第11話 いざ、学園!


 なんやかんやあって、俺たちが12歳になる年になった。12歳になる年にはなにがあるか、そう学園である。


 この、シュルティア王国には、王都に『王立シュライン学園』がある。そこは魔法を使って戦闘をしたい奴らが学びに行く学園だ。つまり、俺やシオンのことだな。


 俺は自分の住んでいる村のことを今まで『村』と表現してきたが、なんとこの村には名前があった。『スーレネム村』と言うみたいだ。先日、いろいろ調べていたら知ったのだ。王都はこのスーレネム村から馬車でおよそ1ヶ月。学園に入るための試験は、2月の後半にあるので、1月のうちにこの村を出ないといけない。


 だから、今日の予定は、この村で挨拶めぐりになる。


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 「そんなわけでまず最初はデュエグのオッチャンだ」


 「なんだ、坊主ども。学園に行っちまうのかい、また俺が村の警備しなくちゃなんねぇじゃねぇか」


 「いや、オッチャン、普通に働けよ。まあ俺たちの稽古にしちゃったから仕事なくなっちゃったんだろうけど」


 「まあいい。クラウンもだが、シオン嬢も頑張れよ。色々な」


 「はい、今までありがとうございました」


 「おう、気をつけて行きなよ」


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 「そういや、俺たちってあんまり知り合いいないな」


 「そうね、デュエグさんと村長さん、あとはお店屋さんの人たちくらいかしら」


 「んじゃ、村長は後にしてお店の方に先に行くか」


 「わかったわ、そうしましょう」


 そうして、村の商店街みたいなところに来た。結構いろんなものが置いてあるが結局俺はあんまり買わなかったな。


 「あらま、クラウン君もシオンちゃんも王都に行っちゃうのね、悲しいわ」


 お店屋さんのおばちゃんだ。ここは俺よりシオンのほうが来ていたと思う。


 「ええ、王都でも頑張ってきますね、おばちゃん」


 「しっかり頑張ってきなさい、これお土産ね」


 そういっておばちゃんはお野菜の詰め合わせをくれた。


 「ありがとう、おばちゃん。今夜いただくわね」


 「ええ、そうしてやってちょうだい。クラウン君も頑張るんだよ!」


 「はい!頑張ってきます!」


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 お野菜を家に置いてやってきたのは村長の家だ。村の中では一番でかい家だ。玄関まで行って扉をノック。


 「村長いますかー?」


 「誰だ、今日は誰かに会う予定は無かったはずだが…っとクラウンにシオンじゃないか」


 「どうも、こんにちは村長。今、学園に行くから挨拶回りをしてまして」


 「ほ~、2人とも稽古ばっかりで常識が無いと思っていたが、案外あるのだな。まあ試験に落ちないように祈っているよ」

 

 「あろがとうございます、頑張ってきますね」


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 挨拶回りを終えた俺たちは家に帰って夕食を食べていた。俺の家にシオンの家族も来て、一緒に食べている。


 「いや~、もう学園に行く時期になってしまったか~」


 「ああ、そうだな~。クラウン、うちのシオンを危ない目にあわせたら容赦しないからなー」


 「わかってるよ、おじさん。シオンのことは俺がきちんと守る」


 「じゃあ私はクラウンのことを守るわ」


 「いいね、お互いがお互いを守るのか、いい考えだな」


 「そうね~、シオンちゃん。うちのクラウンのことよろしく頼むわね~?」


 「はい、任されました」


 そうして、夜も更けてゆく。


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 翌朝。


 「よし、じゃあいってきます!」


 「いってきます」


 俺たちは学園に向けて旅立った。


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 「しかし、あいつら馬車出さなかったけど、どうやって行くんだ?準備は万端とか言ってたが」


 「あいつら、自分で走っていくんだとよ。訳がわからねぇぜ」


 「は?マジでいってんのか?」


 「ああ、大真面目にさ」


 「ははっ、あいつらスゲェな」


 この話はすぐに村中に広がり、大人たちの酒の肴になったそうな。








『幼少期』is end.


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