第179話 精神攻撃
賊の遺体を集め、めぼしいものを剥がしながら、落とし穴に突き落としていく。
せっかく穴を掘ってくれていたのだ、活用してやろう。
「それにしても、ロクなものを持っていないな」
懐まで漁っているが、金目のものはほとんどない。
現金も小銭ばかりで、集めても銀貨数枚ってところだろう。
そうなると、期待できるのは奴らの装備くらいだが……。
鎧とかは、持っていくのが大変な割には売るのが大変だ。そりゃそうだ、サイズがあるんだから。
「主の討ち取った槍使いの得物は、なかなかの業物だ」
キスティは、赤銅色の槍を突き出してみながら確かめている。
「素材は何だ?」
「分からんが……イスタ、分かるか?」
キスティに槍を渡されたイスタが、沈み出した陽の光に当てるようにして観察する。
「う〜ん、魔鉄の一種かなあ? なんか独特の手触りだよね」
「使い込まれているが、よく手入れされている。歪んだところもない。造りもしっかりしている」
正確な価値は分からんが、実用的な槍らしい。
「槍かあ。イスタ、要るか?」
「いや、僕にはこれがあるし」
イスタが愛槍を掲げて見せた。
得物に慣れているから本気で要らないのか、遠慮しているのか。
「ま、一応持って帰って売るか」
「そうだな」
キスティが、持って帰る荷物の方に槍を避けた。
「あとは、この魔法使いの杖と鎧もそれなりのものだったようだが」
「杖は折れたな」
「ぽっきりいっているな。まあ、帰って修復してみてもいいが」
「アカーネ、どうだ?」
今度はアカーネに鑑定を頼む。
「う〜ん、魔導線は千切れてるし、くっつけても微妙だよ?」
「だ、そうだ。こいつは遺体と一緒に埋めてやるか」
ぽい、と杖を落とし穴に投げる。
「鎧はどうする? すこしひしゃげているが……」
「そこそこ良い鎧だし、体格も普通だったからな。持って帰って売るか」
鎧は嵩張るし、売りにくいとはいえ、他に戦利品がないなら、1つくらい持ち帰ってもよい。
少し離れた場所では、ミヅカが行商人妻を尋問している。
奴の身柄はもう、リッカたちに委ねたので好きにしてもらっている。
戦利品の選別が終わり、槍と鎧。そして持ち運びやすそうな何振りかの短剣を持ち帰ることにする。
他に賊の仲間がいないとも限らない。早めに離れた方が得策だ。
土魔法も補助的に使って穴を埋めて、襲撃場所から少し歩き、目立たない洞窟を見つけて今日の宿場とした。
「ミヅカ、行商の妻は何か喋ったのか?」
「まあ、それなりにな。大した尋問もしておらんのに、ペラペラと喋りおるわ」
「ふぅん」
心が折れたのか。それとも、それも罠なのか。
「どんなことを言ってたんだ?」
「奴らは、この辺で旅人狩りをしている一味でな。フリィ夫妻は、奴らにたまに獲物を連れていくことで分け前を頂いていたそうだ」
「とんだ悪党だな」
「まあな。だが、そうしないと逆に略奪の対象されるおそれもあり、仕方ない面もあったと言っているが」
「そうか。まあ、もう少し見る目があれば、俺らを利用して奴らを排除する選択もあったはずだからな。判断ミスってことだ」
「そう、だな」
「で、聞いたところ下っ端も下っ端だが、それでも連れていくのか?」
「ああ。彼女は襲撃があったことの生き証人だ。政治的には使えるさ」
「ほう」
「不幸中の幸い、というかな。ブラグ家の戦士達が賊に襲われ、それを撃退した。その事実自体が重要なのだ」
「政治ってやつか」
「であるな。何より、これまで退治できていなかった賊集団が、ブラグ家を襲ったことで根こそぎ狩られたという点が使える。分かるか?」
「ああ……。今まで接点のなかった勢力も、ブラグ家と対立しないようになる?」
「少なくとも、示威行為としては丁度いい。リッカなら、上手く使うだろう」
