第012話 「超巨大ヘビ アナコンダ」

 14歳になった。


 前世の頃の最後の記憶と同じくらいの背丈になった。


 写真もあるわけじゃないし記憶も曖昧だけど、真っ白な髪以外は体型も雰囲気もそっくりな気がする。


 チビで華奢だ。


 森の中で腰布一つでワイルドな生活をしてるのになんで筋肉がつかないのだろうか?!

 

 闘気を使えば筋肉の有無はあんまり関係ないから別にいいけど、不思議ではある。


 前世と今世が肉体の面でも何かしらのつながりがあるのだろうか?


 この世界の不思議な事に疑問をもったらきりが無いので思考を止める。


 修行の方は順調に進んでいる。


 僕らの連携も洗練され声を掛けずに思う様に動ける様になっている。


 場合によってはハクビが闘気で攻撃して、僕が魔法で援護する様な戦い方も臨機応変にできる。


 なんてたって毎日一緒にジャレあって、ひっつきあって暮らしてるから意思の疎通はバッチリだ。


 コントロールできる闘気と魔法の出力も順調に伸びている。

 未だに限界には達していない。







 魔獣との実戦修行の集大成としてのこの森で1番強いであろう魔獣と戦うことになった。


【超巨大ヘビ アナコンダ】


 名前は僕が勝手につけた。


 アナコンダが強い理由は巨大イノシシをも丸呑み出来そうなその桁外れの大きさだけじゃない。


 他の魔物を統率しているのだ。


 群れの魔獣達に遭遇する事もあるけど、それはあくまで同種の魔獣達が行動を共にしているに過ぎない。


 しかし、アナコンダの周りには様々な種類の魔獣が居て、絶対強者に従う様にアナコンダの命令で動いているよう見えるのだ。


 こんな魔獣は少なくとも僕らの行動圏内ではアナコンダだけだ。


 僕らはアナコンダの根城には近づかないようにしていたけど、まれに食料調達の時に根城の外に出てきたアナコンダの一団と遭遇する事があった。


 その時は戦闘を避けて急いで逃げるようにしていた。


 トトとカカとジジで戦えばまちがいなく勝てるだろうが簡単にはいかないのだろう。

 

 それに意味のない戦いをする必要もないから今までは放っておいた様だ。


 そして今回、僕とハクビで満を持してアナコンダへ挑むことになった。


 恒例となった家族全員での見守りにも力が入っている様に思う。


 相変わらずコロンはウトウトしているが……







 根城の池に近づくと数十匹の魔獣達に囲まれてアナコンダがとぐろを巻いている。


 アナコンダ以外の魔獣達は既に楽に倒せる様になっていたので、僕らはそれらの魔獣をまずは倒すことにする。


 僕らに気づいた魔獣達は一斉に襲って来る。


 アナコンダは微動だにしない。

 僕らをなめているのだろう。



《ドン、ドドン》


《ボガーン》


《バン、バババドーン》



 数が多く少してこずったが、僕とハクビはうまく連携しながらアナコンダ以外の魔獣達を全滅させることができた。


 残りがアナコンダだけになって初めて動きだした。


 助かった。


 僕らを侮ってくれたおかげで、僕とハクビ vs アナコンダ1匹 で狙い通り戦えることになった。



 動き出しはできるだけ早い方がいい。


 一直線にアナコンダの頭部へ走り、拳を打ち込む。


《ガキン》


 外皮は思った以上に硬い。


《ボワ》


 遠距離からハクビの魔法攻撃もタイミング良く当たったが外皮には浅い傷しかつけられない。


 魔法耐性も高いようだ。


 それにアナコンダは思ったよりも動きが速い。


 直線的な素早い噛みつきをギリギリ避ける。

 

 周辺の大木が小枝の様に噛み砕かれる。

 

 すごい威力だ。

 まもにもらったらケガじゃすまないだろう。


 けど僕らはその程度じゃビビったりはしない。

 

 一瞬の気の迷いが勝敗を分ける事をわかっていたし。

 ギリギリではあったけど見切れない攻撃ではない。


 尻尾を鞭のようにして放たれる広範囲の攻撃は何発かもらってしまう。


 闘気で防御しても数メートル吹っ飛ばされる。


 すぐにハクビが回復魔法で治療してくれるので追い打ちを避ける事が出来た。


 ヒヤッとする。


 1対1の勝負だったら未だ勝てない相手だろう。

 

 僕らは連携を活かして相手を削る戦いに切り替える。


 2人とも中距離のスタンスを保ちひたすら魔法で攻撃する。


 これはどららも魔法と闘気を使える僕とハクビだからこそできる連携だ。


 アナコンダが片方に必殺の噛みつきをしかけてくる様なら、もう片方が背後から闘気全開での近距離攻撃を仕掛ける。


 アナコンダは常に2つの方向を気を配らなきゃないけなくなり攻撃も単調になってくる。


 僕らが与えているダメージもどんどん蓄積され動きも鈍くなってくる。


 十分にアナコンダが弱ったのを見計らって、僕が会心の一撃を頭部に打ち込む。


《ダン》

 

 鈍い音がしてアナコンダは2度と動かなくなった。



 僕らの勝ちだ!!



 コロンが駆け寄ってくる――ちゃんと戦いを見ていた様だ。







 この日はご馳走になった。


 トトとカカの中でアナコンダを倒せた事は何か一区切りとなる様だった。


 僕もハクビもみんなに褒めてもらえてうれしい。


 コロンも自分の事の様に喜んでくれている。


 我が家のムードメーカーでもあるお調子者のサルは「キーキキ」言いながら、いつも以上にグルングルン体や腕を回しながら料理を作る。


 今夜はハクビとコロンの好物だ。


 カカは僕やハクビが目に入ると掴まえて口にキスをしてくる。

 そして強く抱きしめてくる。


 カカの口へのキスは今日に始まったことじゃない。

 頬とかオデコじゃなく口にしてくる。


 僕らが赤ちゃんの頃からしていることだ。

 特に機嫌の良い時にしてくる。


 僕は14歳になったが、カカから見たら赤ちゃんの頃と変わらないのだろう。



 日本社会で考えたら『14歳の少年が母親から口にキスをされている』って聞くと異常な気がする――そうでもないのかな?



 しかし、僕の相手はサルだ。美魔女の母親じゃない――まぁ、魔女ではあるからややこしいんだけど……



 それに精神年齢15歳の時にサルの乳を吸っていた僕にとっては、このくらい小さい事だ。


 さすがに自分からカカの口にキスをすることは恥ずかしいけど。


 サルからキスをしてもらえる事はとても暖かい愛情表現だと感じている。


 僕もネコとハムスターを捕まえてはキスをしている。


 すくなくとも2匹とも嫌がってはない――そう信じている。


 けど、僕もハクビも何故かトトにキスをされるのは昔から嫌がった。


 だからトトは僕らにそういう愛情表現はしてこない。


 そう考えるとなんかかわいそうだな、

 ごめんよ、トト……

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