第53話、わたくし、『ちょい悪令嬢』になりましたの。【50回記念特別編】(その3)

ちょい悪令嬢「さてさて、今回も前回及び前々回に引き続き、本作連載50回突破を記念して、これまでのエピソードを振り返る、『ボイスチャット反省会特別編』の第3回目を、わたくしこと『ちょい悪令嬢』を司会に、いつもの量子魔導クォンタムマジックチャットルームより、いつものメンバーでお送りしようと思うのですが、今回はこれまで何度も何度も本編に登場してきた、全編にわたる論理背景の基本中の基本である、『量子論』と『集合的無意識』について、今更ですが改めてじっくりとご説明していく予定でございます」




ちょい悪令嬢以外の全員「「「──はい、読者の皆様、どうぞ、『ブラバ』を!!!」」」




ちょい悪令嬢「ちょ、ちょっと、何ですか、いきなり⁉」




かませ犬「いきなりも、何も、ないだろうが?」


メイ道「……まあた、始まりましたよ、この作者ときたら」


真王子様「きっと、これからくどくどと、膨大な字数を無駄に使って、わけのわからない蘊蓄話が、延々と続いていくんだよな」


ジミー「それこそが読者離れを促進しているということが、何でわからないのかねえ……」


妹プリンセス「『ハルヒ』二次や『青ブタ』二次で、あれだけ失敗しておいて、全然懲りていないんだから、もはや処置なしですわよね」




ちょい悪令嬢「──いやいやいや、皆さん、お気持ちはわかりますが、早まらないで! ちゃんと作者も、反省しているから! けしてこれまでのような、『ブラバ推奨(w)』コーナーなぞにはしませんから!」


かませ犬「……この『作者』が、『反省』?」


メイ道「これほど両立するのが不自然な、日本語の組み合わせもないでしょうね」


真王子様「ま、どうせこれも、『信じた者が馬鹿を見る』パターンだな」


ジミー「……やれやれ、会話オンリーで本編よりも軽快で読みやすいことこそがウリの、この『反省会コーナー』だというのに、わざわざ読みづらくしてどうするのよ?」


妹プリンセス「まさしく、『本末転倒』とは、このことですわ」




ちょい悪令嬢以外の全員「「「とにかく我々『わたくし、悪役令嬢ですの!』の登場人物一堂は、今回に限り、読者の皆様に対して、『ブラバ』を推奨いたします!!!」」」




ちょい悪令嬢「やめてやめてやめてやめて! お願い、信じてちょうだい!」


かませ犬「……だから、あの作者のことなんか、信じられないって、言っているだろうが?」


ちょい悪令嬢「作者が駄目なら、わたくしのことをお信じください!」


メイ道「お嬢様を、ですか?」


ちょい悪令嬢「ええ、この際作者のことはさておいて、わたくしが全面的に保証いたします!」


真王子様「いや、作者をさておくのも、どうかと思うけど…………つまり、貴女はこの件に関しては、持論に自信があるわけなんだね?」


ちょい悪令嬢「もちろん!」


ジミー「では、お聞きしますけど、どういった説明を、どういった難易度で、行うおつもりなんですか?」


ちょい悪令嬢「難易度については、初等教育──すなわち、『ゲンダイニッポン』で言うところの、『小学生の子供でもわかるレベル』で行うつもりです」


妹プリンセス「は? 量子論と集合的無意識論とを、小学生でもわかるように、ですか?」


ちょい悪令嬢「ええ、そうです!」


かませ犬「おいおい、そんなことが、本当にできるのかよ?」


ちょい悪令嬢「できますとも、何せ元々量子論や集合的無意識論は、極当たり前のことしか言っていないのですからね」


メイ道「当たり前のこと、ですか?」


ちょい悪令嬢「実は一言で言えば、量子論は『未来には無限の可能性がある』ことを、集合的無意識論は『天才的閃きとは不断の努力の上に成り立つ』ことを、述べているだけですからね」


真王子様「うん? つまり、量子論と集合的無意識論とは、『可能性』や、『閃き』といった抽象的概念を、物理学や心理学に則って、論理的に解き明かしているということかい?」