ブラグ家の軍勢というよりは、ヨーヨーパーティとブラグ家の混成パーティだが。
側から見れば、ブラグ家と傭兵の組み合わせならブラグ家が主だと見るだろう。
まあ、俺が使っても何にもならない賊の身柄を、ブラグ家が使うと有用だというなら、異議はない。
「だが、ミザ・シトリは地下組織も多いと聞く。ヨーヨーたちも、長居せずに発った方が良いかもしれぬ」
「……襲撃犯の元締めみたいな奴らが報復していくる可能性があるってことか」
「ゼロではないな。少なくとも探りは入るだろう。だからこそ、情報が広まる前に去るべきだろう」
「まあ、いいけど。根なし草は辛いねえ」
「根なしだから、面倒事から逃げられるのだろう。我々は今後も、ミザ・シトリを玄関口として使わなければならんのだぞ」
「それもそうか」
戦争が再燃しそうなキュレス王国とズレシオン連合王国から逃げて来たってのにな。この国はこの国で大変そうだ。部族や地下組織が面倒くさそうなサラーフィー王国も通過するとなると、更に西に進むことになる。
西と言うと、元は大きな王国であったが3つに分裂したというテラト王国がある。
ただここも、内乱に巻き込まれそうなので、通り過ぎて小さな国が集まっているという地帯まで行くか。
そこまで行けば、戦乱には巻き込まれなさそうな……小国同士の戦争とかありそうだな〜。
ヒトとヒトの争いに巻き込まれないことは不可能か。
むう。
「ヨーヨーたちは、砂の都に落ち着くのか?」
「案外、それが一番平和かもな」
だが、砂漠のオアシスで一生というのもなあ。
定住するなら、もうちょっと住みやすそうな場所はないのだろうか。
「サラーフィーから更に西に行くと、どういう場所か知っているか?」
「テラトの地方か? なかなか肥沃な大地だと聞いているが。旧テラトの西端まで行くと、魔物被害が厳しいらしいがな」
「魔物被害か」
「西の端では、湧き点が多いと聞く。それに、大陸中央の断絶の山脈から降りてくる魔物がいるからな」
「あれ? テラトの3王国の西には、小国郡とかあったよな」
「ああ。更に西には、オソーカ同盟とかいう国もある。だが、それらで止められずに襲ってくる魔物もいると聞いたことがある」
「……大変だな」
「ああ」
しかし、それならオソーカとかいう国は、もっと大変そうだなあ。
西に西にと向かっている俺の旅は、果たして正しいのだろうか?
ミヅカとの話を切り上げ、従者組の様子を見る。
今は一応、サーシャとイスタが入り口の見張りをしている。
アカーネは普通に、寝袋で小さく丸まって寝入っている。
キスティは武具の手入れをしながら、ゆっくりしているようだ。
寝ればいいのだが、興奮状態を引きずっているのか眠れないのだという。
「サーシャ、異常ないか?」
「はい。ただ、夜になると私の遠目では役に立ちません」
「まあな。このマスク被るか?」
「いえ」
食い気味に断られてしまった。
俺のマスクは、少し夜目が効くようになる。自動サイズ調整があるのでサーシャでも被れないことはないのだが、サーシャが被るとバランスが悪く、動きには悪影響がある。
それを憂慮したのだろう。
俺の体臭で臭いとかいう理由ではないはずだ。きっとそうだ。
「イスタ、魔物狩りの練習にならなくて悪かったな」
「いや、いや。そんなことはいいけど……あの男の人、演技が凄かったね」
行商人夫の、カル・フリィのことだろう。
確かになあ、直前まで気付けなかった。
あの時、ドンさんからの警告と、地中探知。そしてカルのわざとらしい態度がなければ、確信はできなかっただろう。
妙に突撃を求めて誘導しようとしていたし、自分が前に出ることは異常な拒絶をしたし。
あの場所まで連れていくのは慣れたもんだったけど、まさか直前に気付かれるなんて想定していなかったんだろうな。
