第52話、わたくし、『ちょい悪令嬢』になりましたの。【50回記念特別編】(その2)

ちょい悪令嬢「──さて、今回も前回に引き続き、本作連載50回突破を記念して、これまでのエピソードを振り返る、『ボイスチャット反省会特別編』の第2回目を、わたくしこと『ちょい悪令嬢』を司会に、いつもの量子魔導クォンタムマジックチャットルームより、いつものメンバーでお送りいたします!」


かませ犬「……前回は、この作品──ひいては、Web小説全体における、『悪役令嬢』というものについて、根本から再定義することによって、本作のタイトル『わたくし、悪役令嬢ですの!』が、実はかなり意味深なものであったことを思い知らされたんだよな」


メイ道「他のWeb作品のほとんどが、悪役令嬢に『ゲンダイニッポン人』が異世界転生していて、当該異世界そのものである『乙女ゲーム』の知識によって、悪役令嬢ならではの『死亡フラグ』を回避するために、何と悪役令嬢であることをやめてしまうといった本末転倒な有り様なのに対して、本作においてはむしろ『異世界転生』そのものを全否定して、悪役令嬢があくまでも悪役令嬢でい続けて、己自身の意思によってこそ、世界そのものと闘い続けることで、『悪役令嬢ならではの破滅の運命』に抗っていくんですよね」


真王子様「それを踏まえると、いかにも極シンプルに当たり前のことを言っているだけだと思えた、本作の『わたくし、悪役令嬢ですの!』というタイトルが、非常に深い意味を有してくるんだよな」


ジミー「つまり、どんなに過酷な運命が待ち構えようとも、他のWeb小説のヒロインたちが悪役令嬢をやめてしまおうとも、自分だけはあくまでも悪役令嬢であり続けるんだって、決意表明しているようにも読めるよね」


妹プリンセス「まさに、極短い字数の中で、作品の本質をズバリと体現している、非常に絶妙なセンスにあふれたタイトルということが判明したわけなのですが、実際にこのタイトルに決める時に、作者が本当にそこまで考えていたかどうかは、非常に微妙なところなんですけどねえ♡」




妹プリンセス以外の全員「「「──おいっ、最後の最後で、すべてをぶち壊しにするようなことを、言うんじゃないよ⁉」」」




ちょい悪令嬢「ま、まあ、これも、最初から最後までちゃんと、信念を持って作品づくりを行っていれば、作者自身も意図しなかった偶然の積み重ねにより、本文やタイトルやその他の諸々に、思わぬ相乗効果が現れ得ることの好例と、受けとめておきましょうよ」


かませ犬「確かにまだまだ言い足りないことがあるけれど、何よりあまりに『尖った』見解であるからして、いろいろと物議をかもしそうな前回のことはいい加減このくらいにしておいて、そろそろ今回の反省会の議題テーマに入ろうや」


メイ道「……また、このチキン王子様は」


真王子様「『尖っている』からこそ、人を惹き付けるものがあると言うのにな」


ジミー「まあまあ、とっとと次の議題テーマに入ろうってところは賛成だし、その辺にしておいてやろうよ」


妹プリンセス「──それで、今回の議題テーマは、何でございますの?」


ちょい悪令嬢「そりゃあもちろん、本編において最も新しいエピソードである、いわゆる『蜘蛛女』編についてですわ♡」


かませ犬「あー、なるほど」


メイ道「あれって、反省会で取り上げるべき題材モチーフが、いかにも多そうですからね」


真王子様「ちょっと思いつくだけでも、『ゲンダイニッポンからの人間以外の生物の転生』に始まって、『久方ぶりの全面的百合路線』に、アル嬢やメイ嬢等のメインキャラではなく、今回だけの主役のテレサ嬢を始め、アイカ嬢やミルク元帥やガランド中将を始めとする空軍ジェット戦闘機第44中隊の隊員たちといった、『脇役キャラにスポットを当てた展開』と、そんな彼女たちを中心にした世界初とも言える『脳筋GL』等々、枚挙にいとまがないよな」


ジミー「以前のエピソードではいかにも『お遊びキャラ』に過ぎなかった、第44中隊の面々や『サキュバス』のミルクさんたちが、非常に重要な役割を演じているところがミソだよね」


妹プリンセス「しかも本エピソードにおいては、作者が絶賛お悩み中であったのか、全編的に『悪役令嬢』に内容となっていますからね。それが終わってみれば、ちゃんと『わたくし、悪役令嬢ですの!』にエピソードとなっているところが、まさしく作者自身も予想だにできなかった、文字通りの『天の配剤』とも思えましたわ」


ちょい悪令嬢「おそらく作者としては、あえて『悪役令嬢』から完全に離れた作品づくりをすることによって、むしろ『悪役令嬢』の何たるかについて再認識を為し得たのではないでしょうか。──まあ、それはそれとして、今回の反省会においては、先程挙げていただいた各題材モチーフを一つ一つ吟味していくといった、やり方で進めていこうと思いますわ」


かませ犬「──とすると、最初はまず、『ゲンダイニッポンからの人間以外の生物の転生』から始めるわけか?」


メイ道「これっていわゆる【聖レーン転生教団陰謀編】でも言及した、Web小説でよく見られる、『ゲンダイニッポン人』が蜘蛛やスライムやドラゴンといった、人間以外の生物や魔物に転生するのは、身体の構造や生態系が大きく異なるから、無理があるんじゃないかって論旨から端を発しているわけですよね」


真王子様「それでこの作品の作者ときたら、思いついたが吉日とばかりに、いきなり具体的なエピソード化を試みたわけだが、つい先日発行されたばかりの最新の『このラノ』を読んでみたところ、何と例の『蜘蛛の代表的作品』について思わぬ事実が発覚したものだから、びっくり仰天」


