第7話 限界突破!最後の言葉は「おでんが食べたい」

「それでは作戦を発表する。今回の作戦は大戦闘空母”ぶらっく・なぽれおーん”の行動停止、そして船内への侵入を目的とする!その作戦の要としてヰヴ・ゲリオンヌを3機を主軸とした戦闘展開で一気に攻める!まず黒船の上空の索敵範囲外からヰヴ二2機が降下黒船に侵入、ぺりゐの討伐を目標に行動してくれ。そしてその陽動として黒船の正面をヰヴ単機で行う。これは最もリスクが高いがいかに注意を向けさせるかがこの作戦の要である!どんな状況でも目的が達成されるまで退くな!」


 雄弁に作戦を語る深紅のスーツを着た男の名前はナナシ。この欧米文化対策本部の指揮官の一人であり、和神兵器ヰヴ・ゲリオンヌにおける戦闘の総括を担っている。今回の作戦は最終決戦だという事であり、過去最大規模の全勢力を結集させているという。


「この作戦だが正面の陽動にヰヴ壱号機ミコッツが担当。襲撃の二機は弐号機と壱〇型番機、ミクモと武蔵が担当する。各ヰヴの支援は後程詳しく通達する。作戦は空中の戦闘配置ができてからだ。この戦に私たちの命運がかかっているんだ!全力で行くぞ」

 ナナシの作戦と意気込みが響き渡ると緊迫している空気はさらに張り詰めたものになった。この戦いに日本の運命がかかっているのだ絶対に失敗は許されない。


 

「それではみんな配置には着いたか?では作戦実行!コードネーム”黒船危機一髪”」

 ついにナナシ指令のコードネームとともに作戦が実行された。

 この作戦はいかにして正面での囮が意味を成すかがカギだ、ミコッツが最大限に引きつけ敵の戦力を向けさせることが最大の要だ。

 この無茶な言ってしまえば作戦はヰヴ1機による捨て駒で可能となる。それ故にミコッツは死を確実に意識せざるを得ない。だからと言って逃げるわけにもいかないのであった。


『ヰヴ空域隊、所定通り黒船上空に配置完了』

 武蔵とミクモが位置につき、作戦の開始が目前までに迫ってきていた。

『地上、突撃準備は完了しています空域隊が降下したのち突撃します』

 空母はもう捉えているため作戦は実行できる。あとは作戦の実行合図を待つだけだ。


「おいミコッツ」

「なんですか武蔵さん?この捨て駒にお慈悲の言葉ですか?」

 作戦の合図を待っていると武蔵が個人通信で話しかけてきた。

「いいか、お前は絶対に生き残れ、何があっても作戦を成功させるんだ!これで成功したらみんなでまた会うんだからな」

「武蔵さん、俺絶対生き残りますから!一緒にやりましょう!」

 突然の通信んで驚きはしたもののそんな言葉を掛けられてしまってはなお生き残らねばと思う。


「今回は主役をお前に預けたんだからな、こころしてかっこいいところ見せろよ」

「ミクモ、おまえそんなこと言えたんだな」

 ミクモからも言葉を貰った普段は自己中心的な性格のくせにこういう時は素直だ。


『それでは作戦開始!弐、壱〇番型機降下開始!』

『了解』

 ナナシの合図とともに空域隊が落下を開始した。高度はどのらいなのだろう、落ちるときは敵のレーダーに感知されないようすべての通信は切られヰヴもギリギリまで稼働しないそうだ。まさに落ちる鉄の塊だ。


『空母到達まであと10分だ、それまで陽動は任せた。壱号機、作戦開始!!』

 間髪入れずにナナシの出撃指示が下された。これでミコッツも仲間を生かすために戦うのであった。必要犠牲というやつだ。


「これはデカすぎるわ、これは死ぬよね?でも死んでも時間稼ぎはしないと、武蔵さんたちに申し訳ない」

 ミコッツは大きく深呼吸をした。改めて間近で見るとその大きさと異様さがはっきり分かった。

 大きさはヰヴの何百倍もある大きさだ、巨大な空に浮かぶ船とった表現が正しく、8階建ての高層マンションが10個位余裕で入ってしまうくらい大きい。これに単機で挑むなど愚の骨頂だ、ましてや空域隊の侵入さえも危ういのではないか。


「おらああぁ!このデカブツがああ!俺が全部相手にしてやんよ!」

 敵の前に出たミコッツは覇気のこもった叫び声をあげ支給されているマシンガンで空母の装甲へ弾を打ち込んでゆく。だか効くはずもなくただ無駄に弾丸が消費されていく。

「やっぱり無理だろこれ規模がでかすぎるよ!」

 ひたすらに打ち込むものの何も変化はない。こんなとるにも足らないアリの攻撃は無視なのだろう、虫だけに。時間はまだ30秒も経っておらずジリ貧なのは目に見えていた。


『ナナシ指令、全部の武器使わないとダメですこれ。フル装備で支援機回してください』

『わかった。こちらもできるだけ戦力を補給する』

 攻撃開始から1分あたりでミコッツは全戦力でこの空母を攻撃することに変更した。温存しておく兵器をここで全部使い果たす集中砲火だ。これは作戦実行中に2時間を耐えるために用意されたものだが、すでに既存の武器では通用しないため迅速にケリをつけるため使うことにしたのだ。