「酷い奴だったな。『詐欺師』だったのかもしれん」
「『詐欺師』かあ。そんなの持ってるなんて、酷い性格だったんだろうね」
「……」
それ以上はいけない。
「まあ、過ぎたことだ。戦士家から離れて戦ってみて、どうだった?」
「うん。何というか、決められた役割だけじゃなくて、自分で臨機応変に何でもできないと、傭兵として大成することはできないんだなって」
「ほう」
「ヨーヨー、盾役から援護役、突撃、一騎討ちと何でもありだったじゃない。凄いと思ったよ」
そんなにストレートに褒められると、照れるな。
さっきの『詐欺師』の件は心の中で帳消しにしておこう。
「傭兵にもいろいろいるようだがな。俺は少し器用貧乏だし、一芸に秀でることも大事だろう」
「うん」
「俺のやり方は、そうだな……。前、”生き汚い”って言われたことがあったな」
「どういう意味?」
「ん? そうだなあ。手段を選ばない。ただ敵を殺し、生き残ることを優先するってとこか?」
言語化は難しいな。
「生き汚い、かあ」
イストは、くるくると槍の軸を回転させて呟いた。
「ま、お前はお前の道を探すことだ。俺の言う事なんて当てにならんぞ」
「そうかな」
外を見ると、青い方の月が沈むところだ。
周囲は一層の闇で覆われるだろう。
洞窟で何事もなく一泊を終えた後、ミザ・シトリへと出発した。
距離的には今日のうちに余裕で着くと思うのだが、案内人のいた行きと違って、自分たちでルートを決めなくてはならない。
これがなかなかの難題で、いちいち行きで避けた場所を全て覚えてはいない。
しかも、迂回するにしてもどこに魔物がいて、どう避けたかについて詳細を知らないのでルート選択が困難なのだ。
行商人妻にも情報を吐き出させるが、夫の方よりも道を知らなかった。そのうえ、彼女が裏切って俺たちを全滅させようとする可能性もなくはない。
一概に信じることもできなかった。
しばらく悪戦苦闘したのち、俺とミヅカで1つのことを決めた。
太陽の方向から方角を導き出し、ミザ・シトリにいくルートを直線で突っ切ろうという案である。
途中で魔物とかち合う可能性はあるが、ズルズルと遅れてもう一泊するよりはマシ。
そういう判断だ。
この辺にいる魔物について、お互いに知るところを情報共有をして、先に進む。
「なんじゃありゃあ」
草陰から、前を見て呟く。
サーシャから、魔物らしき影があると報告を受けて、慎重に近付いたところ、魔物の姿が見えた。
全体のフォルムは、羽虫のような印象なのだが、一番上の脚がカニのはさみのようになっている。大きさはもちろん、羽虫サイズではなく、1メートルくらいある。
背に生えた羽根をパタパタとはためかせて、地面から30センチ程度浮き上がっている。
「ピローぺという魔物だと思うのですが」
「名前も珍妙だな」
ピローぺは、まばらな草原の上を滑るようにして移動している。
「奥に、別の種の魔物がいるのは見えますか? やや右側の上空」
「どれどれ」
怪しいマスクには多少のズーム機能がある。だが、可能な限りズームしてみても、それらしいものが見えなかった。遠くで滞空しているピローぺらしき影のどれかが、違う魔物ということなのだろうが。
「すまん、見えん。ミヅカ、見えるか?」
「全く分からん。サーシャ殿、絵を描けるか?」
サーシャは、藁半紙と黒いチョークのような筆記用具を引っ張り出し、魔物の姿を描く。
かなりデフォルトされているが、特徴は分かる絵だ。
「頭のところ? がブツブツしているな。目がたくさんあるのか?」
「いえ。目というより、触覚でしょうか。トゲのようなものが多数、突き出ております」
胴体部分は、これも虫っぽいのだが、ハエを禍々しくしたような感じだ。
頭のところ以外は、手前の魔物と似ているといえば似ているが……。
