第51話、わたくし、『ちょい悪令嬢』になりましたの。【50回記念特別編】(その1)

ちょい悪令嬢「──さあ、今回は、本作連載50回突破を記念して、これまでのエピソードを振り返る、『ボイスチャット反省会』特別編でございます! わたくしこと『ちょい悪令嬢』を司会に、いつもの量子魔導クォンタムマジックチャットルームより、いつものメンバーでお送りいたしますわ!」


ほぼ全員「「「わーわーわー! ドンドンパフパフ! パチパチパチ!!!」」」


メイ道「いやあ、ついに50回突破ですよ!」


真王子様「まさかこんなに続くとは、思いも寄らなかったな!」


ジミー「めでたい、めでたい」


妹プリンセス「これもひとえに読者の皆様の、過分なるご支援ご声援のお陰ですわ♡」


ちょい悪令嬢「──ありがとう、皆さん、本当にありがとう! 作者に代わって主人公かつメインヒロインである、わたくしことホワンロン王国筆頭公爵家令嬢、アルテミス=ツクヨミ=セレルーナが、心より御礼申し上げますわ♡ ………………………………って、あれ?」


かませ犬「……」


ちょい悪令嬢「かませ犬、さん?」


かませ犬「……」


ちょい悪令嬢「あ、あの?」


かませ犬「……」


メイ道「ど、どうなされたのでしょう?」


真王子様「ああ、いつもは反省会が始まった途端、いらん茶々を入れるところなのにな」


ジミー「ほんと、毎度のことながら、とことん『ウザい』ものだと、思っていたけど」


妹プリンセス「何も言わないなら言わないで、なんか不気味ですわね」


ちょい悪令嬢「──ほ、ほら、皆さんもこうして心配して(?)おられることですし、何かご不審な点やご不満の点がお有りなら、遠慮無くおっしゃってくださいませ」


かませ犬「……」


ちょい悪令嬢「え、ええと……」


かませ犬「…………………………すまん」


ちょい悪令嬢「は、はい?」


かませ犬「俺以外のみんなで、お祭り気分でいるところに、ほんと、申し訳ない。──最初に謝っておくよ」


ちょい悪令嬢「あ、あの、一体、何のことでしょう?」


かませ犬「いいか? 落ち着いて聞けよ」


ちょい悪令嬢「はい?」


かませ犬「ちょい悪令嬢以外の、みんなもだ」


ちょい悪令嬢以外のみんな「「「あ、はい」」」




かませ犬「……なあ、俺たち──つまりは、本作『わたくし、悪役令嬢ですの!』におけるレギュラーメンバーを自認しているキャラって、ここ最近それこそこの番外編的な『反省会』コーナー以外には、まったくと言っていいほど出番が無かったとは思わないか?」




かませ犬以外の全員「「「──‼」」」




かませ犬「……確認したところ、ここにいるメンバーについては、【メリーさん編】の最初のエピソードである第32話において、俺とアルが登場して以来今回に至るまで、『反省会』の類い以外ではほぼ二十話にわたって、まともな出演シーンは無かったよ」


ちょい悪令嬢「……」


メイ道「……」


真王子様「……」


ジミー「……」


妹プリンセス「……」




かませ犬「あ──────────────…………いや、悪かった! きっとみんなもわかっていて、あえてそこに触れずに、わざと明るく振る舞ってたんだよな? すまんすまん、俺の世迷い言なんか忘れて、いつも通りに反省会を始めてくれ!」


ちょい悪令嬢「……かませ犬、さん」


かませ犬「──は、はひっ⁉」




ちょい悪令嬢「よくぞ、おっしゃいました♡」




かませ犬「………………へ?」




メイ道「ナイス突っ込みです」


真王子様「ナイス突っ込みだな」


ジミー「ナイス突っ込みよね」


妹プリンセス「ナイス突っ込みですわ」




かませ犬「え? え? え? ──どゆこと、これって?」


ちょい悪令嬢「以前も似たようなことがありましたけど、まさにたった今なされたあなたの台詞こそが、今回の反省会における議論開始の切っ掛けとしては、非常に最適だったのですよ!」


かませ犬「あっ、そ、そうなの?」


ちょい悪令嬢「気づきませんでしたか? 確かに主人公かつメインヒロインであるわたくしは登場しませんでしたが、その間に本編に登場なされていた各話ヒロインの方たちに、ある共通点があったことを」


かませ犬「きょ、共通点って……」


ちょい悪令嬢「わかりませんか? では、質問を変えましょう。──そもそも、本作のタイトルって、何でしたっけ?」


かませ犬「え? そ、そりゃあ、『わたくし、悪役令嬢ですの!』だろう?」


ちょい悪令嬢「そうです、タイトルに表記されているのあくまでも、『アルテミス=ツクヨミ=セレルーナ』でも『の巫女姫』でも『筆頭公爵家令嬢』でもなく、『悪役令嬢』なのです」


