第6話

しおりは俺以外の人とはあまり喋らなくなった

俺は気にしないから前と変わらないでいつものしおりでいてくれと言ったのだが

「別にいつも通りだよ」

といつもの笑顔で軽くあしらわれてしまった

罪悪感を感じたがそれよりもしおりが俺のために自分の行動を変えてくれたことが嬉しくて堪らなかった

しおりが自分のものになったように感じた


しおりと初めてのデートに出掛けた

付き合って半年はたっていたが初めてだった


待ち合わせの場所に行くとすでにしおりはいた

学生服ではないおしゃれをしたしおりは

どこかのアイドルなんじゃないかと思った

しおりは俺に気づいて走ってこっちまできた

「おはよ!早く来すぎちゃった」

いつもの笑顔ではしゃいでいる


今日は母さんの誕生日プレゼントを一緒に選んでもらう体でデートに誘った


「お母さんってどんなものが好きなの?」

「わからない」

「うーんどんな色が好き?」

「わからないか、な

実は母さんと一年以上口をきいてないんだ

あんまり遊びにいった記憶もほとんどないんだ、どう接したらいいかわからない、でもこのままなのも嫌なんだ」

「そっか、、、じゃあ、秀くんはどんなものあげたい?

秀くんが一生懸命考えてプレゼントしてみてお母さんどんな反応するかな

喜ぶかもしれないし、もしかしたら嫌な顔するかもしれない

でも変化は起こるはずだよ」

初めて自分の弱味を人にさらけ出した

しおりは一生懸命答えてくれて嬉しかった


「よし!とりあえず女の人は花だよ

違ったらお菓子!」

しおりは俺の手を掴んで引っ張っていく

どんよりした気持ちを振り払ってくれるようだった






「しおりもらってほしいんだ

今日はありがとう」

こっそり買った花を渡した



「ありがとう!嬉しい

秀くん好き!」


本当に嬉しそうに笑ったしおりが愛おしくて抱き寄せてキスをした

初めてのキスだった




俺は母さんの喜ぶ顔よりもしおりの喜ぶ顔の方が大切だと思った


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る