第21話

その日の夜寝室から声が聞こえてきた

彼は泣いているみたいだった

聞いてちゃいけない気がして私は自分の部屋に戻った





「ひかり、昨日はごめんなさい私」

川村さんの言葉を遮った

「川村さんは悪くないよ、もともとは私のせいだから

それより今は今の仕事でしょ?」

「そうね、でも私まだ諦めてないわよ

じゃあ今日もよろしくね

あれ?お弁当持ってくるなんて珍しいわね?

自分で作ったの?」

「そ、そう偉いでしょ?」

「ふーんあっそ」

川村さんは勘がいいから気を付けないと


朝起きたら

朝食が用意されていた

「おはよう朝はパン?ご飯?どっちがいい?」

「あ、おはよう

すごいね美味しそう、じゃご飯にしようかな」

「了解、お弁当も作ったから良かったら持っていって」

「へぇ嬉しいありがとう!」

本当に嬉しかった独り暮らしを始めてから手作りのお弁当は初めてだった

いつも朝食を食べない私だけど美味しくてぺろっと平らげてしまった

「もっとほしかった?」

「ううん、美味しくて

それに食べ過ぎると太っちゃうからこれで十分」

「そっか良かった」



なにより彼の気遣いが嬉しかった

彼は私がしてほしいことを先回りして

確認してくれる

そして「良かった」って安心した顔をする

それで私も嬉しい気持ちになる



「じゃ秀くん行ってくるね夕方には帰るから

ビーフシチューよろしくね!」

満面の笑みで出掛けた

彼も優しい笑顔で見送ってくれた




帰り道ケーキを買って帰った

彼は甘いもの好きだろうか?

甘過ぎるのは苦手かなぁ

そんなことを考えながら

私の帰りを待っている人がいる家に帰った



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