最終話 戦いという名の遊び
今日も魔王ドラゴンと執事コウモリは、いつも通りの日常を過ごしていた。その雷鳴り響く離れ島に向かっている一行がいた。
「魔王様、この島に向かっている人間達がいるようですぞ!」
「えっそうなの!?人間って、あの人間のこと?ぼく初めて見るよ!」
「3人の人間たちが船に乗って来ております。おそらく魔王様を倒すためでしょう」
「倒す?ってことは戦いごっこをしたいってことだよね!」
「えっ…いやあの……そ…そうでございますっ…」
「この島誰も来ないから退屈してたんだよ~。やっと遊び相手が来てくれたんだね!」
「そうです、遊びに来たんですよ。(本当のことを言っても魔王様は聞いてくれそうにありませんね…はあ)」
執事コウモリは心の中でため息をついた。
「あとどのぐらいで来る?」
「そうですねぇ…あと1時間くらいですかね」
「よし、じゃあそれまで遊ぶ準備しようっと!」
「これは何が起こるか分かりませんね…」
一方そのころ、勇者たちは離れ島の入り口に着いていた。入り口と言っても門があるわけじゃなく岩場である。その岩場に木製の船をつけ、上陸しているところである。
「よぉーしオレが一番乗りだ!」
「ちょっと、子供みたいなこと言ってないの、まったく…」
「物々しいところだね」
「おっ、ビビッてるのか。大丈夫だ!オレがいるんだからな」
「何言ってるの、また調子に乗ってるわね」
「まあ少しは慎重だぜ!」
「そう、それならいいんだけど…」
女魔法使いは少し不安そうだ。
「慎重に進もう!」
「ええ、そうね」
「だなっ」
少しずつ会話しながら島の奥へと進んでいった。デコボコの道を進んでいくと少しひらけた場所に出た。奥に巨大な黒い影があった。
「あれが魔王か。ドラゴンっていうだけあってでかいな!」
「そうね。想像してたより大きいわね!」
「ボク少し緊張してきたな」
「大丈夫だ。お前は十分戦えるぜ!まあ何とかなるだろ」
勇者たちは魔王の前まで進んでいった。そして、勇者だけ一歩前に進み出て魔王に話しかけた。
「お前が魔王か。オレ達はお前を討伐するために来た。勝負しろ!」
「ふっふっふ、わ~っはっはっは~。ぼくが魔王だよ。みんな遊びに来てくれてありがとー!」
「オレ達は遊びに来たんじゃなくて、お前を倒しに来たぜ!」
「戦いごっこをするんでしょ。楽しみだな~」
「聞いてないな。ならこっちから行くぜ!」
勇者は後ろに跳び下がって剣を構えた。女魔法使いと魔法戦士もそれぞれ戦闘態勢に入った。
「わたし達を守って、アタックガード!」
女魔法使いの杖から光りが出て勇者たちを包んだ。この魔法はダメージを抑えるものである。
「オレはいきなり大技でいくぜ。ビッグスラーーッシュ!」
勇者はトゲトゲのドラゴンシェーブを振り下ろした。辺りに煙がまった。
「どうだ、決まったな!」
「全然きかないよ~、ぼく頑丈だからね~。えっへん」
「くっ、だよな…」
「ボクが新技を使うよ!はーーー、パワースライス5連撃っ!」
「うおー新技かっけぇ!」
魔法戦士の新技で爆発が起こった。
しかし、魔王に傷はつかない。
「わたしがやるっ、こおって、アイスロック!」
氷の岩が魔王の身体に突きささり、魔王は氷づけになった。
「まだよ、燃えさかれ、ファイアサラウンダー!」
氷づけの魔王のまわりを炎が包んだ。再び爆発が起こった。
「どう!今度こそ倒したんじゃないかしら」
「ふふふーすごいね。ぼくも負けないよ~まだまだ~」
女魔法使いはガッカリしてため息をついた。魔王は得意げに鼻をフンフン鳴らしている。その鼻がぴくぴくし始めた。
魔王はくしゃみが出そうになっていた。
「はっ、はっ、はっ、ハックショ~~~ン」
魔王がくしゃみをした途端、口から炎が噴き出した。ごおーーという音を立てながら、すさまじい炎が勇者たちを包んだ。勇者たちはうわーーと叫びながら逃げていった。
「やりましたね魔王様!(勇者たちが逃げてくれてよかったです…ほっ)」
「楽しかった~、バイバイまた遊びに来てね~!」
魔王は勇者たちが逃げていった方に手を振った。
こうして、魔王ドラゴンと執事コウモリは、またいつもの生活に戻るのだった。
魔王ドラゴンは子供だった ざわふみ @ozahumi
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