第14章 瘴気渦巻く屋敷跡 ①


瘴気しょうき渦巻く屋敷跡』C級ダンジョン

俺たちいつもの5人は、上級職転職後の馴らし運転がてらにクラス同等Lvの依頼を請けることにした。

出向いた先は・・・バサラッド北方にある『瘴気渦巻く屋敷跡』へと3泊4日の小遠征を敢行した。

対象魔物:ゾンビ、吸血鬼、デーモン、食屍鬼グール アンデッド系・悪魔系

ボス:『ロードオブデーモン』Lv40クラス相当



ローク・カートライト 21歳♂ (ヒューマン)

騎士⇒『ドラゴンナイト』   


フローラ・バシュラール 18歳♀ (ダークエルフ)

ウィザード⇒『アークメイジ』


クロエ・ラウティオラ 18歳♀ (ヒューマン)

神官⇒『高位神官』


アニー・ベルハート 17歳♀ (エルフ)

狩人⇒『マジックアーチャー』


ショーヘイ・クガ 20歳♂ (ヒューマン)

魔法剣士⇒『ルーンナイト』


クラス相当のC級ダンジョンなら、上級職ばかりのこのパーティーであれば無難に突破できると思われるが・・・それぞれに転職後の新しい職業、習得した新スキルが、まだ自分に馴染んでいないという不安は否めなかった。

そんな中、前回毛嫌いされたアンデッド系ではあったが、今回は容赦なくロークに却下され、女性陣も渋々小遠征に参加することに同意したようだ。


実質「ハイヒューマン」の俺は、上級職どころか英雄職、伝説職でさえ就けるのだが・・・オールスキルMAXにしてもいまだ『宝の持ち腐れ』状態である為、みんなの成長と共に検証しているというのが正直なところだった。



「押さないでよぉ~」


「クロエ、お前神官なんだし、十字架クロスでもかざしながら前を行けよぉ~」


何か元の世界と同じようなアイテムが存在することが可笑しかった。

時代背景などは全く違うが、文化的には平行世界的な面も見受けられるし・・・まぁ、俺の既成概念や固定観念は全く以って通用しないわけだし、これがこの世界の常識なんだと受け入れれば良いだけの事だと考えるようにした。


