第4章 異次元空間バッグ
ユニークスキル:『創造変換』・・・万物を脳内変換により実体化させる能力
ユニークスキルと表示されている以上、万人に付与される通常スキルでないのは理解できる。
今、この世界で習得済みなのは、もしかして俺一人だけなのかも知れない。
バサラッドとMAP表示されている町に向かう途上
『万物』という説明がやけに気になり、歩くのに疲れを覚え始めた俺は道端に転がってる「石」に「自転車」のイメージを浮かべながら変換とつぶやいてみた。
・・・・・
変換しなかった。
当然と言えば当然なのかも知れない。
「石」は石という物質を構成するための粒子の集まりだ。
「自転車」は、自転車を構成するための部品が存在しないと完成しない。
構成する粒子が全く異なるものや因果関係のないものは創造しても変換されない。
ところが、同じように足元に転がっている「木の枝」に「木刀」と創造すれば、立派な「木刀」が目の前に出現した。
『創造変換』とは、物質そのものを構成する粒子が進化できるものに限られていることが、
よって、この場合の万物は・・・
石が何でもかんでも望む物に変換できるという意味ではなく、多種多様な物、ここでは石とか木とか・・・空気や水とか、この世界を構成している物質の種類を指しているんだと認識できた。
『万物』の意味を完全に履き違えていたようだ。
無から有は生まれないという
魔法使いが「エイッ!」と杖を振れば自転車が出現する、そんな感覚でいたことが少し恥ずかしくなった。
これは奥が深いなぁ~・・・
俺はそんなことを思いながら頭をポリポリと掻いた。
遠景に城壁が見えたことを考えれば、この周辺には昼間でも夜のように暗くじめっとした深い森は無いんだろう。
周りをキョロキョロ見回しながら歩を進める。
「小川があるのか?」
水の音に誘われ、少し脇へと逸れてみる。
きれいな清流を見つけた。
俺は喉の渇きを潤す為にそっと水をすくい飲み干した。
総てが異常な出来事の中で、今更驚くなんてことはもう何も無いが、確かに澄んだ水面に映る俺の顔は・・・疲れなど知らない学生時代の頃へと戻っていた。
数時間前のことなのに・・・元の世界の日常が、何か遠い昔の記憶のように思えてくる。
さらさらそよそよと清流を渡る風に、少しセンチメンタルな気分へと誘われてしまったようだ。
「よし、まずは日が暮れるまでに町を目指そう」
しゃがんだ水辺から、気を取り直すように立ち上がった時・・・
ステータスばかりが気になって、自分の所持物を失念していたことに気づいた。
まず服装を見回してみると・・・
すでにサラリーマン風の背広にネクタイ姿ではなかった。
簡易的な革製ベストにシャツ、ズボンはこげ茶色の作業着風、靴は
これも『転移パック』なのか?・・・何かそんな風に考えると笑えてしまった。
元の世界と比較すればかなり質素な部類に属する身なりだが、動くには身軽なこの程度の装備が機能的に思われた。
きっと、これがこの世界の日常的な服装なんだろう。
小物袋に触れてみるとボードが開いた。
「アイテムBOX一覧」
・無限バッグ・・・数量・物体の大小に関係なく無制限に収納できる異次元空間バッグ
『無限バッグ?』
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
「ご主人さま~これを収納してもらえますか?」
目の前に積まれたけっこうな量の遠征必須アイテム。
3日分の食料やテントなど身の回りの雑貨ものが主ではあったが、背負って行くには負担が大きすぎる。
「わかった。みんなの分も収納するよ!」
俺はボードを開き、アイテムBOXから無限バッグを呼び出し、パーティー分の遠征アイテムを収納した。
他人の目から見れば、何も無い空間へと収納されていくその様が驚きだったのだろうと思う。
「おっ?!それって、レアなマジックアイテムだよな?そんなのどこで手に入れたんだよ~どこだよぉ~~!」
ロークは、いつものように俺の肩を引き寄せ、首へグッと手を回しながら入手経路を吐けとばかりに問い詰めてくる。
アニーはその言動に少しお
「それ、B級冒険者の人が持ってるの見たことある~確か『無限バッグ』だよね?」
「いいな、いいな~それ!私も絶対ドロップさせてやりたい~!!」
フローラもクロエも興味津々の顔つきで収納作業を見ていた。
「これ?・・・これは、両親の形見なんだ」
俺は苦笑いを浮かべながら、適当な作り話でその場を誤魔化そうとした。
「へぇ~~~お前の親って、凄腕の冒険者だったんだぁ~!」
「どうかな~両親も、またその両親から貰ったんじゃないのかな?俺もよくは知らないけど・・・」
ローク・・・変なツッコミはやめてくれ!
話を繕うとどこかに綻びが出るじゃないかぁ~~俺は彼の何気ない言葉に少し焦りを覚えた。
深く追及されても困る。説明なんてできるわけ無いんだから。
ただ、俺がみんなの目の前にバッグの存在を晒したのは、上級クエストでドロップするアイテムらしく、ギルドや商館で取り扱っているのを見かけたからだ。
金額はとてもじゃないが、並みの冒険者じゃ手にできる代物ではなかったが、唯一無二のアイテムでないと判明していたからだった。
「よぉ~~し!みんな準備はいいか?忘れ物はないかぁ~?トイレも済ませたかぁ~?」
仕切り屋らしく張り切ってるロークは、メンバーに向かって冗談交じりに確認を促した。
呆れ顔の女性陣は『遠足気分』で1人浮かれている彼に、冷ややかな視線を送っていた。
「では、出発進行!!」
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