『ありがとうございます、それと魔砲の準備もお願いします』

 壱号機に支援機が次々と着けられ全身弾薬庫のような重装備になった。

「さーて、こっからはバ火力で突破しますよ。武装展開!全砲門一斉射撃!」

 ミコッツが全火力を空母に注いだ。光学兵器、銃系統の武器その他諸々あの北のキムさん顔負けの某ミサイルまでも打ち込み続けた。そして爆炎と粉塵であたりが見えなくなるまで攻撃は続いた。


「どうだ?さすがにやっただろ、こんだけ撃ち込んだんだから」

 壱号機はありったけの攻撃を食らわせた。辺りにはとんでもない量の薬莢やっきょうと、光学兵器の打ち過ぎによる発熱で機体は溶けそうなくらい熱く攻撃の凄まじさがうかがえる。

 目的の空母は軋むような音を響かせ煙を立たせていた。しかし攻撃をしたのはほんの一部、先頭をつぶしたからと言って落とせるわけではないが手ごたえはあった。

 煙がはれ攻撃後の空母の全容が見えようとしたその時だった。空を切るような音がし,瞬間後方の大地が爆ぜた。


「嘘でしょ?何あれ、こんなの勝てるわけないじゃん」

 その全貌にミコッツは絶望した。半壊していた装甲の中には形容しがたいナニカが顔を覗かせていたからだ。人の脳のような表皮に真っ赤な一つ目にすべてを喰らい尽すような人間染みた口、表皮からは無数に生えた触手のような黒い手が幾重にもわたって動き続けていた。体現するならば絶望の化け物そういうしかない。

 船の内部にいた化け物は壱号機を見るや否やその触手を伸ばし攻撃してきた。先ほどのもその触手なのだろう。


「やばっ、これ逃げないと死ぬ」

 隙間のない触手の攻撃にミコッツは避けることさえままならなった。間隙を縫って逃げるが変則的な触手の動きはすぐに壱号機を追い詰め一瞬にして決着をつけた。

 触手の攻撃は壱号機を滅多打ちにした。


『状況……報告、支援機全損、機体損傷40%……まだ行けなくもないっすけど、かなりやばいです』

 触手の猛攻を何とか受けきったがその消耗は激しかった。何とか原形は留めているが装甲はほぼ砕かれ所々回路がむき出しになっている。


『そうか、損傷率が80%を超えるまでは撤退するな、もう少しで空域隊も着く。この状況を維持しろ』

 ナナシは冷たくそういった。結局捨て駒なのだ、損傷80%はもう機能してないのと一緒だ。命尽きるまでここで囮していろと言う事だろう。


「まじすか、これはあれ使うしか」

 驚愕の対応にあきれたがミコッツも覚悟はできている。だから撤退などすることは考えていなかった。だからこそこの一手に賭けるしかなかった。


「グオオオオォォォォ!!!」

 化け物が咆哮を上げる。そしてまた触手による攻撃が始まり、合わせて空母から何か降りてきた。

 それはこちらと同じ人型のロボットだった。その数は数百にものばり、完全にこちらを潰しにかかってきている。


「くそっ、これは完全に詰んだ!こうなったら意地でも撃ってやる」

 ロボットは地上につくと壱号機目がけて射撃を始めた。それに合わせて化け物も触手による攻撃で追い詰める。だが触手はロボットも攻撃していたので化け物に仲間意識はないと思われる。

 ミコッツは重い機体を動かし必死で攻撃を避け目的の場所まで移動する。それまでに機体の損傷は60%を超え動いているのがやっとの状況でった。

 手にした狙撃銃を構え迫りくる敵に向け焦点を当てる。


「刺し違えてもお前たちは倒す!魔砲:クレイジー・スパーク!」

 ミコッツは最初に準備し、いざという時まで残した魔砲を撃った。その威力は凄まじく、一撃でだいたいのものは粉砕☆できるという。ただし一回打つのにかなりの時間を要することから最後の手として使われ、撃てば反動は大きく撃った方もただでは済まない。まさに諸刃の剣である。