ちょい悪令嬢「そうそう、そうなんです!」


ジミー「確かにそうなら、単純明快な話になるけど……」


ちょい悪令嬢「けど?」


妹プリンセス「いやだって、普通の学術書における量子論や集合的無意識論って、いかにも小難しいことばかり記されているじゃないですか? 量子論で言えば『量子というものは無限の可能性が重なり合った状態にあるから、実際に観測するまでは形態や位置が決定していない』とか、『箱の中シュレディンガーの猫は複数の状態が重なり合っている』とか、集合的無意識論で言えば『人間の深層心理は実は一つに繋がっていて、誰でも過去の英知に触れることができる』とか、もはや一般的な学説の範疇を超えて、『超理論』や『オカルト』の領域に踏み込んでいるし、そういった論理学やSF小説等の素養のない人間にとっては、ちんぷんかんぷんなんですけど」




ちょい悪令嬢「──ああ、それは、学者という輩が、量子論や集合的無意識論というものを真に理解していないくせに、必要以上に小難しい言葉遣いばかりしているものだから、本来は単純明快な事柄に過ぎないものが、いかにも難解に見えているだけの話ですよ」




ちょい悪令嬢以外の全員「「「──うわっ、言い切った⁉ しかもこれって、古今東西の『学者さん』の類いに対する、全否定じゃん!」」」




ちょい悪令嬢「大したことも言っていないくせに、ことさら難解な言い回しをして、無駄に専門家ぶろうとするほうが悪いんですよ」




ちょい悪令嬢以外の全員「「「──だから、やめてえ! それ以上、全方面に向かって、ケンカを売らないでえ!!!」」」




かませ犬「それじゃお前自身は、量子論や集合的無意識論を、それこそ小学生でも理解できるように、簡単な言い回しで説明できるのかよ?」


ちょい悪令嬢「もちの、ろん♡」


メイ道「……具体的には、どのような?」


ちょい悪令嬢「まず量子論についてですが、実はこれぞこの作品における作者の、以前よりの持論なのですが、一言で言えば、量子というものを『サイコロ』のようなものであると見なせばいいのですよ」


真王子様「さ、サイコロ、だって?」


ちょい悪令嬢「ええ、そもそも量子論の欠点は、量子という『超次元的存在』を、平面的に捉えようとしているところにありますの。言わばこれはサイコロの上面だけしか見ようとはせずに、『──ううむ、このサイコロというは不思議なものじゃのう。見るたびに表れる数字が変わってしまって、まるで常に『1』から『6』までの数字が重なり合って存在していて、実際に自分の目で確認しないと、どの数字になるか決定しないではないか!』などといったふうに、サイコロが立方体であることを知っていれば、至極当然に過ぎないことを、真面目くさって小難しく言っているだけに過ぎないのですよ」


ジミー「あっ、つまり観測していない時の量子って、いまだ回転中で出目の決まっていないサイコロみたいなもんなんだ!」


ちょい悪令嬢「そうそう、量子論で言うところの、我々普通の人間には観測できない、『ミクロレベルの量子』=『回転中のサイコロ』、ってわけなんですよ」


妹プリンセス「た、確かに、サイコロに置き換えると、俄然わかりやすくなりましたわ!」


ちょい悪令嬢「その通り! 嘘だと思われるのなら、全世界の物理学会においてもいまだ完全には解明されずにいる、量子論における『超難問』を、このいわゆる『サイコロ理論』に則って、今ここで再検討してご覧になってくださいな」


かませ犬「……量子論における最大の課題と言えば、まさしく『きのこたけのこ戦争』にも匹敵するとも言われている、『コペンハーゲン解釈と多世界解釈とのどちらが正しいのか?』につきるけど、量子を平面的にしか捉えることができないゆえに小難しい抽象的なことばかり唱えているコペンハーゲン解釈に対して、『多世界』という一種の平行世界的なものを持ち込んできた多世界解釈は、実は『サイコロ理論』そのままに、量子というものを立体的に捉えることによって、コペンハーゲン解釈の抽象的な言い回しをより具体的にわかりやすく言い直しただけ──すなわち、コペンハーゲン解釈と多世界解釈はまったく同じことを言い方を変えただけであるということが導き出されて、長年学界を悩ませてきた最大の難問が、あっさりと解決してしまったじゃないか⁉」