かませ犬「……あー、つまり、メインヒロインで『悪役令嬢』であるおまえが出ていない回においても、他の『悪役令嬢』やそれに類するヒロインが出ていれば、タイトル的には問題無いってことか?」


ちょい悪令嬢「そうです、その通りです!」


かませ犬「……ええと、その、だな。これまた、ちょっとばかし、言いにくいんだが」


ちょい悪令嬢「何でしょう?」


かませ犬「ほんっとーに、そいつらって、『悪役令嬢』だったか?」


ちょい悪令嬢「はい?」


かませ犬「いやね、この二、三十話くらいの間に、おまえ以外でメインを張っていたヒロインキャラって、確かに自称あるいは他称において『悪役令嬢』であることになっていたやつもいたけれど、そういったのも含めてほとんどのヒロインが、少なくと俺の個人的見解においては、あんまりWeb小説なんかでお馴染みの、『悪役令嬢』って感じがしなかったんだよ」


ちょい悪令嬢「──ああ、そういうことですか」


かませ犬「そ、そういうことって、おまえそんな、あっさりと……」


ちょい悪令嬢「だって、仕方ないじゃないですか」


かませ犬「仕方ない、って?」




ちょい悪令嬢「──何せ、メインヒロインであるわたくし自身が、Web小説で言うところの『悪役令嬢』らしさが、まったくと言っていいほど、備わっていないのですから」




かませ犬「なっ⁉」


メイ道「──ついに、言った⁉」


真王子様「とうとう、メインヒロイン自身が、言い切った!」


ジミー「誰もが気づいていながら、あえて言わずにいたのに⁉」


妹プリンセス「むしろメインヒロイン自ら、明言するなんて!」




ちょい悪令嬢「……あの、皆さん、これってそんなに、大騒ぎするようなことでしょうか?」


かませ犬「するよ! むしろ前代未聞の、大椿事だよ⁉」


ちょい悪令嬢「でも、本編をお読みになれば、一目瞭然のことではないですか?」


メイ道「そもそもメインヒロインが、まったく『悪役令嬢』っぽく無いことが、一目瞭然であるのが、大問題なんですよ⁉」


ちょい悪令嬢「あ、いや、紛らわしい言い方をしてすみません。厳密に申せば、私や他のヒロインの皆様は、あくまでも『悪役令嬢』とは呼び得ないだけなのです」


真王子様「うん? それって、どういう意味だい?」


ちょい悪令嬢「そもそもですねえ、すでに『Web小説で言うところの悪役令嬢』自体が、一般的な『乙女ゲーム』における『悪役令嬢』キャラや、大昔の小学生向け学習雑誌等に載っていたオマケ的連載漫画における『意地悪なお嬢様』キャラなんかとは、かけ離れた存在となってしまっているのですよ」


ジミー「……あー、そういうこと」


ちょい悪令嬢「つまり、現時点において、真面目に『悪役令嬢とは何なのか?』なんて考え出すと、下手したら収拾がつかなくなりかねないんです」


妹プリンセス「た、確かに……」




ちょい悪令嬢「──事実この作品の作者においても、実際に真面目に考え込んじゃって、一時は『悪役令嬢』というものを、完全に見失ってしまうほどだったのですよ」




かませ犬「それって、ヤバいじゃん⁉」


ちょい悪令嬢「ああ、ご心配なく、もう大丈夫ですから。すでに現段階においては、作者自身にとっての『悪役令嬢』というものを、しっかりと把握できているようですし」


メイ道「……わざわざ『作者自身にとっての』と言うからには、最近の『Web小説で言うところの悪役令嬢』とは、異なるわけなのですか?」


ちょい悪令嬢「あ、いえ、基本部分においては、変わりはありません」


真王子様「基本部分と言うと?」


ちょい悪令嬢「悪役令嬢というものが、元々のキャラ的立ち位置や、ストーリー展開や、その中における人間関係の推移によって、必ずと言っていいほど『破滅の運命』につきまとわれてしまうことであり、最近のWeb小説においては、それをどう回避したり克服したりするかが、作品の最も重要なテーマとなっているのは、皆さんよくご存じのところでしょう」


ジミー「あー、確かに」


ちょい悪令嬢「特に本作においては、これこそを『二大テーマ』の一つに据えているほどで、ご記憶も新しいかと思いますが、かつてのいわゆる『悪役令嬢バトルロイヤル』は、メツボシ帝国の少女皇帝であられる、ヨウコ=タマモ=クミホ=メツボシ陛下が、彼女自身の『悪役令嬢ならではの破滅の運命』を打破するためにこそ、世界そのものを己の支配下に置かんとして起こしたものなのであって、かように本作における『悪役令嬢』たちは、けして己の運命に屈することなく、世界そのものに対しても立ち向かっていくという、『悪役令嬢として生き続ける限りは、常に闘い続けなければならない』ことこそをモットーとしておる次第であります」


