1-2
苦しい。息が出来ない。
「んんっ」
もがこうとした腕は、強い力によって押さえつけられた。首元には熱いものにぐっと包まれている感覚。
意識が覚醒してきた頃にははっきりと感覚が戻り、この息苦しさの正体は口付けであることを悟った。喉元を抑えて付けているのは大きな手の平。目を開いても真っ暗な闇の中で、相手が誰なのか見当もつかない。
一度侵入を許してしまった唇を閉じる事も出来ず、ただされるがままに弄ばれた。逃げる舌を絡めとり吸われると、否が応にも熱い息が隙間から漏れてしまった。
「はっはっ、んんぅ・・・」
息を吸おうと必死でもがくも、口付けは更に激しさを増した。ギィっと背中でスプリングが軋み、抑えられた手がぎゅっと握ったものは毛布だった。
ここはベッドの上だ。そう思った瞬間にぞっとした。キスぐらいくれてやれと思っていたが、その先はそんな簡単に許せるものじゃない。
「んーんーん、んん・・ん」
沙也加の本格的な抵抗が功を奏したのか、完全に塞がれていた唇は上半分だけが開放された。離れるかと思っていた唇は、名残惜しそうに沙也加の下唇を吸っては放すを繰り返している。
「あ、の・・・どなたですか?」
とんでもない変態で猟奇的な人だったら怒らせてはいけないと、なるべく落ち着いた声で話しかけた。
ちゅぽっと音を立てて唇が離れた。完全に開放されて濡れた唇は、じんじんと余韻を残している。
「お前のご主人様」
「___はい? ・・・えっと」
「黙れ。私は腹が減っている」
答える間もなく再度唇を重ねられた。顎に添えられた手は逃げ道を奪い、抑えられた手首はベッドに強く縫い止められた。
熱い舌先が上の歯茎を順番になぞっていくと、むず痒い感覚に身体が揺れた。男は沙也加の反応を楽しむように、執拗に口内を動き回る。攻防戦というよりは、完全に沙也加の負け戦であった。直ぐに終わってはつまらないだろうと、じっくりねっとりと少しずつ責めてくる長い口付けに沙也加はゆっくりと意識を手放した。
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