第39話、わたくし、『ちょい悪令嬢』になりましたの。【作者というチート能力】についての解説コーナー。(その1)

ちょい悪令嬢「──読者の皆様、こんばんは♡ またしても深夜の新作公開となってしまい、大変恐縮でございますが、今回は予定を変更して、『聖レーン転生教団』との全面的衝突を目前に控えまして、これからの展開をできるだけ適切に占う意味からも、これまでの連載において特に重要だと思われた疑問点について、徹底的に解明して理解を深めようと、もはや毎度お馴染みの『解説コーナー』を、わたくしこと『ちょい悪令嬢』の司会にて、いつも通りのメンバーでいつも通りに量子魔導クォンタムマジックチャットルームより、愛を込めてお送りいたします! ──それではまず最初に、今回の解説役を担ってくださる、スペシャルゲストにご登場いただきましょう!」




鬼畜メガネ「……どうも、お久しぶり」




鬼畜メガネとちょい悪令嬢以外の全員「「「なっ⁉」」」




かませ犬「……よりによって、こいつかよ?」


メイ道「──とすると、本日の議題って」


真王子様「ああ、間違いないな」


ジミー「ついに、この日が来ましたか」


妹プリンセス「まあ、いつまでも棚上げしておくわけにはまいりませんしね」


かませ犬「──え? もしかして、この眼鏡くんが招聘された理由について、心当たりがまったく無いのって、俺だけだったりして?」


鬼畜メガネ「……一応言っとくけど、僕だって来たくて来たわけじゃないんだよ? 今回の『議題テーマ』だって、わざわざ部外者の僕がやらなくても、解説役に最適な方がお二人もおられるというのに、ストーリーの展開上、まだ他のキャラに自分たちの正体を知られるわけにはいかないということで、利害関係のない『よその世界』の僕にお鉢が回ってきたってわけなのさ」


かませ犬「……まあ、本人が『知られたくない』と言っているんなら、無理に突っ込むつもりはないけど、そもそも一体何なんだよ、今回の議題テーマって?」


鬼畜メガネ「僕が解説役を担うんだから、当然『作者』のチート能力についてに、決まっているだろ?」


かませ犬「……あー、確かにな。これまで何度も部分的な解説は行われてはいたけれど、ちゃんとした概括的なやつは、まだやっていなかったっけ」


鬼畜メガネ「ああ、それで今回僕に基礎的な点だけでいいから、是非解説をしてくれって、『こっちの世界のアル』お嬢様から頼まれてね」


ちょい悪令嬢「──ええ、そういうわけですので、ここは一番何もわかっていないと思われる、かませ犬さんとの問答形式で、コーナーを進めたいと思いますの」


かませ犬「……悪かったな、一番何もわかっていなくて。そう言うおまえだって、同じようなもんだろうが?」


ちょい悪令嬢「何やら、『主人公』にして『の巫女姫』であるアルテミス=ツクヨミ=セレルーナとしては、あまり『作者』のことを知ってしまっては、ストーリーの展開上まずいらしく、ここにいるのはあくまでも『解説コーナーの司会』としての『ちょい悪令嬢』ということで、よろしくお願いいたします♡」


かませ犬「ちっ、わかったよ。ここは言われた通りに、聞き役に徹してやらあ。──というわけで、よろしくな、『鬼畜メガネ』君」


鬼畜メガネ「……そのHNハンドルネームは、いまだに不満なんだけどね、まあ、よろしく」


かませ犬「それについては、全面的に同意だ。──一体何なんだよ、このコーナー。『鬼畜メガネ』と『かませ犬』とによる、質疑応答って、どんな色物コーナーなんだよ?」


鬼畜メガネ「まあ、『小説的世界における、作者とは何ぞや?』なんていう深遠なるテーマを、たった一回だけで語り尽くせるわけがないから、今回は極基本的なことだけに限らせてもらおうと思うけどね」