「そんなに押さないなり~~もう!」


「悪霊退散とか平行詠唱して歩けばいいじゃんかぁ~~」


「うら若き乙女を生贄にするわけ?」


クロエは振り返り、ロークに怒ったような顔つきでほっぺを膨らます。


不味マズそうかなぁ~?」


「失敬なっ!!」


「ロークさん、それクロエさんに失礼ですよ~あはっ」


アニーが苦笑いしながらロークをいさめる。




「天にまします我らが主よ~願わくば、このバカに天罰をお与え下さいませ~」


クロエは手を胸の前に組み、通路天井を仰ぐように祈りを捧げた。

それを見ながらフローラが強烈なツッコミを放った。


「クロエ、この馬鹿に聖水掛けとけば?もだえ死にするかもよ~きゃははっ」


「あっ!それイイ考えなり~イシシッ」


「あははっ・・・ナイスかも~」


「てめぇ~~ら、俺はゴキブリじゃねぇ~~わ!」


「ククッ、もうその辺りにしとこう・・・もうすぐ地下通路入り口だ!」


ロークとクロエの掛け合いにフローラのツッコミ、本当に俺を楽しい気分にさせてくれる。

アニーも嬉しそうに笑っている。

この仲間と出会えて心から良かったと思う。


こういう冗談が飛び交うのも、幾度となく戦闘を重ねてきたことによる場慣れに、気持ちの余裕が持てるようになったんだと思えた。



・・・・・・・・



通路内は所々にしか松明たいまつがなく、想像していた以上に薄暗く深かった。

その上、あちらこちらに罠も仕掛けてあり、横壁にも足元にも、そして天井にまでも注意が必要とされた。

そんな中、ようやく通路出口が見えてきた。

幸いにもゾンビが数回群がってきた程度で、吸血鬼やデーモンとは遭遇しなかった。

ここは、どちらかと言えば、魔物退治が主というより罠対策が必要な『ギミック系』ダンジョンなんだろう。



「前方10M《メルカ》先に罠あり、その向こうから食屍鬼グール5体接近中!」


俺は索敵スキルMAXを駆使しながら、みんなへ確認できた状況を即座に報告した。


「了解!!フローラ嬢とアニーちゃんで罠手前から撃ってくれぇ~!クロエ、洩れた敵を俺が止めるからフォロー頼む!ショーヘイは後方からの襲撃に備えてくれ~!」


「アニー了解です!」


「フローラ了解!」


「クロエ了解なりー!」


「後ろからの襲撃は索敵にヒット無し。後方警戒しながら前方をフォローする。全員罠にも注意を!」


「了解!!」


食屍鬼グールの吐き出す硫化体液に注意しろよぉ~~迂闊に近づくとモロ溶かされるからなぁ~!」


「了解した!もう少し引き付けようか・・・できれば食屍鬼に罠を発動させてもらおう~2人はいつでも撃てる体勢を!!」


「は~~い!」



ドス、ズタズタッ・・・・ガシッ、ガシャ~~ン!



俺の放つ火球に誘導されるよう進んできた食屍鬼がエリアを踏んだ。

罠が発動した。

両サイドの壁から突き出てきた無数の針に2体の食屍鬼が串刺しにされ餌食となった。



「アニーちゃん、フローラ嬢、撃てぇ~~!」


フローラは前方範囲魔法フォースパレスを、アニーはエリア範囲の斉射をロークの声に反応するかのようにすかさず発射した。

残った3体の食屍鬼は攻撃をまともに受けながらも足を止めない。


「フローラ、アニー下がって!クロエ~~支援頼む!!」


俺とロークは、突撃してくる前面の敵へ飛び込んでいった。


「うりゃぁ~~~!」


俺は雄叫びとともに走りながら真ん中の食屍鬼をまず炎弾で撃ちぬいた。

ロークは右側へ、俺は左側へと飛びかかった瞬間、残った2体の食屍鬼は口から硫化体液を吹きだすように吐き出した。

まともに貰うと服は溶け、皮膚はヤケドしたようにただれていく。


「ヤバイ!ローク、斬ったら前方へ駆け抜けよう!!」


「おっしゃー!アッチッチ・・・痛てぇ~~」


俺もロークも接近戦を仕掛けた為、硫化体液を避け切れなかった分被ってしまった。


「アニー、フローラ・・・トドメ頼む!!」


「了解です!」


「了解!!」


2人の女性は即座に照準を定め、左右の食屍鬼をアローショットとバレットで的確に撃ちぬいた。



・・・・・・・・



俺たちは迷路のような深く長い通路を抜け、ボス部屋前の安全地帯へとようやくたどり着くことが出来た。残すは眼前にあるボス部屋だけとなった。


「罠回避がけっこうキツかったなぁ~疲れたわぁ~」


「ゾンビ退治、MP消費が半端ないよねぇ~わたしもホント疲れた・・・」


ロークとフローラはへたり込むように床に体を投げ出した。


「ご主人さま大丈夫ですか?腕がかなりただれていますけど・・・」


アニーはそんな2人の横に座り込む俺へと駆け寄り、ただれた左腕を心配そうに両手に抱えた。


「大丈夫だよ~これぐらい。クロエ、ヒールお願いできるか!」


「お易い御用なり~」


クロエは心配するアニーに『任させなさい』という笑顔を向けウィンクした。


「お~~いクロエ、俺にも頼むわぁ~」


「へ?ロークのは天罰なり~イヒヒッ」


「なぬ?・・・お前は鬼か悪魔かぁ~」


「あんたの傷なんてツバ吐けとけきゃ治るわよぉ~!きゃははっ」


「何でだよぉ~~そんなもん治るかぁーー!」


さすがにそれは無理がある~・・・でもフローラらしい言い方にみんな笑った。




瘴気しょうき渦巻く屋敷跡』

残すは『ロードオブデーモン』だけとなった!

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