何卒、よろしくお願いいたします」
そのように至極丁寧に言上し、深々と
──ただし、
確かあの時彼女は、『聖レーン転生教団がついに育成に成功した、魔法令嬢第一号』とか何とか、言っていたよね。
となると、今回の編入は、『魔法令嬢としての適性の唐突なる発現』などといった、偶然によるものではなく、あくまでも意図されたものであるはず。
──『ブラック・ホーリー・プリンセス』、果たして、敵か? 味方か?
「では、アグネスさんは早速、どこか空いている席に、座って頂戴…………って、おやあ、どうしたことでしょう? すべての座席に生徒たちが座っていて、空いた席が見当たりませんねえ? う〜ん、仕方ありません、とりあえずアグネスさんは、このまま一時間目の授業は、教室の後ろで立ったまま受けてください」
「「「へ?」」」
その時いきなり、これまで順調に進んでいた、『転校生登場シーン』のお約束を完全に無視した、教師にあるまじきことを言い出すミサト先生。
「せ、先生? 転校生の私にいきなり、立ったままで授業を受けろだなんて、ご冗談ですよね? あはははは」
「……私前から、不思議に思っていたのよねえ、小説とか漫画とかアニメとかで、転校生が突然転入してきた時には必ず、教室に空席があることになっているけど、普通そういうのって、どこか別の場所に片付けておいて、転校生の編入が決まってから用意するものじゃないかしら? とすると、生徒たちは前もって転校生の編入を知ることになり、『突然の転校生の登場』などというイベント自体が成り立たなくなってしまうので、今回のようにどうしても『転校生イベント』を強行しようと思えば、教室内に空席はあってはならないはずだと愚考するところなんだけど、アグネスさんはどう思う?」
「知るか! 何をいきなり、いかにもメタっぽい話を始めているのじゃ⁉ そんなことどうでもいいから、早く我の席を用意せんか!」
あ、あれ? アグネスちゃんの語調が、突然変わった? ………………………しかも、よりによって『のじゃロリ』方面に。
「……アグネスさん、仮にも教師に向かって、何という口の利き方をなされるのです?」
「うぐっ⁉ い、いや、これは、そのう……」
「やれやれ、教団育ちか何か知りませんが、躾のなっていないこと。これは教室の後ろとは言わず、廊下にでも立っていただきましょうかねえ」
「何その、転入していきなりの、羞恥プレイ⁉ こら、
え? 司教とか教師役とか教皇とか枢機卿とかリアルタイムにモニターしているとか、アグネスちゃんたら、一体何を言っているの⁉
何が何だかわけがわからず、戸惑うばかりの生徒一同であったが、一方的に糾弾された先生のほうは、相も変わらぬ嫌らしいまでにやけた笑顔を、微塵も揺るがすことは無かった。
「まあ、アグネスさんたら、自分のことを転生教団の教皇とか、私のことを司教とか、妄想豊かでちゅねえ? その年でもうすでに、中二病でも煩っているのかしらあw」
「なっ、貴、貴様⁉」
「でも残念! もしもこれが教団によるお芝居であるとしたら、すべては教師役の私に一任されており、枢機卿の皆様も今頃この映像を見ながら、『いいぞ、もっとやれ!』とか『88888888888』とかと、コメントを書き込んでおられていたりしてね♡」
「『ニ○生』か⁉ ──でも、確かにあり得そう! くそう、あのおっさんどもがあ、我のことを嵌めおったな⁉」
「はいはい、今はそんな『楽屋落ちネタ』はどうでもいいから、さっさと教室の後ろに行きなさい。──あなたのことは、これからたあっぷり、この私が『教育的指導』のお題目の
「何じゃ何じゃ、そのガチの『ドS』な目つきは⁉ ──ま、まさか、教団で噂の、『おねロリの雲龍型二番艦』というのは……」
「
「いやああああああああああああああっ! 誰か、助けてくれえ!!!」
教室内に悲痛に響き渡る、転校生の叫び声。
こうして、
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