メイ道「つまり、量子をサイコロに見立てると、上面が今現在の量子の状態であるのに対して、側面や底面が、コペンハーゲン解釈で言えば『無限に存在し得る別の可能性における量子の状態』であり、多世界解釈で言えば『無限に存在し得る別の世界における量子の状態』ということになるわけですね」


真王子様「特に、そのサイコロに記されているのが6までではなく、文字通りに『無数』であるのが、『超次元的存在』である量子というものであり、量子コンピュータの実現に繋がる『量子ビット演算』を可能とする、量子ならではの『未来の無限の可能性すべてとの重ね合わせ状態』とは、無数の数字が刻まれた量子という名のサイコロが回転状態にあるようなものなわけか」


ジミー「これまた量子論における最重要トピックスの代表例である、『シュレディンガーの猫』について言えば、毒ガス発生装置が仕込まれている密閉された箱の中においては、何と量子論に則ると、『毒ガスによって死んでしまった猫』と『いまだ奇跡的に生きている猫』とが二重に重なり合って存在しているなどという、いかにもオカルトじみた非科学的なことを言っているみたいだけど、これもサイコロに置き換えれば、二つの数字だけが記されたサイコロがただ単に回転していて数字が判明しないけれど、停止すれば当然上面に記されている数字が判明する──すなわち猫の生死が判明する──という、至極当たり前のことを言っているだけになるじゃない⁉」


妹プリンセス「──おお、確かに量子を『回転中のサイコロのようなもの』と捉えれば、これまで超難問と見なされていたものが、至極簡単に説明し直すことができるではありませんか!」


ちょい悪令嬢「そうなんです、それもそもそも量子論は極当たり前なことを言っているだけなのに、学者の皆さんが必要以上に小難しい言い回しばかりされるものだから、文字通り誤解が誤解を生み、難解な学問だと思い込まれているだけなのですよ」


かませ犬「……量子論については、まあどうにか納得できたけど、だったら集合的無意識論のほうはどうなんだ? 理論的には『異世界転生』すら可能とする、『ありとあらゆる世界のありとあらゆる存在の無限の記憶と知識が集まってくる超自我的領域』である集合的無意識と、俺たちのような普通の人間がアクセスして様々超常的現象を実現したりすることを、本当に小学生でも理解できるように簡単に説明したりできるのか?」


ちょい悪令嬢「はい、これも結局は、『当たり前のことを言っているだけ』なのですから」


メイ道「当たり前のこと、とは?」


ちょい悪令嬢「まあ、気障な言い方をすれば、『幸運の女神は、真に努力した者にだけ微笑む』って感じですかねえ」


真王子様「……確かに、当たり前なことだな」


ちょい悪令嬢「例えばですねえ、いわゆるかつてなき『世紀の大発明』が成し遂げられる瞬間なんかがいい例なんですけど、それを行った学者さんだか発明家さんは当然のごとく、『どうしてもやり遂げんとする熱意を持ち』、『誰よりも不断の努力と研究とを積み重ねてきた』わけなのであって、そういう人たちだからこそ、最後の最後に『閃き』によってすべてが成就することになるのも、至極当然なことに過ぎないのであって、その『閃き』をもたらすものこそ、『全知なる神の領域』とも言い得る、集合的無意識なのですよ」


ジミー「……なるほど、これまで散々説明されてきたように、確かに集合的無意識とは人智を超えた超自我的領域であるのは間違いないけれど、不断の努力によってあと一歩のところまで近づくことができて、その上で『閃き』という形でアクセス経路が開かれて、本来なら手に入れることなぞできないはずの、未知の知識に触れることができるというわけなのね」


ちょい悪令嬢「ね? 一見いかにもオカルト的なようだけど、実のところは、極当たり前なことを言っているだけでしょう?」


妹プリンセス「確かに、集合的無意識の存在自体は、他ならぬ量子論によって保証されているので、努力次第では普通の方もアクセスすることができて、世紀の大発明のための閃きを得ることだってあり得るというのは、非常に夢があっていいですわね」