「ピローぺってやつの変異した個体なんじゃないか?」
「どうでしょう」
「いや、ヨーヨー。これはおそらく、グリュウ虫だ。サーシャ殿、確認するが、この胴体の部分にも眼があるな?」
「眼なのか、模様なのかは分かりませんが」
「眼なら、間違いないだろう。頭部の特徴も一致する」
「南部にも出る魔物か?」
「たまに、な。アルフリード家やデラード家の領地では出ないが、ヌーオーネイではそこそこ出る」
「ほう。ヌーオーネイというと……デラード家の北西の領地だったか?」
「そうだ。グリュウ虫は厄介な魔物でな。若い頃に対処を習った覚えはあるが、実際対峙したのははじめてだ」
なんだか面倒そうだな。
迂回できるならしたいが……さすがに目の前まで来てしまった以上、倒した方が後々安全だろうか。
「グリュウ虫ってやつの、厄介な能力ってのは? 強いのか」
「強い、とはまた少し違う。奴はヒトで言うところの『威圧』のようなスキルを使ってきてな」
精神攻撃かよ。
見た目通りの、嫌らしい能力だこと。
「それで、厄介なのは、やつらはその能力を使って、知能の低い魔物を従えることがあるのだ」
「威圧でか」
「ああ。どういう仕組みかは分からんが、強き者には従うって本能なのかもしれぬ」
「ふぅん。すると、あのピローぺって魔物も?」
「ああ。連携している可能性が高い。こちらを認識すれば、いっせいに襲いかかってくるだろうな」
「マジかよ」
ピローぺは、見える範囲でも数匹がうろうろとしている。
奥にも同数以上いるとすると、それなりの数になる。
「迂回すべきか?」
「そうしても良いが……。ピローぺは飛べるからな。ずっと、横からの攻撃を警戒するハメになる」
「なら、狩るか?」
「可能なら、だ。グリュウ虫さえ討ち取れば、ピローぺが組織だった動きをすることはないだろう」
カルのやつは、この辺にグリュウ虫の軍勢がいることを承知していたのだろうか。
それとも、運良く出会わなかっただけなのか。
なんにせよ、ここで狩れるなら狩ってしまった方が良いわけだが……。
「サーシャ、数は分からんか?」
「ん、見えているだけで、5体くらいでしょうか」
「ミヅカ。正直に伝えて欲しいが」
「ん?」
「あのピローぺっていう虫5〜6体と、俺たちの誰かが戦ったとして、勝てると思うか?」
「そうだなあ。状況と人によるが、ヨーヨーであれば5〜6体は一人で相手にできるはずだ」
「アカーネやサーシャでは?」
「サーシャ殿はやりようによっては。アカーネ殿は、実力をよく知らない」
「そうか」
それなら、計算上は勝てそうか。
「グリュウ虫の対処ってのは?」
「グリュウ虫を潰すことだ。ただ、防御が硬い。逃げ足も早いしな」
「硬いのか? そうは見えないが」
「これで強靭なのだが、防御魔法らしき能力もあるということだ」
「防御魔法だと?」
「物理、魔法双方を弾くということだ。実際に戦ったことはないから、正直分からないが」
精神魔法は使ってくるわ、他の魔物は使うわ、硬いうえに防御魔法を使ってくると。
たしかに面倒くさい。
「俺の攻撃で突破できるか?」
「ヨーヨーに無理なら、半端な戦士団でも倒せぬ。いけるとは思うがな」
賊を圧倒できたからか、ミヅカの評価も地味に高くなった気がする。
ただ火力という面では、実は最強はアカーネの改造魔石だ。次点でキスティのフルスイングじゃないだろうか。
グリュウ虫はキスティに任せて、俺はピローぺ狩りアンド支援に徹することも考える。
ただ、ネックはピローぺもそうだが、敵が浮いているというところだ。
キスティには実は、遠距離攻撃スキルがなく、得物もハンマーなので遠くに届かない。
つまり、対空中戦は苦手に思えるのだ。
「キスティ、ハンマーでやつらと戦えそうか?」
「う〜む。投げ槍でもできれば、対処できるのだが」