かませ犬「いやむしろ、一度基本的なところを解説してもらいたかったから、助かるよ」


鬼畜メガネ「そうかい? ではまずは、基本中の基本から。『作者』なぞとという文字通り反則技的なチート能力が使えるのも、何よりも最大の前提条件として、『ゲンダイニッポン』における現代物理学の根本をなす量子論に則れば、世界というものには無限の可能性があることから、無限に存在し得る『こことは別の可能性としての世界』──多世界解釈量子論で言うところの『多世界』の中には、まさにこの世界そのものを『小説』として作成している、Web作家等の文字通り『作者』が存在していることを、けして否定できなくなるんだ」


かませ犬「……すっげえ詭弁のようにも思えるんだけど、『ゲンダイニッポン』の現代物理学が言っているんなら、何でも『チュウセイよーろっぱ』の文化レベルらしい、俺たちには反論しづらいよな」


鬼畜メガネ「いや、何もそこまで、自分の世界を卑下しなくても」


かませ犬「つまりそれって逆から言えば、この世には無限の可能性があるんだから、実はこの世界そのものが、単なる小説に過ぎない可能性だって、けして否定できないってことでもあるわけか?」


鬼畜メガネ「いや、そこなんだよ、素人が陥りやすい、『重大な勘違い』は」


かませ犬「へ? 勘違いって……」


鬼畜メガネ「最近こういった、『作者自身が自分が作成したWeb小説の中に入ってしまう』といったWeb小説がよく見受けられるけど、そのほとんどがこれと同じような、『根本的過ち』を犯しているんだよ」


かませ犬「また、全方面にケンカを売るパターンかよ⁉ 何だよ、『根本的過ち』って?」


鬼畜メガネ「身も蓋もない言い方をすれば、人間が、小説の中に入り込んだりできるかって、話だよ」


かませ犬「ほんと、身も蓋もないな⁉」


鬼畜メガネ「いや、実はこれは、『作者というチート能力』を語る上では、非常に重要な点なのであって、実はこの世界にとって、文字通り『作者』とも呼び得る超越的存在がいたとしても、別にこの世界そのものを小説として生み出しているわけではないんだ」


かませ犬「え、違うのかよ?」


鬼畜メガネ「わかりやすく言えば、『作者が存在している世界』と、『この現実世界』との間に、『作者によって作成されている、この世界そっくりそのままの小説』が存在していて、別に『作者』は直接この世界を書き換えているわけではなく、あくまでも自作の小説を作成したり加筆修正しているだけなんだ」


かませ犬「え、ええと……」


鬼畜メガネ「つまりこの世界は、あくまでも現実なのであって、誰かの手による小説なんかじゃないってことさ。例えばこのボイスチャットの様子がWeb小説化された場合、『かませ犬「え、ええと……」』とか、『鬼畜メガネ「つまりこの世界は、あくまでも現実なのであって」』とかといった具合に、地の文も何も無い、戯曲やシナリオみたいな文章の羅列だけが、『小説家になろう』や『カクヨム』等の小説創作系Webサイト上で公開されて、読者の皆様の目に触れることになるんだけど、もちろん実際の僕らは文字だけの存在なんかではなく、このようなボイスチャットの裏側で、ちゃんとそれぞれの人生を演じているわけじゃないか? それが『作者』が作成している単なる小説と、我々がれっきとして存在して生活を営んでいるこの世界との違いなのさ」


かませ犬「……つまり、この世界はたまたま、別の世界のあるWeb小説家が作成していた作品とそっくりそのままだっただけで、最近流行のWeb小説においても、別に作家自身の作品そのものに転移してしまったのではなく、作家の作品そっくりの異世界に転移したってわけか?」


鬼畜メガネ「ああ、大体その見解で合っているよ」


かませ犬「じゃあ、何でその作者が自作を書き換えると、こっちの世界が改変されてしまうんだよ?」


鬼畜メガネ「え、いや、改変されたりしないよ?」


かませ犬「はあ? いやでも、自作を書き換えることで、その中に描かれた世界を実際に改変できることが、まさしく『作者というチート能力』の最大の特長じゃなかったのかよ⁉」


