第124話 薬湯

「おいおい、あれのどこがヒトだよ?」


ジンが手を目の上にかざして、遠くを見る。


「どうみても亜人だな」


アラゴが言い捨てる。


『守りの手』の一行、8人とヨーヨーたち4人。『守りの手』は一部の要員を置いてきているので、10人に満たない数になっている。

一行は岩陰にてまとまって警戒しつつ、少し離れた岡の上から崖がある方向を観察している。

人影があったという地点からやや手前。2メートルから3メートルくらいの身長の、灰色肌の筋肉質な亜人を無事発見した。

亜人は背を屈め、棍棒を手に持っている。

見えるだけでも、10は数がいる。


「あいつら、どれくらい強いんだ?」

「ゲッタンですか? えっと」


サーシャペディアが珍しく苦戦していると、ジンが助け舟を出す。


「ゲッタンはゴブリンよりゃ強いが……テーバの強敵と比べればそれほどではないな。ただ、厄介なのは連携だ。群れを成し、頭を使う」

「連携か……」


テーバでも、連携して戦う亜人に戦士団が苦戦していたっけな。

見るからに筋骨隆々で1体1体もそれなりに強そうだし、連携してくるとしたら相当な難物だな。


「どうする? 引き返すか?」

「いや。こっちは腕っこきが12人だ。一当てしてみたいな」


ジンは冷静な口調でそう言う。経験豊富そうなジンが言うなら、大丈夫なのだろうか。


「しかし、木で隠れて見えない奥に、どれだけ隠れているか分からんぞ」

「まずは偵察だな。既に出ている2人が返ってきてから、きちんと作戦会議をしよう。幸い、あいつら全く気付いてねぇ。ゲッタンは鈍感だからよ」


どうやら、脳筋系の魔物らしい。

それ系は俺の得意な初見殺しな技に引っ掛かりやすいので、対処しやすい。

余裕がありそうなら、『魔剣士』で実戦テストできるかもしれない。


「とりあえず、ヨーヨーのパーティがどんなことが出来るか、教えてもらっても良いか」

「ん? ああ」


俺が魔法と接近戦をこなすこと。サーシャが精密射撃できること。アカーネがブーメラン型の道具で遠距離から牽制できること。あとはキスティは前線で暴れることができるが、紙装備なので受けはできないことを伝える。

そこまでピンチではなさそうなので、魔銃については魔石がなかったことにしておく。

既に賊の襲撃時に使ってしまっているが、あまり注目されている状況で使いたくはないからな。


斥候の帰りを待ってから、作戦会議が開始される。


パーティメンバーが書いた簡易的な地図を広げながら、ジンが唸る。


「数は20~30か。もうちょっと絞り込めなかったのか?」

「厳しいな。あいつらうろちょろしているし、周りは森で見通しが悪い」

「そうか……。それなら、最悪のケースとして30と想定するぞ」

「ああ」


発言した斥候役の人は『先狩人』というジョブらしい。別に聞いてないのだが、アラゴが自慢げに語ってくれた。

ジンたちはかなり信頼を置いている斥候役らしい。


地図上には、敵である亜人ゲッタンの簡単な布陣が書き込まれている。


目標は崖沿い、森が途切れるあたりにたむろしている。

頻繁に出入りがあり、奥の森と、手前の草原に3~5体のパーティで食糧を取りにいっているらしいことが分かった。

なので、時を待てばもっと個体数が少ないタイミングはあるかもしれない。

しかし、それをいつまでも待っている余裕はない。

この派遣部隊の目的は、本隊であるジシィラの商隊が問題なく崖下の道を通るための安全確保なのである。当然、本隊はいつまでも待機しているわけにはいかない。

ここはまだまだ、旅路の途中なのだ。それに、ここで留まっている内に、再度賊に襲撃されては困る。


「ふむ……。奴らが何故ここに滞在しているかは分からんが、半面が草原というのはやりやすい。ぱっぱと片を付けるか」

「……いけるのか?」


不安になって口を挟む。


「案外慎重だねェ、パーティリーダーさんよ?」


ジンがにやにやと混ぜっ返す。

それだけ余裕があるなら、いけると判断しているのだろが。


「心配なさんな、ゲッタンは久しぶりだがよ、後れを取るような面子は揃えてねぇよ」

「そうか」

「ま、魔法もあるし、前線が大型武器オンリーのオタクのチームはどうしたって正面だな。俺らのチームを分けて、片方を側面。もう片方を伏せて背面奇襲。ってとこだろうナァ」