 魔砲によってその直線上にいたものは壊滅し、そして魔砲はその先空母の化け物に直撃した。その威力で化け物の上顔は跡形もなく消し飛んでいた。


 それと同時に損壊が激しい状態で撃てばどうなるか言わずと分かっているだろう。壱号機はそのまま信号が途絶えた。


『なんて数だ!これじゃあいつまでたってもぺりゐまでたどり着けない』

『くっそ、どうしたらいいんだ!』

 ヰヴ弐、壱〇型機たちは空母へ侵入したがその状況はあまりいいとは言えなかった。空母の中でロボットの軍勢と対峙していたのだ。数は圧倒的に多く、こちらが不利な状況だ。


『ミクモ!ここは俺が食い止める!お前は早くぺりゐのところへ!』

『でもそれじゃあお前が!』

『これは友情ごっこじゃねぇんだよ!さっさと行け!』

『ならせめてもう少し戦ってからだ!』

 武蔵の提案をミクモは飲まなかった。そうだ仲間を見捨てろなんて言われても認めるはずがない。


『いいから黙って行け!ミコッツだって信号が途絶えてんだ!お前もそれくらいわかってんだろ!?』

 武蔵は激高して言い散らす。ミコッツは侵入の際、魔砲の発動から機体信号が途絶えている。つまりはそういう事だろう。

『この作戦には日本の命運がかかってんだ!そんなお前の我儘でみんなの希望を砕くんじゃねぇ!死んでも任務を遂行しろ!』

 武蔵は怒鳴りつけた。ここで共倒れになるより少しでも勝つ確率を上げた方が賢いのだ、そして武蔵はその為の時間稼ぎとしてミクモに道を譲ったのだ。


『すまない!必ず戻るからな!それまで頑張ってくれ!』

 ミクモは振り返ることはせずそのまま走り去った。その背中はどこか申し訳ない悲しみが表れている。

「それでいい……」 

 武蔵は手にした刀でロボットを切り伏せていく。やはり数の暴力には勝てず少しずつ押されてゆき、機体にガタが生じ始める。


「何でもかんでも数で攻めるのはぴ〇みんの発想だぞ!」

 そんな軽口をたたいていたが、次第に敵の動きにもついてゆけなくなり機体も動かなくなる。

「もうだめか、これで終わりか」

 そんなことを言っても運命は変えられない。わかっている事だ、この状況はもうすでに詰みなのだ。

「あー、もっとやりたいことあったんだけどな……、ミクモあとはお前に任せたぞ」

 ロボットの一機がとどめを刺そうと銃を向け、ゆっくりと動かない目標に照準をあて引き金を引く。



目標視認タリホー!!』


 突然の銃音と共にとどめを刺そうとした機体が爆散した。


『なっ、お前ミコッツ!生きてたのか!?』

 それは信号が途絶えたはずの壱号機だった。なぜいるのかわからない、だが確かなことは生きてここまで援軍に来てくれたのだ。

『勝手に殺さないでくださいよ武蔵さん。確かに死にそうなんですけどね。武蔵さん、まだその機体は動きます!だから、行ってくださいミクモのところへ』

 壱号機は左半身が存在していおらず、機体もかろうじて残っている状態だ。コクピットまでむき出しになっているのになぜ動けているのかが不思議な状況であった。


『お前こそなんで動けてるんだよ、俺の機体はもう動かないんだ、お前が行くべきだ』

『……ごちゃごちゃ言ってないで動かせ!まだ、その機体は死んでない!感覚を研ぎ澄ませ!そしてヰヴと一体になれ!自分の中にある大和魂と会話しろ!』

 ミコッツは人が変わったかのように熱弁した。その間も襲い掛かるロボットたちを半身で倒してゆく。半身しかないのにもかかわらずこの状況でも戦ってられるのはヰヴと一体になることなのだろうか。


『感覚を研ぎ澄ます、カレーパンと……』

 武蔵は心の中でヰヴと一体になる感覚を強めた、そして自身の大和魂と対話した。

(これが宇宙、これがヰヴの本当の姿、これじゃあ足りない、もっと意識しろ!自分の大和魂とそして己の感覚と……、そして一体になるんだヰヴと!)

『うおぉぉぉぉぉぉ!燃えろ俺の感覚!俺の中にある大和魂!そしてもう一度ヰヴに力を!』

 その叫び声と共に機体に光が宿り、再び動き出した。壱〇号機はゆっくりと立ち上がり前を見据えるその機体には魂が宿ったかのように人間的な動きをした。


『ミコッツ!動いた!お前の言った通りヰヴと一体になった!ミコッツ?』

 武蔵は嬉しさでミコッツへ報告するがすでにミコッツの姿はなかった。

『よかったです、これで戦えますね、行ってください……』

 ノイズまみれの声に武蔵はその姿を探すが、ミコッツは敵に囲まれほぼ瀕死の状態だった。もう限界の状態だったのだ、ぐったりとうなだれヰヴも稼働していない。


『ミコッツ!死ぬな!ミコッツ!ミコッツ!みこっつ?みこーっつ!』

『……おでん食いたい』

 その言葉を最後にヰヴ壱号機は大爆発、あたり一帯を巻き込んで消失した。


「ミコッツすまない、俺が不甲斐ないせいで、お前の意思は継ぐ、必ず!ぺりゐ待っていろ!」

 武蔵は再び前を向きこの戦いの終点ぺりゐの元へ向かった。


次回予告

 ついに対峙する武蔵とぺりゐ、しかしその圧倒的な力に武蔵は倒れてしまう。その時武蔵は己の力の神域に達した時いったい何を見る?剣と魔法と和の心を持ったその男の戦いが今ここで終わる!

 次回 だから魔法は便利なの お楽しみに!

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