妹プリンセス「……ああ、ヨウコ皇帝は、確かにそうでしたし、ルイ=ヤンデレスキー王女なんかも、そんな感じでしたわね」


ちょい悪令嬢「それこそ、あなた方三王女殿下の母君であられる、ホワンロン女王陛下におかれても、過去の女王の座を巡っての骨肉の争いの際はもちろん、ご本人のお言葉によると現在においても、『悪役令嬢として、己の運命に対して闘い続けている』そうですわね」


かませ犬「……そういった各ヒロインにおける、『決意のほど』が固いのはもちろん、他の主だったWeb小説においては、同じように『破滅の運命回避』と言っても、どちらかと言うと策略を用いた『頭脳プレイ』をメインにしているのに対して、本作は実戦的というか何というか、やけに悲壮感が漂っているんだよなあ」




ちょい悪令嬢「──そりゃあそうですよ、大概のWeb小説における『悪役令嬢』の皆さんときたら、ある意味『ズル』をなされているのですもの」




かませ犬「なっ、ちょっと⁉」


メイ道「……またいきなり、問題発言を」


ちょい悪令嬢「いえいえ、これは至極真面目な話なのです。だってほとんどのWeb小説においては、その物語世界自体がいわゆる『乙女ゲーム』そのものであり、『悪役令嬢』に至っては、当の『乙女ゲーム』を熟知している『ゲンダイニッポン』からの『転生者』ばかりであって、どのような『死亡フラグ』があるかなんて先刻ご承知で、その『ズル』そのものの反則的知識を濫用しているだけではないですか?」


真王子様「──ああ、そうだよな!」


ジミー「そうでしたそうでした、昨今のWeb小説においては、『悪役令嬢』と『異世界転生』とは、切っても切れない関係にあるのよね!」


妹プリンセス「……そりゃあ、『死亡フラグ』を回避するなんてお手の物でしょうし、『ズル』と言われても仕方ありませんわね」


ちょい悪令嬢「それに対して本作においては、まさしく『二大テーマ』の二つ目として、『異世界転生』自体を全否定しておりますので、どうやって『破滅の運命』から逃れるかは、それぞれの『悪役令嬢』ヒロインの方々自身の努力いかんにかかっており、どうしても悲惨な雰囲気をかもし出してしまうのも、無理からぬことなのでございます」


かませ犬「……むしろ我がホワンロン王国こそが、『ゲンダイニッポン』からの『転生者』を、この世界に対する『侵略者』と見なして、絶対的殲滅対象と定めているくらいだからな」


ちょい悪令嬢「ええ、己自身の『破滅の運命』に抗おうとしているのに、それを『他人の意思』で行っていては、何の意味もないではありませんか? 第一『転生型悪役令嬢物語』ってそのほとんどが、『破滅の運命』から逃れるために、まずいの一番に『悪役令嬢』であることをやめるといった、まさしくこれぞ『本末転倒』そのままなパターンばかりなのであって、むしろ『悪役令嬢』であることに誇りを持ち、『悪役令嬢』であり続けるためにこそ、『破滅の運命』に抗い続けている本作のヒロインたちとは、真反対な存在と言えましょう」


かませ犬「……ああ、確かに現在のWeb小説のほとんど全部が、『悪役令嬢らしからぬ悪役令嬢』であることこそが、基本的お約束パターンとなってしまっているよな」


メイ道「むしろワンパターンすぎて、食傷気味ですよね」


真王子様「それに比べて本作の『悪役令嬢』たちは、『己の運命や世界そのものに抗い続ける闘うヒロイン』といった、一種独特な新機軸を打ち出してはいるものの、少なくとも『悪』であること──すなわち、『強くて唯我独尊』であることに関しては、きっちりと筋を通しているよな」


ジミー「なんか、『悪役令嬢は転生者を受け容れて当然』、なんていう風潮がはびこっているけど、たとえそれが『乙女ゲーム』の世界であろうとも、そこに存在している限りは、そここそが己にとっての唯一無二の『現実世界』なのであり、『悪役令嬢』自身もけしてプログラミングされたゲームキャラなぞではなく、『現実の存在』なのであって、ちゃんと自分自身の意思を持っているのであり、『転生者』なんかに勝手にされては堪ったもんじゃないわよね」


妹プリンセス「Web作家の皆様は、あくまでも異世界人の立場からすれば、『異世界転生』というものが、どんなに不条理で傍若無人で残酷極まりないものであるかを、一度しっかりと認識してもらいたいものですわ」




ちょい悪令嬢「──実は本作における『悪役令嬢』の在り方こそが、そのWeb小説界全体における最重要テーマを体現しているようなものであって、まさしくWeb小説史上初の、完全に『異世界人の立場に立ったWeb小説』とも言い得るものとなっており、『異世界転生』や『異世界転移』に類する作品を創っておられる方は、是非とも御一読なさることを、お勧めするところですわ♡」







かませ犬「………………ええと、最後の最後で宣伝みたいなってしまいましたが、実はまだまだ語るべき重要なテーマがいくつかございますことですし、今回の連載50回記念『ボイスチャット反省会』特別編は、次回以降も続けさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします」

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