2もし、全員がこんな容姿だったら……
自分の部屋のストーブのスイッチとパソコンの電源を入れ、部屋が温まるのをベッドの中で布団にくるまり待つ。頭の中で今回の小説のあらすじを頭の中で考える。
「広告の動画をネタにした小説か。今回はBLに関連させるのは難しいかも。まあ、最近は、女子力高い男子が受けとして人気高いから、アリかもしれないけど」
考えていると、自分の体温で布団の中の温度が上がり、ストーブのおかげで部屋の温度も上がったことで、急に私自身の身体がぽかぽかと温まってきた。こうなると、次に訪れるのは眠気である。
「い、いかん。このままウトウトしてしまっては、せっかく大鷹さんから提供されたネタをまとめられない!」
眠気を頬をつねることで解消すると、慌ててベッドから出てパソコンの前のイスに座って、プロットをかきだしていく。
「そうだなあ。もし、広告のように化粧品やサプリを使って簡単に身体の一部をきれいにすることができるなら……。簡単に男性が思わず振り返るような美人が完成するのなら、それを逆手に取ったこんな話はどうだろうか」
・男性は、キレイだったら誰でもいいのか。痩せれば、髪がサラサラなら、二重なら、足が細ければ、肌がきれいなら、誰もが振り返る美人が完成か
・広告の商品を使うだけで、キレイが手に入るのなら、世界中が美人だらけで、美人が飽和状態になっているはず
【平凡な容姿の女子高生が、親の都合で転校を余儀なくされる。その転校先の女子たちの女子力が高すぎて驚くと同時に、皆が同じような美人要素が詰まっていて、没個性に思える。完成されていない主人公が逆にクラスの男子にちやほやされる話】
・主人公は、ある高校に転校する
↓
クラスに入ると、むっといろいろなにおいがして、気持ちが悪くなる
そして、教室を見て驚愕する
↓
クラスの女子全員が完璧な容姿だった。しかし、誰も彼もが同じに見えて、没個性の集まりに思えてくる
容姿(広告のストーリーを参考にする)
・髪
サラサラのストレート、誰も彼もが髪からふんわりとにおいが立ち込める。教室が匂いで充満している原因となっている。髪型はツヤがよくわかる、黒髪ストレート、もしくは茶髪のゆるふわカール。少し天然が入った主人公の自然なカールでショートの髪型が目立つ
・瞳
誰も彼もがおめめぱっちりの二重瞼、誰も彼も過ぎて、いっそ没個性。主人公は一重で目立っている
・顔
誰も彼も、毛穴一つない、つやつやプルプルの肌、誰も彼もが透き通った白い美肌。そんな女子が大量発生で没個性。そばかすとニキビが、目立つほどでもないが少しある主人公は以下略
・歯
誰も彼も、歯がインプラントなみに真っ白で輝いている、白すぎていっそすがすがしい。
誰も彼もにっこり爽やかに笑っている。むしろ、それが怖いとさえ思えてくる。歯磨きは怠っていないが、ホワイトニングしていない主人公は以下略
・身体
誰も彼もが髪と眉毛以外毛が一本も見当たらない。ツルツルつやつやのもっちり肌をおしげもなくさらしている(うなじ、腕、足)さぞかしさわり心地がいいのだろう。
脱毛クリーム使用者は、ふんわりと身体から匂いがただよう。教室のにおいの原因となっている。誰も彼も過ぎて、誰に触りたいかわからなくなる。主人公はそんな彼女たちに隠れて肌を隠すので、いっそ以下略
・胸
誰も彼もが豊胸かよというくらいに、胸が大きい、貧乳が一人もいない。男たちの楽園?になっている。大きいのはいいことだが、重たくなるというのはないのだろうか?貧乳が個性になる可能性あり、主人公はどちらかと言うと貧乳で以下略
・身体
誰も彼もがスタイル抜群のプロポーション。肥満体系が一人もいない、むしろ痩せすぎだと思われる女性ばかり。主人公は太っているとは言い難いが、クラス中だと太い方になってしまう。いっそ以下略
・身体
誰も彼もが足が細い、モデル体型。足が短いのは、遺伝でいるとは思うがなぜかいない。すらっとした美脚をあらわにしている。男の楽園?になっている。主人公は自分がみじめになり、スカート丈をあえて長くするが、それが以下略
・転校初日、クラスの女子生徒たちに取り囲まれる主人公
↓
・クラスの女性生徒がこぞって、昔の自分の姿を映した写メを見せつけてくる
↓
・その後、自分がこの商品を使って、いかに劇的な変化を経たのか自慢され、商品を主人公に勧める
↓
・あまりの強引な商品の勧めかたに、思わず、すべての女性生徒の勧誘を断る
↓
・両親に転校したい旨を伝える
↓
・美人と呼ばれる人も、美人でないと言われる人も混ざっている普通の高校に転校して、ようやく安心した主人公。
・どの女性も今の美人の基準をすべて満たしていて、逆に男性の目を引きにくくなっていた
・そんなクラスに転校してきた主人公は、なぜか男子生徒から注目を浴びてしまっていた
結局、前回執筆した。ムダ毛の話と同じような結末になりそうだ。私は自分の書いたプロットらしきものを改めて眺める。前回、ムダ毛処理から端を発した、女性の身だしなみと価値観を問うための小説を執筆してみた。それは結局、私がツルツルを好きだという、世間と同じ思考に洗脳されているため、後味悪いものになってしまった。
「とはいえ、今回はさすがにキモいと思えてくるなあ。私たち女性に求められている理想を全員がかなえたら、こうなってしまうということか」
ネタをフルに活用した話にはなっているが、果たしてこれをもとに小説に作り上げて、世間に発表してもいいものだろうか。
「ううん。まあ、物は試しにこの話を完結させてみようかな」
「トントン」
「どうぞ」
私の部屋のノックをしてくるのは、一人しかいない。今回の話は別に隠すような内容でもない。
「お風呂が入りましたよ。執筆は進みましたか?」
わざわざ、お風呂が入ったことを伝えに来てくれたらしい。本当によくできた夫である。その際に、執筆状況を聞いてくるのは、相変わらずである。
「こんな感じですけど、なんだか、微妙な話になってしまいました」
小説にまとめる前に、一度大鷹さんに見せることにした。パソコンの画面には、今さっき私が殴り打ちしたプロットもどきが映っている。
「まあ、僕もこんなに完璧な美人ばかりの教室にはいたくないですね。クラスの女子全員が理想の女性像でいられると、それはそれで何とも言えないですね」
「大鷹さんもそう思いますか?」
どうやら、大鷹さんも私と同じ意見の様だ。さらに続けて、面白い意見をくれた。
「こうなると、主人公の容姿が際立ちますね。なんだか、この状況はアレに似ていますね。ほら、最近流行っているでしょう?悪役令嬢もの、でしたっけ?あれは、その世界の理想像を極めた女性たちの中に、一人の異物が紛れ込んで、そんな異物が珍しくて、男が恋に落ちる奴です」
「それ、悪役令嬢ものが好きなファンに喧嘩売っていますよ」
「人それぞれ、意見は違うものです」
「そういうものですけど」
とりあえず、大鷹さんは、私のこの物語を書いてみてはと言ってくれた。前回はプロットごと消してしまったが、今回は執筆して、世間に出すことに決めた。
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