第9話 シオンと…

 初めて魔物を狩ったあの日から、3年程が過ぎた。俺とシオンは9歳になり、お互いのことを呼び捨てで呼び合うようになっていた。でも、変化なんていったら魔法の習得以外ではそんなものであり、いつもと変わらない日常を送っていた。


 だがしかし、俺は悩んでいた。今までこの世界で10年、日本で幾年か生きてきた俺だがここまで悩んだのは初めてだと思う。


 一体何に悩んでいるというのか。それは…





 シオンへの告白の仕方だ。


 今までシオンとは幼馴染として、意識があるときも、無いときも一緒にすごしてきた。ほぼ結婚しているのと同じだ。俺もシオンもそのことになんら疑問を抱いたことは無い。

 

 だがしかし、成長を重ねた俺は次第にシオンの魅せる『女』の部分に惹かれていった。今じゃすっかりシオンの虜だ。

 

 もちろん『女』の部分だけに惹かれたわけではない。シオンはいつも俺に付き合ってくれる。俺が面白いことを探そうといったら、一緒に探してくれ、勉強を教えてくれといったら完璧にわかるまで教えてくれる。


 そして最大の要因は、ひた向きさだ。シオンは何をやらせても才能があるがそれにおごらずしっかりと努力をする。だから、その努力によって生み出された料理は心もこもっており大変おいしいのだ。


 だから俺はシオンに幼馴染と言う関係だけでなく、恋人という関係性も欲しいのだ。だから俺は苦悩している。どうしたらいいのだろうか…。


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 悩んでいて、疲れた脳みそを休憩させようと、俺は外に出た。今日は勉強の日だったのだ。といっても今日の分は朝から昼のうちにかけて俺もシオンも終わらせていたので、昼ごはんを食べたあとは2人とも部屋でゴロゴロしていたのだ。


 気分晴らしに巨大樹でも、登ろうと思い『瞬磁動歩モーメントステップ』で駆け上がっていく。頂点から下を見てみると、村だけでなく村の外の森も綺麗に見えた。空を見ると、太陽が輝きとても綺麗だった。


 そのとき、俺の頭に電流が走った。もちろん、物理的でも魔法的でもなく。


 そして、ひとつの考えを思いついた―――この樹の上で、夜に告白しようと。


 理由はいくつかある。まず月が出ていたらロマンチックな感じでいいと思ったからだ。それともうひとつ、時期がいいと言うことだ。今日は8月30日。つまり、俺たちの誕生日までに、あと一週間ということだ。よし、決まったんなら行動は早い。この一週間、セリフを考え、覚えるのだ。シオンに見つからないようにして。


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 そして、誕生日当日。


 今日もいつもと変わらず稽古だ。お昼ごはんを食べるためにいったん家に帰り、また稽古をする。もちろん稽古は本気と書いて本気マジと読むレベルの勢いだ。

 

 稽古のレベルもだいぶ上がっており、杖を振るいながら魔法を撃つのは当たり前。身長も高くなり、俺は128cmくらいになった。シオンは132cmくらいだが…。背が伸びたことで、杖もしっかり振るえるようになり、杖での攻撃力も大きく上がった。魔法だけでなく近接戦もレベルが上がっているのだ。クセはクセのまま伸びて、逆に相手を混乱させることが出来るくらいだ。


 辺りも暗くなってきて、稽古も終わり帰ろうとしているシオンに対して、


 「ちょっと待ってくれ」


 ついに始まる。俺はこれから今まで感じたことの無いような緊張を感じるはずだが、大丈夫だ。俺は出来る!


 「どうしたの?」


 「シオン、ちょっと付き合ってくれ」


 「ええ、いいわよ」


 シオンは何も聞かずに俺に付き合ってくれる。


 「ちょっと巨大樹に登らないか?」


 「いいわね、きっと月も綺麗だわ」


 そういって、俺たち2人は巨大樹を登っていく。


 頂点に着き、シオンの顔を見たとたん、俺の中で時が止まった。


 シオンの顔が月の光によって美しく輝き、俺の動きが止まってしまったのだ。


 「どうしたの、クラウン?顔を真っ赤にしちゃって」

 

 そして、俺の頭から用意しておいたセリフが全て吹っ飛んでいった。


 「シ、シオン。今から言うことをしっかりと聞いてくれ」


 もうセリフなんて吹っ飛んでしまった。パニック状態になっている頭でなんとか自分の気持ちだけは伝えようと必死になって言葉を紡ぐ。


 「ええ、わかったわ」


 「シオン…。俺は、お、お前のことが」


 そのとき世界は無音になる。俺の声以外は。


 「俺は、お前のことが好きだ、シオン!」


 言い切った。言い切ってやったぞ、俺は。やってやったぞ!


 「そ、それでシオン。シオンは俺のことを…、ってシオン、どうした!?」


 俺が言い切った感動に浸っているとシオンが泣いていた。


 「シ、シオン、そんなに嫌だったのか?」


 「嫌なわけないじゃない!ようやく私の努力が実を結んだんだなって思ったら、私、私…」


 「それってつまり…」


 「ええ、私もクラウンあなたのことが大好きよ。好きじゃないなら、一緒に寝たりなんてしないわ」


 そういって泣きながら笑うシオン。その月に照らされた顔は俺が今まで見てきた中で一番の笑顔だった。


 「それにしても、やっと告白してくれたのね、本当に長かったわ」


 「え、それってどういう…」


 「じゃあ帰って誕生日パーティーね。お母さんたちに報告しなくちゃ」


 「え…、報告しちゃうの?」


 「もちろんよ。お母さんたちも協力してくれたんだから、ちゃんと結果を言わないとね♪」





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 今年の、誕生日パーティーは、最高に楽しかったけど最高に恥ずかしかったことをここに報告しておきます…。

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