ちょい悪令嬢「そうでしょう、そうでしょう」


かませ犬「だったら、集合的無意識へのアクセスこそが、唯一現実的に異世界転生を可能とするということだし、異世界転生の願望が人一倍強かったら、本当に異世界転生を成し遂げることになるわけか?」


ちょい悪令嬢「……う〜ん、もちろんその傾向は強いとは思うんですが、集合的無意識へのアクセスによって実現される異世界転生って、結局のところは夢や妄想のようなものに過ぎず、果たして当の本人が本当に異世界転生をしたのかどうか、確信を抱けるかは甚だ難しいところでしょうねえ」


メイ道「すると、いくら熱意を持っていようが、集合的無意識へのアクセスによる異世界転生は、あまりお勧めできないと言うことですか?」


ちょい悪令嬢「と申しますより、有効な『閃き』を得るという意味からは、実際に異世界転生を行うより、Web小説等の異世界転生を扱った創作物を作成するほうが、より望ましいと言えましょう」


真王子様「……また『メタ』なことを」


ちょい悪令嬢「いえ、実はこれもあくまでも、『熱意を持って創作に当たり、最後の最後まで努力した者だけが、閃きアイディアを得ることができるのだ』という、いかにも当たり前のことを言っているだけなのです」


ジミー「……ああ、一応『びーえるドウジンシ』を作成している者としては、まさに全面的に同意で、努力に努力を重ねて最後の最後まで四苦八苦して初めて、閃きアイディアというものは舞い降りてくるのですからね」


ちょい悪令嬢「そうなんですよ、集合的無意識へのアクセスと言っても、別にオカルト現象なんかではなく、人一倍の努力の末にたどり着くことのできる、至極真っ当な出来事でしかないのです」


妹プリンセス「……あれ、熱意さえあれば、本来夢や妄想である異世界転生すら実現することができるって、もしかして──」




ちょい悪令嬢「──そう、その通り! 文字通り反則技的超チートスキルである『作者』としての力を、より恣意的かつ自由自在に、行使できるようになるのですよ!」




かませ犬「はあ? 何でここでいきなり、『作者』の話が出てくるんだ?」


ちょい悪令嬢「以前申したでしょう? 『作者』の力の源は、『強力無比な正夢体質』にこそあるって」


メイ道「あー、おっしゃりたいことが、わかりました」


ちょい悪令嬢「さすがは、『内なる神インナー・ライター』のメイ道さん、そうです、そうなんです! 『作者』の力を有する方々は、強力無比な正夢体質だから、世界を書き換えられることにとどまらず、そもそも何かしら強い願望をいだけば、その熱意が集合的無意識との回路を開き、願望そのものの夢を見ることとなり、それを強力無比な正夢体質が現実にしてしまうといった次第で、結局は『作者』が何かを強く願うだけで、それがほぼそのまま現実のものとなってしまうってわけなのですよ」


真王子様「……ただでさえやっかいな『作者』の力が、更に思い通りに行使できるようになるとはな」


ちょい悪令嬢「とはいえもちろん、精神的な世界の書き換えに過ぎず、実際に世界を物理的に改変できるわけではございませんけどね」


ジミー「……なるほど、不断の努力と熱意があれば、不可能を可能とすることができて、その後押しをしてくれるのが、量子論や集合的無意識論ってわけね?」


ちょい悪令嬢「おお、格好よくまとめていただき、どうもありがとうございます!」


妹プリンセス「異世界転生を実現させるだけでなく、『作者』としての力をより高められるなんて、まさに量子論と集合的無意識論こそは、これからもこの作品世界とは、切っても切れない関係にあり続けるようですわね」




ちょい悪令嬢「まあ、ファンタジー世界としては、昔ながらの魔法技術のほうも、重要な位置を占めているのですけどね。これについてはおいおいご説明することとして、読者の皆様におかれましても、量子論や集合的無意識論に対する、より深きご理解も得られたかと思われますので、一応今回の反省会は、これにて幕にさせていただきます。また次回の開催を楽しみになさってくださいね♡」

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