第2章 個々の事情と熱情
2-1
昨日はあれから扉が開かれることは無く、自由に部屋を物色する事が出来た。アンティーク調のタンスの中には、新品の下着が袋のまま綺麗に並べられていた。唯一ある窓の分厚いカーテンを開くと、雨戸が閉められていてピクリとも開く気配はなかった。
何もないこの部屋で一日、何をして過ごせばいいんだろう。
沙也加はぼんやりと思った。
ピンポーン
インターフォンの鳴る音が沙也加のいる部屋にまで響いた。
思わずドアに張り付いて聞き耳を立てると、微かに話し声が聞こえるが内容までは聞き取れない。
「もう・・・安い家なら聞こえるのに」
沙也加は残念に思ってしまっている自分に気付き、なんだか微妙な気分になった。これは興味ではなく、情報収集だからいいんだ。そう自分に言い聞かせて再度耳を澄ますと、先程の声が遠退いていってしまった。いくら耳を押し付けても、もう声は聞こえない。
仕方ないのでベッドに寝転んで、天井にぶら下がっているシャンデリアの装飾の数を数える事にした。携帯が無いというのはこんなにも不安で、暇なんだなと今更ながら思った。
カチャン
突然入り口の方から音がして飛び起きた。もう、訪問者は帰ってしまったのだろうか。鍵が開いた音はしたものの動く気配は無く、焦れた沙也加はのそりと起き上がりドアノブに手をかけた。
「ひゃっ」
その瞬間、ドアが引かれて前のめりに転んでしまった。反射的に閉じてしまった目を開けると、そこには中性的な少年が目をまん丸にしてこちらを見ていた。
「あ、ああ、ごめんなさい」
沙也加は少年を押し倒す様な体勢で転んでしまっていた。彼の薄い胸板に触れていた手を咄嗟に引っ込めると少年が柔らかく微笑んだ。
「んーん、僕が支えられなかったのが悪いんだ。痛いところはない?」
「大丈夫です。___え? ひゃあっ」
ふるふると振った両手は、少年に掴まれて万歳するように持ち上げられた。指の先からゆっくりと見られて恥ずかしくなってしまう。放してもらおうともがくも少年の力は予想以上に強く、全てを見られているような気がして居た堪れない。
少年の視線が胸元の一点に集中しているのに気付き目をやると、シャツの上からでもそこがツンと主張していた。沙也加は寝るときは下着を外す派だった。
「___可愛い」
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