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戻ってきた貴臣の手にはシャンパングラスが二つ握られ、顔は彫刻の様な無表情に戻っていた。
「そこでくだらんテレビでも観ていろ」
「・・・ありがとうございます」
貴臣はそのままデスクに戻り、再び作業を始めてしまった。
ちびちびとシャンパンをすすりながらテレビをつけたが、頭がほわほわして全く内容が入ってこない。窓から見えるのは相変わらずの夜景で、最初の感動はすでに無くなってしまっていた。
貴臣を盗み見ると頬杖をついている姿さえも絵になった。身長は百八十センチを超えているだろう。しっかりとした胸板は逞しく、すらっと伸びた足はモデルにも引けを取らない。年齢はかなりわかりづらいので、おそらく三十歳から四十歳くらいにしておこうと思う。この落ち着きと色気は四十代だけど、それにしては綺麗すぎる。それにここに住んでいるということはかなりの収入だから・・・、考えても答えは出なかった。
一人暮らしなのだろうか。___こんなに広いと、寂しくなっちゃいそうだな。
「・・・おい。___寝たのか」
貴臣が声をかけたのはそれから三時間後だった。沙也加はボトルを一人で一本開けて、そのままソファで眠りこけていた。
「私はお前を監禁しているんだぞ。なんでそんなに危機感が無いんだ・・・」
貴臣はソファで丸くなっている沙也加の太ももを大きな手の平で撫でると、そこはひんやりと冷たくなっていた。ミディアムロングの髪をかき分けると、ぽってりとした下唇に痛々しい傷跡が残っていた。
「んん__、ん?!」
息苦しさに目を開けると、至近距離で猫の様な瞳と目が合った。
「ん___、ぷはっ。殺す気ですか?」
容易に離された唇は濡れて、口付けの余韻を残していた。
「勝手に寝るからだ」
そのまま貴臣に腕を捕まれて引っ張られて行くと、つい数時間前まで繋がれていた部屋に押しやられた。電気の付いたその部屋は、ダブルサイズのベッドと小さめのソファやタンスなどがある至極普通の部屋だった。
「明日は来客がある。声を出したら、どうなるかわかるな?」
そう言い残し扉は閉じられ、がちゃりと鍵の閉まる音がした。一応確認してみたが、内側から開けられない構造の様だった。
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