第4話 シオンと稽古
さて、昨日はシオンと一緒に勉強を一日中したが、今日は一緒に稽古をする。まぁ、稽古をするといっても、俺もシオンも武術なんかをやっているわけではないので、喧嘩の延長線みたいもんだ。
「シオンちゃん、いくよ!」
「きなさい!クラウン君!」
そうして、俺たちは互いに走り出す。走ると言ってもお互いに縮地が出来るので、ぴゅんぴゅん飛んでいるみたいなのだが。
先に俺がシオンのほうにたどり着く。そして走りながら振り上げていた右拳をシオンに思い切り叩きつける。シオンは頭が良いだけでなく戦闘でも強いので、こちらが手加減なんて言っていられる状況じゃない。
パシン!
だが、そんな攻撃もシオンの左手で普通に止められる。シオンは俺の攻撃を読んでいたのだろう。そして止めたタイミングでシオンは魔法を撃ってくる。
「『
「あぶなッ!」
俺は反射神経と自分の身体と地面に極を付与して、身体を反らせる。そのままシオンは俺の右手を左手で掴んだまま、顔面にむけて拳を振るってくる。たまに魔法も飛んでくるから厄介極まりない。
「ふふふ、クラウン君、こんなものなの?」
「まだまだ!」
そう言いながら俺は『極拳』を使う。そしてさらに俺の右手とシオンの左手に同じ極を付与して、引き離そうとする。
ドゴォ!
「きゃぁっ!」
『極拳』を使って無理やり当てた一撃はシオンを突き飛ばしてくれた。そのまま、お互いが一度離れ構えあった。
「どうかな、俺の『極拳』は。効いてくれたかな?」
「ええ、とっても効いたわ。じゃあお返しね♪『
シオンは拳に氷を纏わせ、こちらに向かって走ってきた。もちろん縮地で。ならば俺はッ!
「『
瞬磁動歩で後ろに回りこみつつ『極拳』を発動させる。これは入ったと思ったとき…
「甘い!」
そういってシオンは振り向きながら俺の右手を『凍拳』で打ち抜いてきた。俺がシオンの心臓上部に極を付与したのに気づいたシオンは氷を纏わせた拳と極が水平になるように振り向き俺の拳を打ち抜いたのだ。俺の『極拳』の仕様上、俺がどんな体勢でも引き寄せてくれるために全方位に引力を発生させている。それをシオンは見抜いて、逆に利用してきたのだ。恐るべき5歳児である。
さらに『極拳』は極を付与しているだけであって、拳を強固にしているわけではない。それらの理由から…
「ぐわっ!」
「ほらほらほらほら!」
「ぐお!ぐわ!ぐえ!ぐあ!」
こうして拳の勝負で負けて吹っ飛ばされるのは、自明の理なのだ。
だがここでやられる俺じゃない。すぐに立ち上がり魔法を唱える。
「『
地面から磁力によって吸い上げられた砂鉄が棘のように生え、シオンに襲い掛かる。シオンはそれにあせらずしっかりと対処をする。
「『フリーズ』」
地面から生えてきた棘をしっかりと凍らせるシオン。しかし、俺は『砂鉄棘』をシオンの正中線に沿い、それなりに太く作った。これにより、俺が横に動かない限り、シオンは俺のことが見えないはずだ。もちろんシオンもそのことに気がついているだろう。ならば俺は意表を突くために新たな魔法を使う。
「『
『熊磁爪』は砂鉄を集めて浮かせ、熊の爪のように砂鉄を成形し、攻撃する魔法だ。それなりの強度で作ったから、シオンの『フリーズ』くらいたやすく壊せるはずだ。
「きゃあぁ!や、やったわねクラウン君」
シオンは新しい魔法に対処ができず、転んだみたいだ。転んだところへ『瞬磁動歩』で飛び、シオンの腕を極める。いわゆるハンマーロックと呼ばれる技だ。シオンの左手を背中へ持ってきて、固定する。そして顔の横に向けて俺の拳を落とす。
「よし、これで俺の勝ちだね、シオンちゃん」
「ふん!ふん!動けないか…ええ、さすがにもう動けないわ…さすがクラウン君強いね」
「はは、ありがとう」
なんとか抵抗をやめたシオンにそう答えながら俺は汗を拭う。今回の稽古もきつかった。シオンがどんどん強くなるから追いつくのでたいへんだ。武器も扱いだしたらどうなるんだろう。
「よし、じゃあ帰ってお風呂に入って晩御飯食べようか」
「そうね、賛成だわ」
そうして、俺とシオンは2人で家に帰った。晩御飯が楽しみだ!
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