第3話 アクティビティー

美生みおようが一方的に話しているのを聞き流しながら、陽に初めて会った時のことを思い出していた。


美生のクッチョロがエンジンのオーバーホールでバイク屋に預けられていた時、美生は新たに購入したヴェスパで通学していた。陽はヴェスパで正門から入って来た美生を見て、そのまま駐輪場まで追いかけて来た。


そのスクーターは何、どこで買ったの、ちょっと見せてくれない、等々、矢継ぎ早に言われたような気がする。美生はその日は授業の仕度があって、急いでいた。陽の話を遮って、今忙しいので、また今度にしてもらえますか?と言った。


その時、陽を見て、すごい美人だなと思った。


後日、また来るかなと思っていたが、陽は現れなかった。どうも気分を害してしまったらしい。しかし、陽と関わると厄介なことになりそうな感じがしたので、美生は放っておいた。そして今、厄介なことがブーメランになって戻って来ている。


美生は陽の話に神経を戻した。陽は滔々と話し続けている。話を遮られなければ、相手が自分の話を聞いているかどうかは別に気にならないようだった。


どうやら陽は美生にふられた後、自分でヴェスパのことを調べて、教習所に通って中型二輪の免許を取ったらしい。いきなりヴェスパに乗るのは荷が重いと判断したのか、ヤマハのトリシティという前が二輪の三輪スクーターを買った。それで、ヴェスパが来てそうなイベントに行ったり、ヴェスパを扱っているお店巡りをしている。


けっこう行動力あるんだな、美生は意外に思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る