鬼畜メガネ「……ええと、本来『部外者』である僕が言うのもおかしいんだけど、確か前々回の第37話において、『世界というものはそれ、けして改変されたりすることはなく、「改変前の世界」と「改変後の世界」が、最初から二つ揃って存在しているだけなのだ』って、述べられていたんじゃなかったっけ?」


かませ犬「──あ」


鬼畜メガネ「つまり、もし本当にその『作者』の自作そっくりの世界が存在していたとしたら、その世界に存在している『主人公』に当たる人物は、最初から作者が書き直したほうのストーリー通りの人生を歩む運命にあったというだけなんだよ」


かませ犬「しかし、あくまでも『作者』側の視点においては、書き換える前の小説だって、ちゃんと存在していたわけだよな? その『主人公に当たる人物』とやらは、作者が自作を書き換えることによって、人生を改変されたってことにならないのか?」


鬼畜メガネ「これもおそらくすでに述べられているかも知れないけど、小説自体が複数の世界の集合体みたいなものであって、それに対応する世界も同じ数だけあって、『作者』は自作を書き換えることであるを改変しているのではなく、本人無意識のままに、別の世界に入れ替えているだけなのさ」


かませ犬「……うう〜ん、つまりイメージ的には、結局読者や主人公は、『作者』が最終的に加筆修正を終えた『完成原稿』だけを、唯一の作品世界として見なすことになるという、見解でいいわけか?」


鬼畜メガネ「まあ、大体そんな感じだね。──それで、話を元に戻すよ」


かませ犬「え? 元の話って、何だったっけ?」


鬼畜メガネ「だから、『作者』とこの世界との間には、『この世界そっくりそのままの小説』が存在していることこそが、『作者というチート能力』を語る上での、最大のポイントという、最も重要な前提条件のことだよ」


かませ犬「ああ、そうだ、そうだった」


鬼畜メガネ「実はね、『作者』には二種類あって、今まで述べてきたように、この世界の外側でこの世界そっくりそのままの小説を作成している『作者』を、『外なる神アウター・ライター』と呼んで、それに対してあくまでもこの世界の中で『作者』的な力を振るえる存在を、『内なる神インナー・ライター』と呼ぶんだ」


かませ犬「……またなんか、複雑になってきたな。本当にこれって、基本中の基本なのかよ?」


鬼畜メガネ「大丈夫だって、ここからは本当にざっくりと説明するだけだから。まず『外なる神アウター・ライター』についてだけど、『世界の外側に存在する世界の創造者』なんていうと、いかにも文字通り神様的な絶対的超越者かと思いがちだけど、先程から言っているように、あくまでも無限の可能性の結果として、たまたまこの世界そっくりな小説を書いているだけの、ただの人間に過ぎず、この作品においても、別に問題視する必要はないんだ」


かませ犬「はあ⁉ あんた自身も含めて、これまでに何度も、まさにこの世界そのものを小説にしたような、『わたくし、悪役令嬢ですの!』という題名のWeb小説を作成しているやつが登場してきて、いかにもこの世界が実は小説かも知れないといった、思わせぶりな言動をさせていたじゃないか⁉」


鬼畜メガネ「だから僕たちが作成していたのは、あくまでも単なる小説であって、たとえその内容がこの世界そっくりであろうとも、小説というものが複数の世界の集まりのようなものであることからも、そのものズバリこの世界そのままということはけしてあり得ないんだよ」


かませ犬「──くっ、確かにこれまでの解説を聞いていると、そうなるかも知れないけど、今更それはないんじゃないのか?」


鬼畜メガネ「とにかく、『外なる神アウター・ライター』なんて、重要視する必要はないんだって。──むしろよりただならぬ存在であるのは、『内なる神インナー・ライター』のほうなんだ」


