天使との再会
勝利だギューちゃん
第1話
高校時代、好きな女の子がいた。
天真爛漫で、容姿端麗で、誰からも好かれていた。
まさしく、クラスのアイドル的存在の女の子「だった」
そう、「だった」
僕とは真逆だった。
僕の周りに、人はいない。
僕が話すことは、殆どなかった。
身の程はわきまえていた。
彼女はまさしく、天使だった。
そして、高校卒業後、彼女とは会わなくなった。
まさしく、天使が飛び立つように・・・
彼女の名前は、「難波真理」
同窓会の通知も来たが、全て欠席した。
協調性のない暗いだけの僕がいても、うっとうしいと思われ、
場を暗くさせる・・・
通知のよこしてきたのは、もう社交辞令だろう。
向こうも僕が欠席するのは、想定内。
自己責任とはいえ、いい思い出がない。
わざわざ、傷口に塩を塗られに行くこともあるまい。
それからさらに、数年が経った。
僕は、相変わらずもやもめ暮らしをしている。
実家暮らしだが、両親は他界。
兄弟もいない。
まあ、食うにこまらないから、構わないが・・・
そして、いつしか天使の事は、さすがに色褪せていた。
そんなある日、玄関のベルがなった。
ドアを開けると、知らない女性が経っていた。
もう、還暦近いだろうか・・・
初めて見る人だ・・・
和服で正装をしている。
「こちらは、柳本隆雄様のご自宅でしょうか?」
「はい、私ですが?」
「初めまして。私は難波真理の母でございます。」
難波真理、高校時代天使だった女の子。
その母親が今更なざ?
「失礼ですが、どんなご用件で?」
「実は、真理・・・娘があなたに会いたがっています」
「えっ」
「御同行願いますでしょうか?」
心中穏やかでなかった。
どうせ、嫌がらせだろう。
でも、暇なので乗ってやることにした。
文句も言いたいしな・・・
「わかりました。準備しますんで・・・」
「いえ、そのままでお願いします」
ご婦人と言った方がいいだろう・・・
その言葉にしたが、そのままの格好で同行した。
タクシーが待機していた。
(ああ、待たせたら悪いからか)
そして、無言でタクシーに乗った。
ご婦人とは、車中会話がなかった。
だんだんと、後悔し始めた。
そして、ついた場所は、天使の自宅ではなく、
墓地だった。
「こちらです」
ご婦人に誘導されて、ひとつの墓の前に来た。
「娘の、真理のお墓です。真理はこの下で眠っています」
「ドッキリですか?」
「いいえ、真剣です。本当に、真理は死にました」
「いつですか?」
僕は驚いた。
「先週です。交通事故で即死しました」
「でも、どうして私に知らせたんですか?
私は、真理さんとは仲が良くなかったですが・・・」
ご婦人は落胆のため息をした。
「やはり、気付いていらっしゃいませんでしたね」
「えっ」
「娘は、あなたの事が好きでした」
嘘だ。そんなはずはない。
立ちの悪い冗談もいいかげんにしてほしい。
心中はそう叫んでいたが、もう大人なので口には出さないでした。
「どうして、そんなことが?」
「これは、真理の日記です。娘はあなたの事ばかり書いていました」
そして、日記を受け取った。
それは、高校時代からのもので、確かに僕の事が中心に書かれていた。
「6月12日
今日、難波くんと初めて言葉を交わした。
とても、嬉しかった。
でも、彼は私の気持ちには、気付いていないみたい。
鈍感だな。
9月9日
私は難波くんから、声をかけてくれるのを待っているのに、
全くかけてくれない。
仕方ないので、私から声をかけてみた。
言葉を返してくれるのは、嬉しかった。
3月10日
もうじき、卒業だ。
そうすると、難波くんとも、会えなくなる。
さみしいな。」
高校の事の日記は、ここまでだ。
高校卒業後も日記はつけていたようだ。
「5月24日
難波くんは、元気かな。
今日は、彼の誕生日、おめでとう。
ここで、お祝いしておこう。
10月14日
今日は、鉄道の日。
難波くんは、鉄道が好きだった。
今も、好きなのかな。
2月9日
難波くんの最近の活躍は、素晴らしい。
私も見習いたい。
そうだ、会いに行こう。
思い切って。
びっくりするかな」
ここで終わっていた。
「ありがとうございました」
そういって、ご婦人に日記を返そうとした。
「いえ、これはあなたが持っていてください。
娘も喜びます」
「真理、難波さんが来てくれたわよ」
そういって手を合わせた。
しばらくは、静寂の時が流れた。
「娘は、真理は最後の日記を書いた翌日に、事故に会いました。
そして・・・」
「えっ?」
「勘違いしないでください。あなたを責めてはいません。
ただ、娘のあなたへの想いが本物だということは、信じてほしいのです」
でも、なぜですか?僕のどこに、好きになる要素があるんですか?
わからなかった・・・
「わかりませんか?」
「ええ」
「これでわかりますか?」
ご婦人は、本を出した。
この本は、僕が書いた本だ。
「真理は、夢に向かってがんばっている、あなたが好きでした」
「夢にですか?」
「他の人は、毎日をただ生きているのに、あなたは自分の夢に向かって、
毎日を生きていました。『自分には無い』そこが好きだったみたいです」
あの頃は、ただ好きで描いていた。
それで、生活できるなんて、思っていなかった。
でも、真理さんにはそう見えていたのか?
さしずめ、デビューは早かったと思う。
それなりに苦労はしたが、どうにかそこそこ名声を得た。
彼女は、見ていてくれたのか?
そう、作家としての僕を・・・
「難波さん」
「何でしょうか?」
「今からうちに来ていただけませんか?
真理が待っています」
一頭の蝶が、ひらひら飛んできた・・・
天使との再会 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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