第5話 サンデー
そんなこんなで日曜日になって、
ヴェスパはハンドルの左側のクラッチレバーを握りながら、グリップを捻って変速する。美生はまずその説明を陽にした。
陽は意外にも器用にヴェスパに乗って、駐車場をぐるぐる回る。降りて一言、
「トリシティと全然違うのね。」と言った。
美生はヴェスパを嫌になったのかと思ったが、
「とても楽しいわ、やっぱり私の目に狂いはなかったわね。」などと言って、
美生の目論見は外れたようだ。
せっかくだから、美生もトリシティに乗ってみた。前が2輪だから安定感がある。佳とのタンデムツーリングの時には気楽だし、性能も充分でいいなと思った。
有希もヴェスパやモトムに乗って、楽しそうに駐車場を回っている。佳もトリシティは楽でいいね、と言っている。もっとも佳の免許では50ccまでのバイクしか乗れないのだが。
4人で取っ替え引っ換え、さんざん乗り回して疲れた所でお昼を食べようという事になり、今度は陽の部屋に行くことになった。
陽の部屋は陽自身とは違って地味な感じだった。ホームセンターで買ったような家具が置かれている。佳の部屋の方が余程おしゃれでセンスが良かった。陽のセンスがどうこうというより、インテリアに興味がないのであろう。
有希が持って来た食材で、美味しいパスタを作ってくれた。陽も嬉しそうに食べている。
そこに美生のスマホに着信が入った。バイク屋の店主からである。
「お手数かけました。ヴェスパのお話を伺えるようになったので、彼女に伝えてくれませんか。」
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