「やはり、厳しいか。槍といえば、持ってきた槍を使うか?」
「……そうだな、そうしよう。ある程度は、槍の習いもあるのでな」
「おお、そうだったか」
やはり戦士家の生まれは色々と訓練しているもんだな。
「剣、ハンマー、槍。他にも使えるのか?」
「どの程度なのかにもよる。が、一応基本だけなら、弓でもクロスボウでもいけるぞ」
「そうだったのか」
状況に応じてサーシャを援護するために、小弓を導入してもいいのかもしれない。
が、あまり色々武装を揃えていると、荷物を持つ余裕がなくなるな。
運搬役も欲しいなあ。
「とりあえず、今回は槍だな。ほれ」
「ああ。槍メインで戦うのは、久方ぶりだ」
「いつもと勝手が違うのだから、油断するなよ」
「承知」
サーシャとアカーネは、この草むらあたりに潜んで援護してもらうか。
知能が低いのであれば、バレずに攻撃できそうだ。
同時に俺たちが攻撃を開始すれば、尚更だ。
ただ、出来れば今回はイスタにも活躍させてやりたいか。
そうすると、キスティかミヅカを守りとして後ろに残したいな。
「ミヅカ、怪我はどうなんだ?」
ミヅカは賊に襲われた際に、矢を何本か受けている。いずれも腕で、軽症のようだったが、かすり傷というわけでもない。
「む、大分よい。まだ少し、影響はあるが」
「なら、今回は後ろでサーシャたちを守ってくれるか」
「致し方ない」
「イスタ。前に出るぞ」
「……ああ」
イスタは覚悟を決めたように槍を握っている。
「大した相手じゃないようだし、気負うなよ。まあ、死んでも責任は取れんが」
「一言余計だよ……」
「そういや、イスタには遠距離攻撃のスキルはあるのか?」
「遠距離はないかな。中距離で使えそうなスキルはあるけど。あとは、こいつ」
イスタは、腰からクナイのような短剣を外して見せた。
「投げ剣か。得意なのか?」
「普通。ただ、当てられても威力は微妙かも。特に補正も乗らないし」
「ふうん。ま、ピローぺの牽制くらいはできそうだな」
「やる。やるよ」
「その息だ。俺が右から迫って、グリュウ虫を狙う。お前は左から牽制してくれ」
地面にガリガリと石で線を引く。
魔物の奥には背の高い岩があるが、それ以外は平坦な地形だ。途中から気付かれると想定して、正面突破を狙う。
「ご主人様。私達は援護に回りますが、どこを狙いますか?」
「サーシャ等は、身を隠しながら左のピローぺを狩れ。余裕があれば、グリュウ虫にも矢を付けてくれ。落とせるかは分からんが、意識は逸らせるだろう」
「承知しました」
「後ろも安全地帯じゃあないからな。アカーネ、今回は後ろの警戒を頼むぞ」
「うん」
アカーネの索敵能力は偏っているが、アカーネの背後のバッグにはドンさんもいる。
警戒能力でドンさんに勝るものはないから、少し安心できる。
「主。私は正面か?」
「ああ。イスティの方に向かったやつを、背後から討ち取ってくれ。その後はできる限り俺に合流しろ。無理はしなくていい」
「承知」
「イスタ。牽制したら、無理せずに引けよ。アカーネたちの方に敵を近づけないようにする方が大事だ」
「わ、わかった」
イスタはアカーネにほの字のようだし、アカーネを守ると言っておけば頑張ってくれるだろう、多分。
「よし、行動開始するぞ。キスティ、攻撃の合図は任せた」
「ああ!!」
俺は右に、イスタは左に静かに移動する。
5分は経っただろうか? 慎重に進んだ後振り返ると、まだキスティの姿がはっきり見える。
木の影から虫たちを覗くと、特に変わったところはない。
キスティが手を挙げ、敵に向かって振り下ろした。
攻撃の合図だ。
うおおおおぉ!
イスタが草むらから飛び出して、雄叫びを上げた。
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