第5話 武器入手

 俺とシオンが5歳になって、10ヶ月ほど経過した。稽古はまだまだ続けているが、もう父さんは稽古を見ていない。父さんの職業は普通の農民だからだ。土弄りは得意でも戦闘は得意ではないのだ。

 

 背もそれなりの高さ(だいたい110cmくらい)になったので、新たに武器を手に入れて練習しようと父さんに相談しているところだ。


 「で、どうかな父さん。武器のことなんだけど…」


 「あぁ、村にある木を適当に採ってきて武器にすればいいんじゃないか?」


 「え!?いいの、父さん?」


 「あぁ、いいぞ。お前たちのことだからまたすぐに強くなるんだろうな、ハッハッハ」


 こうして俺とシオンの武器は村にある木で作ることになったのだ。


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 「シオンちゃん、父さんが村にある木を適当に使っていいって言ってたよ」


 「ならクラウン君、やるしかないわね」


 「あぁ、そうだね」


 「「村の真ん中にある巨大樹を使う!!」」


 俺たちの住んでいる村の真ん中には巨大樹がある。というかむしろ樹の周りに村を作ったような感じだ。その樹は今では子供たちの遊び場だ。俺たちは稽古で樹に登ったりしていたが…。その上の方の枝をとってきて削りだしをして武器にしようと思う。


 これまでずっとシオンと2人でどんな武器を使うかの議論をしてきた。そして最終的な結論が『杖』だったのだ。その理由として、杖を使うと魔法の威力が上がったり、魔力効率が良かったりするのだそうだ。それともうひとつ理由があり、杖も殴ったら普通に鈍器になるじゃないかというところだった。この2つの理由によって俺たちの武器は杖と結論付けたのだ。


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 「よし、じゃあ登るか」


 「ええ、登りましょう」


 俺たちは村の真ん中、巨大樹の下に居た。これから登って枝を採ってくるところだ。樹の根っこのところに足を掛けて、


 「『瞬磁動歩モーメントステップ』」


 『瞬磁動歩』で登っていく。シオンは今俺の腕の中にいる。いわゆるお姫様だっこってやつだ。この歳でお姫様だっこをするとは思わなかった、もうすこし大きくなってからだと思ったんだが…。


 「どう、シオンちゃん?今どの辺かな?」


 「ん~、よくわからないわね。でももうそろそろでいいんじゃない?」


 「そっか、了解。んじゃ、枝を採りにいきますか」


 巨大樹は高さがだいたい150mで枝の太さが3mもある。枝を1本採っただけでも杖2本分なら余裕だ。標的の枝を見つけてシオンが、


 「『氷刃ひょうじん』」


 シオンの新たなる魔法『氷刃』を撃って枝を切り落とす。切り落とした枝に俺は極を付与して浮遊させる。


 「よし、じゃあパパッと帰って杖作っちゃおうか」


 「ええ、そうね」


 そうして俺たちは『瞬磁動歩』を使いながら地面へと降りていった。


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 地面へと降り立った俺たちがしているのはまず枝の乾燥から始めた。本来なら長い時間を掛けないといけないのだろうが、こっちの世界では魔法がある。


 「シオンちゃん、枝の中の水分を使ってなんか氷魔法使って。もちろん枝の中に水分を残しちゃダメだよ」


 「わかったわ。じゃあ『熊氷爪グリズリークロー』」


 枝の中から出てきた氷はまるで熊の爪のようになって空を切り消えていった。ってあれ…、


 「俺の技じゃん!俺の『熊磁爪グリズリークロー』じゃん!」


 「ええ、あなたが昔使ってたのを思い出したから、使ってみたの。それより枝の水分は使い切ったわよ?」


 「あ、ああ。ありがとう。まさか俺の技を使われるとは思わなかったけど、ま、まあいいか。杖作っちゃおう」


 動揺を落ち着かせ俺は砂鉄を集めて枝に纏わせる。そして磁力で砂鉄を超高速振動させ、杖を削りだす。削りだした杖を今度は砂鉄で研磨する。いい感じにツルツルにして


 「よし、完成!」


 「やったわね」


 出来上がった杖は今の俺たちよりも背が高かったが、まあそんなことは些細な問題だろう。どうせ、流派とかも無いんだから成長したらしたでまたそのときに慣れればいいだけだし。


 「じゃあ後は杖に包帯を巻いて滑らないようにしようか」


 「包帯は持ってきてるわよ」


 「お、ありがとうシオンちゃん」


 「ふふ、いいのよ」


 しかしシオンは準備がいいな。俺包帯のことシオンに言ってたかな。まあいいか。包帯をしっかり巻き終えて、


 「よし、今度こそ完成だ!」


 「ええ、そうね」


 ためしに杖を振り回してみると、まだまだ長くて扱いにくいがかなり面白い。


 「じゃあ明日は杖の稽古だね」


 「ええ、明日も楽しみだわ」


 そうして、今度は俺がシオンの家にいって晩御飯を食べ、お風呂に入り一緒に寝るのだった。

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