第2話
ただただ、幻の石と言われている『瑠璃黒曜』を探すだけだった自分が、何やら難しい事を考えなければいけない今の状況。
しかし可愛い『ポー』に出会ってしまったからには、石探し以外も調べる事が重要だと思い色んな事を考える時間が増えた。
小さな集落なので調べられる事も限られる。唯一、資料的な物がある歴史資料館。
しかし自分が探している物は、ハッキリと資料に残る様な物では無く、言い伝われてきた迷信の様な事。
それ故、資料館の情報だけでは中々難しかった。
唯一、資料館の情報で目に留まった事は神社についての事。古い神社で祀ってある物が他とは違うという事で、僅かだが資料的な物があった。
やはりナカさんが言っていた様に、木の様な岩の様な不思議な物が祀ってあるらしい。
神社と言えば、てっきり神様が祀ってある物だと思い込んでいたが、それ以外の物も祀ってある神社が各地にあるという事も資料館で知った。
『 いわゆる、信仰の対象がその土地によって色々あるという事だろうか…… 』
ここの神社は、木の様な岩の様な物。
おそらく森や川の様な自然の物を大事に大切にしてきた土地ならでは。
無論、自然を大切にしてきた事と信仰の対象物のおかげで自然を守ってきた事が、どちらが先か後かはわからないが。
言い伝われていた神様の使いの熊の事は一切無かった。
『やはり言い伝えの事は…… ヨシばあや地元の人に聞くしかないか 』
ヨシばあの家に戻り日差しが照りつける中、畑仕事をしているヨシばあに訊いてみた。
「 ヨシばあ…… 神様とかの言い伝えの事なんだけど。何か他に言い伝われてきた話ってある? 」
「 ん?なんだいきなり。神様の話かい?
もう忘れちゃったよ。子供の頃は、よく話を聞かされていたけど 」
「 ……。 そっか〜〜 」
「 石の事かい?兄さん(タケ爺)は、よく知っていたみたいだったけど。私は知らないよ 」
「神様の使いの熊の事は?何か知ってる? 」
「んーーそうだねーー。他の熊とは違って人間を良く見ていて、時には助けてくれるって話も聞いた事があるなぁーー。
ここの人間が、森や川を大切にしてるからその熊達も人間に良いことしてくれるのかねーー 」
「 やっぱりその熊達は、森の中が寝ぐらなのかな? 」
「 そりゃそうじゃろ、家で寝る訳ないべ。ははは 」
「 あ、そうだ!ヨシばあは、神社に祀ってある物は見た事あるの? 」
「 御神木かい?そりゃあるよ。何年かに一度、扉開けて綺麗にしてお供えしてるからね。ありゃ、今年はその年じゃないかね 」
「 えっ、じゃ今年は見る事が出来るの?俺にも見る事出来るかな? 」
「 出来るよ。みんなで集まってやるから。でも見たところでアキラには、つまらないものに見えるかもね 」
「 木の様な岩の様な物なんでしよ?いつ見れるの? 」
「 七月の終わり頃。来月だね。ナカちゃんに聞いたのかい? 御神木の事。まぁ私から見たら木に石が、くっ付いている様にしか見えんけどね 」
何やら少しラッキーの様だ。
滅多に見られない神社に祀ってある物をこの目で見る事が出来そうで。
ただ、『ポー』…… 神様の使いの熊に関する事は、あまり情報が得られなかったのは残念だった。やはりもう少しナカさんに話を訊いた方が良さそうだ。
特に自分が気になっている事は、『ポー』や『ゴー』が神様の使いの熊だとして、『瑠璃黒曜』と関係があるのかという事だった。『瑠璃黒曜』が御神木を守っているとナカさんが言っていた様に、自分も何か『瑠璃黒曜』が『ポー』達と関係している気がしていた。思い過ごしかもしれないが……
とりあえずナカさんの家へ向かった。
集落から少し離れた所にあるナカさんの家。いつもの石探しと、『ポー』に会う事が出来る川の下流側。すっかり慣れたいつもの道。
なのに……
何故か、その日は雰囲気が違っていた。
確か先程までは、日差しが照りつけていたはずなのに厚く黒い雲に覆われ始めた空。顔に当たる風も生温く何処か嫌な空気感。
「 天気が悪くなるのか? 嫌な空の色だな…… 」
ナカさんの家に着いた。
元々、静かな所だがより静まり返っていた。
「 あれ? ナカさん居ないのかな? 」
家や陶芸の窯、作業場まで見てみたが…… やはり居ない。
「 留守か〜〜 残念。出直すか…… 」
仕方なく帰ることに。
ナカさんの家を出た途端、ポツポツと降り出した。やはり思った通り天気が崩れだした。ポツポツの雨が段々と強い降りになり家に帰る頃には、土砂降りに近い降り方になっていた。
雨は、どんどん降り風も強くなりだした。
一向に収まりそうにない雨と風。
暗くなる頃には、大雨の警報代わりのサイレンが小さな集落に鳴り響いた。
「 こんなに雨が降ったら、川は増水するだろうな。ポー達は、大丈夫かな? 」
雨と風は勢いが衰える事なく一晩中降り続いた。
自然を大切するこの地が、自然の力に何も出来ぬまま…… ひっそりと静かに時が過ぎるのを待っていた。
第2話 終
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