ジミー「まあ、そうは言っても、本作においては、『ゲンダイニッポンの蜘蛛の記憶や知識』が、あくまでもこの世界の『人間』の脳みそにインストールされるという方式がとられているから、一応ところオリジナリティが確保されているのよね」


妹プリンセス「しかも、これまでの十把一絡げの『転生』作品みたいに、完全に蜘蛛に乗っ取られるわけではなく、蜘蛛の『記憶や知識』──特に『欲望』が、転生先の人物自身の『欲望』と混じり合って、いかにも『蜘蛛っぽく』なるところがミソですしね」


ちょい悪令嬢「それによって、どちらかと言うと気弱で敬虔なシスターであった転生教団のテレサ=テレーズ司祭さんが、まさしく『蜘蛛女』とも呼び得るまでに妖艶に大変身して、本作においては本当に『久方ぶりの全面的百合路線』の展開と相成るわけですわよね」


かませ犬「……もはや『タグ詐欺』を疑われる有り様だったから、作者としてもここら辺でどうしても、こういったエピソードを投入せざるを得なかったんだろう」


メイ道「とは申しても、転んでもただでは起きない本作の作者のこと、ただの百合作品であるはずがなく、今回『脳筋GL』という、新機軸を打ち出しましたよね」


真王子様「この作者って、本気を出せばとことん淫靡な百合やBL作品を書けるくせに、一応今のところは『全年例向け作品』ということで、どうしても『お遊び』とか『ギャグ』に逃げがちだよな」


ジミー「まさにその『お遊び』で考え出された『ギャグ』要員であったはずの、第44中隊の面々をフィーチャーすることでこそ、『脳筋GL』という『新しい百合の形』を実現できたんだから、ほんと、何が幸いするかわかったものじゃないわよねえ」


妹プリンセス「ただしその結果、むしろ『正統派百合』要員であるテレサ司祭が、何だか空回りしているように見えたり、もっと百合的に活躍するものと期待された『捕食者サキュバス』である、ミルク元帥の見せ場が少なかったりしたところは、少々不満ですわよね」


ちょい悪令嬢「──まあまあ、そこのところはやはり、『新機軸』と『正統派』は両立しにくってことで、大目にみていただきましょうよ。何せ百合的にはともかくとして、『脇役キャラにスポットを当てた展開』については、一応のところは成功を収めていると言えるでしょうからね」


かませ犬「そうだな、そもそもこんな剣と魔法のファンタジー世界に、わざわざジェット戦闘機部隊なんて創設したのも、何かと影の薄い本来の『正統派ヒロイン』であるアイカ嬢を、新設部隊の指揮官に据えてスポットライト当てるというのが主目的であって、ガランド中将以下第44中隊の面々なんて、いちいちモブキャラの名前を考えるのが面倒だから、実在のドイツ空軍のエリートジェット戦闘機部隊である、『JV44』から引っ張ってきただけであり、ミルク元帥においては、これまた実在のドイツ空軍次官の『ミルヒ』を英訳しただけといった、手抜以外の何物でもなかったのに、今回『蜘蛛の憑依転生』や『脳筋GL』というメインモチーフに、がっちりハマってくれたんだよな」


メイ道「特に、何でもかんでも私の『作者』としての『現実世界の(精神的)書き換え』能力によって事件のケリをつけるという、ワンパーン的展開を避けるためにも、今回の『本来夢や妄想の産物そのものである「転生者」を、「夢を喰らう者」であるサキュバスに食べさせることによってケリをつける』という話の流れストーリーは、非常に好ましいものと言えましょう」


真王子様「サキュバスだったらそれこそ『ナイトメア』嬢を登場させればいいようだけど、彼女は『悪役令嬢バトルロイヤル』以前はずっと王城の地下牢に収監されていたのであって、空軍次官なんて務まるわけがなく、『ミルヒ』から『ミルク』という言葉遊びを発展させて、もう一人の『サキュバス』を生み出すことができたのは、望外の幸運さと言えるだろう」


ジミー「最近のWeb小説においては、『ミルク』と言えば、『サキュバス』だしねえ♡」


妹プリンセス「第44中隊の面々についても、一般隊員たちが最初から最後まで『脳筋』であることで、様々なシーンを大いに盛り上げてくれたのはもちろん、隊長のガランド中将のほうもいかにも曲者っぽく含みを持たせることで、今後の展開が大いに期待できるところでありますわ」




ちょい悪令嬢「このように本エピソードにおいては、様々なモチーフが複雑に絡み合いながらストーリーを進行していき、最後の最後で今回のメインヒロインであったテレサ嬢が、自ら『己の運命や世界そのものと闘うこと』を放棄したために、『悪役令嬢』──つまり、本作においては、自らの意思で闘う『ヒロイン』の一員になれなかったという、結末へと収束することで、作品全体のメインテーマにちゃんと落とし込むといった、この作者ならではのアクロバティックなストーリー展開の妙を見せつけるとともに、作者自身のほうも『悪役令嬢』というものに対する再認識を成し遂げるといった、非常に得るものが多いエピソードであったと申せましょう♡ ──それでは皆様、一応のケリもつきましたことですし、今回の反省会はこの辺にしておこうかと存じます。どなた様もごきげんよう!」







かませ犬「………………とはいえ、もちろんまだまだ語るべき重要なテーマがいくつかございますから、今回の連載50回記念『ボイスチャット反省会特別編』自体は、次回以降も続けさせていただきますので、どうぞよろしくお願いたします」

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