第20話

「秀くん」

もうそう呼ばれるなんて思いもしなかった

でも恥ずかしくて照れてしまった




しおりがまた現れてくれた

俺はひかりに感謝した


俺は居候記念に料理を振る舞うことにした食材は買ってきてもらった

ただキャベツがレタスだったり

バターがマーガリンだったり

牛肉じゃなくて豚肉だったり

ちょっとそういうことには疎いようだ


やんわりと違うことを伝えると

「違うの、私レッスンばっかりしてたし

外食ばっかりだったから

常識ない娘ってわけじゃないから」

必死に取り繕う彼女は同棲しだした頃のしおりのようだった


「大丈夫、少しずつ覚えてもらえば

もしくは食材の宅配を頼むとかさ

とりあえず今日はこれで作れるから気にしないで」

そういうと彼女は安心した顔をした



「おいしい」

無邪気な笑顔で言った

「秀くんすごいね、シェフみたい他にも作れるの?」

「うん、まぁリクエストくれれば作るよ

あ、食材は間違えないでね」

意地悪に言うと

頬を膨らませながら

「ちゃんと教えてくれればわかるもん

じゃあ明日はビーフシチュー作って!」

「任せろ」


彼女は同い年で二十歳だった

オートロックでそこそこ広い部屋に独り暮らし

収入もそこそこあるみたいだし

結構有名な人なんじゃないかなと思った



彼女は寝室を用意してくれて

俺は久し振りに落ち着いて眠ることができた

その日夢を見た




俺としおりが料理をつくっていて楽しそうにしている

そんな悲しい夢だった


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る