第7話

川村さんと顔を合わしても事務的な話しかしないようにした

また彼のことを言われると思ったからだ


「ひかりはどんどん仕事が入ってきてうらやましいなぁ」


「女のアイドルだから今のうちだけだよ

逆に加々美さんはこれから」


「嫌味かよ、さすがトップアイドル様は上から目線ですね」


最近加々美さんは機嫌が悪い原因は明白だった

加々美さんより私の方が売れるようになったから




「ひかり、大丈夫?顔が暗いわよ」


「別に、平気だし」


川村さんはすぐに気付く

「そう、ならいいけどこのあとは雑誌の取材一本終わったら予定はないからよく休んで」


おそらく私の様子を見て仕事をセーブしてくれたんだと思う

「川村さん、相談あるんだけど、、、いい?」

「いいわよー、最近話してくれないから寂しかったわ」

ニッコリと優しい笑顔だった

ダムが決壊したみたいに涙が出てきた

優しく抱き寄せてくれた

「加々美くんのことかな?」

コクっと頷いた

「あんまり上手くいってないんだ

まだ好き?」

「わかんない」

「そっかぁ、、、

これも経験よ、私なんかひかりぐらいの時には数えきれないぐらい泣かされてたわよ」

「そうなの?意外」

「そうよー変な男を好きになっちゃうの


でもいろんな機会を奪ったのは私ね

ごめんなさい、ひかり」


「ううん、普通の女の子にできない経験をこんなにさせてもらってすごい感謝してる

それに私ね、いろんな人から優しくされて生きてきたから川村さんが怒ったりしてくれて私嬉しかった

でもこの前は好きな人を貶されたみたいでカッとなっちゃった

ごめんなさい」


「嫌われちゃったかと思ったわ

ホッとした

実は加々美くん、共演者にすぐ手をだしてひどい振り方するから気を付けるように会社から聞いてたから

マネージャーとしてもだけど、

ひかりのお姉さんとしても止めたかったの

好きになっちゃうのは止められないけどね」


「そうだったんだ

なんか最初は優しかったんだけど

今は私といても携帯で誰かに連絡してるみたいだし、仕事のことで嫉妬されちゃって、、、」


一通り愚痴を聞いてもらった

聞いてもらうだけで楽になった気がした

こんな話を出来るのは川村さんだけだ


私がつけていた罪悪感と恋心の耳栓は知らないうちに外れて

川村さんの声が耳から入って心に染みてきた


「ひかりは私が見付けたヒロインなんだから

きっと上手く行くわよ」

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