「正面だと? 言っておくが、後ろのアカーネの戦闘力は半人前として計算してくれよ」

「いやいや、ヨーヨークラスの使い手が2人もいれば、支えられんだろ。同時に側面から俺らも仕掛けるからよ」

「……そうか」


2人というのは、俺とキスティだろうか。キスティは紙装甲なので、支え手として数えるのは抵抗があるのだが……。


「何、不安ならこっちから盾使いを2人ほど置いていくからよ。な?」

「盾使いか。ありがたいが」


そこで名前を知らない『守りの手』の団員が口を挟む。


「団長、いいので? 盾役は貴重でしょう」

「といってもなァ。俺らは側面と背後。盾役はやりづらいだろ。それよりゃ、前線で派手に暴れて引き付けてもらった方が楽だろよ!」

「団長の判断なら、いいんですがね」

「よし、決まりだ。今の布陣で決行するぜ?」


ジンが同意を求めるように視線を投げて来たので、頷いてみせる。

盾使いで譲歩してもらったし、反対とも言い出しづらい。

……そこまで狙っての茶番劇じゃないだろうな?



***************************



「ピンスとワーリアールドだ。よろしくたのむ」


トゲの付いた大きな盾を抱えた男に話し掛けられ、握手を求められたので応じておく。

別にこいつらが指揮をしてくれても良かったのだが、俺を立てて、リーダーとして指名されてしまった。なので、一時的に盾使いの2人の指揮権を受け持つことになる。

といっても、盾使いの上手な使い方など知らないので、「俺の左右でうまいことやってくれ」としか伝えていない。

各々が亜人を引き付けてくれてもいいし、俺やキスティへの攻撃を庇ってくれるのも有難い。

自由に頑張ってほしい。


俺は部下達の自主性を重んじるタイプのリーダーなのだ。


……キスティに指揮させるって考えも浮かんだが、なんだか無駄に攻めっ気を出しそうで、不安な気もしたので頭の中で却下しておいた。


向かって左に崖があり、その崖下を道として本隊が通過する。

その崖の淵に亜人の集団がいるのだが、右から回り込んで側面攻撃するのがジンの部隊。

後ろまで回り込むのは、斥候役の人が主導して数人でやるらしい。


目的が本隊の安全にあるから、出来ればここで殲滅までしてしまいたい。だからこその包囲戦術である。


30体ほどいるというから、斥候役を足しても14人しかいない俺たちは、1人2体以上倒す必要がある。

まず正面から俺たちが仕掛けるから、一時的に前面、10体くらいの敵を引き付けることになる。

……大丈夫か? これ。


ゴブリン程度の相手ならともかく、2~3mある巨体に対して数的不利すぎるだろう。しかも、連携するというし。


仕掛ける手前まで草原になっているので、先制攻撃の奇襲は成功するだろう。が、バシャバシャなんかを用意しておく場所がない。

かなり後ろまで引っ張ってくれば可能だが、そうなると全体が間延びして包囲ができない。


仕方ないので真っ当な戦い方で倒していくしかない。

魔銃使えないって言ったのは、早まったか?

いや、この程度の相手、そろそろ切り札なしで対処してみせねばな。


まあ、冷静に想定してみよう。


まずは魔法で1~2体削ってから、『魔法使い』『剣士』の鉄板コンビで接近戦。

あちらが態勢を整えるまでに、2~3体はやっときたい。

他の奴らも何体かは倒してくれるとして、この時点で前面の10体のうち半数以上は削れているはずだ。残りは1人1体くらいで前線を支えられる。

その際、後ろからどれだけ亜人の増援が来るか。ジンたちがどれだけ効果的に側面奇襲を決められるかにもよるのだが、不確定要素が多い。思ったより楽なら『魔剣士』を使ってみるのも手だ。


