第18話 初戦闘授業


 授業の間、図書館で本を読んですごし、お昼ご飯をシオンとカナリーと一緒に食べて午後の授業になった。男子は教室で、女子は更衣室で体操服に着替えてグラウンドに集まっていた。


 「戦闘授業か~、なにするんだろう?」


 「普通に戦闘の訓練じゃねぇのかい?」


 そう答えたのは体操服を身にまとったカナリーだった。


 「そういや、カナリーとは戦ったこと無かったな。今日戦えたら戦ってみようぜ」


 「いいねェ。俺も戦いたいと思ってたんだ。一戦やろうじゃないか」


 などと言っていたら


 「よーし、お前ら集まってるな」


 「先生来たな。向こう行くか」


 「そうしようかナ、楽しみにしてるゼ?」


------------------------------------------------------------------------------------------------------------------


 「ちゃんと全員集まってるな。今日が初めてだからお前たちの順位しか把握して無くてな。とりあえず今日は戦ってみてくれ」


 「よし、じゃあカナリーやるか。シオン審判よろしく」


 「ええ、わかったわ。しっかり戦いなさい」


 「わかってるよ」 「応」



 俺たち2人はグラウンドに間を空けて立っていた。すでに戦闘の準備は完了し、あとは開始の合図を待つだけだ。


 「では、開始!」


 戦いの火蓋は切って落とされた。




 「俺から行かせてもらうぜ!『水獣戯画・ウルフ』!」


 カナリーが魔法を唱えると、水の狼が出てきて俺に向かって襲い掛かってきた。だが、それを認識した瞬間に俺は魔法を唱えていた。


 「『瞬磁動歩モーメントステップ』」


 一瞬で水で出来た狼の後ろに回りこみ、パンチを放つ。


 「水で出来てるから効かないね!もういっちょ!『水獣戯画・イーグル』!」


 後ろから新たに出てきた水の鷹が襲い掛かってくる。目の前には狼。


 さすがにまずいなと思った俺は、地面を殴りつけた。その際、砂鉄を操作して地面から厚みのある土の板を削りだしておく。鷹と狼がちょうど飛んできたところで、板に極を付与する。


 真ん中には俺がいて、地面から板を固定しており、板の上側だけが互いに引かれ合う。いい感じに引かれたところで俺は緊急離脱。板によって狼と鷹が潰される。これぞ、俺の新技…


 「『虎鋏とらばさミ』」


 『虎鋏ミ』がうまく決まったのを確認した俺は、瞬時にカナリーのところへ行って攻撃を仕掛ける。もちろん、武器は持っていないので素手だ。


 「『極拳きょくけん』」


 素手での戦闘は極拳がよく光る。狙ったところにしっかり当たるからだ。だが、


 「『水獣戯画・護手ガントレット』」


 カナリーもしっかり対応してくる。水で作った護手で俺の拳にしっかり当ててくる。


 「どこから殴られても狙いどころは変わらないから対応するのは簡単なのサ」


 「じゃあ、狙いどころを変えてみようか!『乱極拳らんきょくけん』!」


 『乱極拳』は相手の身体に複数の極を付与して、拳がどこへ引かれるかわからなくする技だ。そのときに拳が戻ってきやすいように自分の後ろに拳に付与した極とは逆の極を空間に付与する。


 「オラララララ!どうだ、カナリー。すこしは対応しづらくなっただろ?」


 「ハハ!楽しいナ!もっと遊ぼうぜ!」


 そんな風にテンションが上がって、俺もカナリーもお互いをボコボコにしようとしていると、急に氷が飛んできた。


 「フッ、危ないなシオン!」


 「俺たちの邪魔をすんナ!シオン!」


 「あなたたち、周りを見て御覧なさい」


 周りを見てみると、ボコボコになったグラウンドがあった。


 「お、おう。ちょっとやりすぎたかな。なあ、カナリー」


 「お、おう。そうだなクラウン」


 「「ははは…」」


 「はあ、あなたたちのストッパー役をやるのは辛そうだわ…」


 こうして俺とカナリーの初戦闘は中途半端なところで終わった…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る