かませ犬「これまで散々『外なる神アウター・ライター』のようなものを登場させてきたくせに、今度は『内なる神インナー・ライター』かよ? それって一体、どんなことができるんだ?」


鬼畜メガネ「つまり、さっきから何度も言及してきた、『外なる神アウター・ライター』が作成した『この世界そっくりそのままの小説』を書き換えることで、この世界を改変できる力を有しているんだよ」


かませ犬「いやでも、世界を改変することなんか、絶対に不可能じゃなかったのか?」


鬼畜メガネ「だから言っているだろう、『精神的に』って。『内なる神インナー・ライター』の世界改変能力は、いわゆる『与えられた力ギフト・スキル』なのであって、自分自身は小説家である必要もなく、この世界みたいにファンタジー的世界であっても、『ゲンダイニッポン』のインターネットにアクセスすることができれば、当然のように自らが所有する量子魔導クォンタムマジックスマートフォン等に、くだんの『この世界の有り様がそっくりそのまま描かれたWeb小説』が自動的に表示されることになって、その記述を書き換えれば、その内容に関与するすべての人物が強制的に『集合的無意識』にアクセスさせられて、書き換えられた通りの『記憶や知識』を脳みそに刷り込まれてしまい、彼らの認識の上では書き換えられた小説の内容こそが、正しい世界になるという次第なのさ」


かませ犬「……ええと、あまりに抽象的すぎて、何を言っているのかわからないんだけど、具体的には、どういうことなんだよ?」


鬼畜メガネ「例えばね、大勢の強大なモンスターから迫られた場合、『すべてのモンスターは一瞬にして消滅した』なんていう、な書き換えは現実に反映されたりはしないけど、『すべてのモンスターは戦意を失って立ち去って行った』といったふうに、あくまでもな書き換えを行えば、実際に集合無意識を介してモンスターたちの脳みそが書き換えられて、『戦意を失って立ち去っていく』ことになるってわけなんだよ」


かませ犬「ああっ、何かそういったシーンが、これまでにあったような気がする!」


鬼畜メガネ「つまりにね、『内なる神インナー・ライター』の力の本質とは、それが生まれつきのものか、後天的に何者から与えられたものかにかかわらず、自分や他人を強制的に集合的無意識にアクセスさせて、思い通りの『記憶や知識』を無理やりインストールすることなのさ」


かませ犬「だからこの世界の有り様をそっくりそのまま描写している小説を書き換えれば、あくまでも精神的とはいえ、しっかりと現実に反映されることになるわけか」


鬼畜メガネ「そういうこと。最近流行の小説には『作者』自身を主役にすることで、自作にそっくりな異世界を、物理的に改変し放題って作品も目につくけど、そんな反則技的チート能力を持っていたんじゃ、文字通り『何でもアリ』になって、最初のうちはいいけれどそのうち物語が破綻してしまい、長期連載なんてどだい無理な話だろうから、『作者』としての力は『内なる神インナー・ライター』の精神的改変能力に限定したほうが、より現実的かと思うよ」


かませ犬「……いや、『内なる神インナー・ライター』の精神的改変能力のほうにしたって、とんでもないチート能力であることには、変わりはないんじゃないのか?」


鬼畜メガネ「そうだね、むしろ『聖レーン転生教団』みたいに、自他の『転生能力』を最大の武器にしているやつらにしたら、まさしく天敵みたいな存在だろうね」


かませ犬「──‼ そ、それって⁉」


鬼畜メガネ「まあ、これについては更に話が複雑になってしまうから、また次の機会ということで、本日の『作者基本講座』は、こんなところでいいんじゃないのかな」


ちょい悪令嬢「──というわけですので、また次回をお楽しみに♡ では、本日の解説コーナーは、これまでといたします!」


かませ犬「おいっ、本当にこんな中途半端なところで、終わるつもりなのかよ⁉」

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