あるいは単純に、最初に火力不足とならないよう使うという手もある。

『魔剣士』はレベルが低い分、ステータスは劣るのだが剣を介した放出系魔術の威力が爆上がりするようだ。

魔力があるうちに「魔剣術」で一気に削るのは、有効ではないだろうか。


……まあ、『魔剣士』を使ってみたいという動機でこじつけている部分もある。


「ご主人様、合図が来ました」

「ん」


側面組が配置に付いたようだ。

俺たちが攻撃を仕掛けることを合図に、作戦が動き出す。


「サーシャ、頼む」

「はい」


サーシャが弓を引き絞り、静止する。

たっぷり30秒も経ってから、ビョウと放つ。


放たれた矢は一番手前にいたゲッタンの眼に突き刺さったようだ。

亜人たちが慌ただしく動き始める。


サーシャの攻撃と同時に走り出していた俺、アカーネが武器を構える。


アカーネが魔投棒を振り、魔力波が群れの中央に着弾する。

俺も負けじと剣を振る。


魔力が剣を伝わり、一気に射出されるイメージを意識する。

薄いオレンジ色をした魔力波が1体の腕を裂き、ゲッタンが大騒ぎしている。


「もういっちょ!」


続けざまに何度も飛ばす。

最初は個体を狙っていたが、だんだんととりあえず撃つだけになってきた。

キスティが回り込むようにして群れに接近している。

盾使いの2人も、魔力波が飛び交う真ん中を避けるようにして、前線へ駈け込んでいる。


そろそろ俺も行くか。


「アカーネ、ここでサーシャと連携しろ。援護と後方警戒を頼むぞ」

「うんっ! 任せて」


戦場でもだいぶ落ち着くようになってきた。頼もしい限りだ。

身体強化魔法を掛け、地を蹴り前に出る。

ゲッタンはやみくもに迎撃するのではなく、隊列を組むことを優先したようだ。

流石に連携する亜人なだけはある。


キスティが端にいる個体に斬り掛かり、すぐに後退している。

後ろから追いついた盾使いと合流することを優先したのか。良い判断だ。あとで褒めておこう。

遠距離攻撃で完全に無効化できた個体は2体か3体。思った以上に少ないが、目に矢を受けたり魔力波で手足に傷を負ったりと、万全ではない個体ばかりだ。

『魔剣士』を『剣士』に替え、エアプレッシャー自己使用で突撃しつつ突きを入れる。


急激な加速に対応しきれず、腹でまともに受けるゲッタン。

すぐに剣を抜くと、袈裟斬りにしてエアプレッシャーで緊急後退。


かなり遅れて、いた場所に棍棒が下ろされる。

地面を粉砕し土煙が巻き上がる。

余裕の回避となったが、さすがに威力は馬鹿にならない。


投石を警戒して一応ウィンドウォールを展開しつつ、火球を創り出して周回させる。


「おらっ」


大振りになった攻撃をすかされ、態勢を崩した個体を狙って剣を構える。

しかしそれを邪魔するように別個体が棍棒を振り下ろしてくる。

仕方なく再度距離を取り、近くの個体に火球を1発お見舞いする。


「グラアアア!!!」


火球を受けた個体が思わずといったように叫び声をあげた。

火魔法は、熱いらしい。


膂力はかなりのものだが、動き出しが遅く、こまめにエアプレッシャーで離脱していればそこまで脅威じゃないか。

……やってみるか。


『剣士』を『魔剣士』に変更。

……いくぞっ!


剣に紅い魔力を纏わせ、斬り付けると同時に炎を放出させる。

『魔法使い』の魔法だけでは難しい操作だが、『魔剣士』のおかげ剣を介した魔力放出は容易い。

ゲッタンは腕を交差させてそれを防御したが、斬撃と魔力放出をまともに受け、盛大に血を噴き上げて思わず後ろに倒れる。

腕だけではなく、ガードしたはずの身体にもダメージを与えたようだ。


「便利じゃねぇか」


思わず笑みがこぼれる。

そして確信する。『魔剣士』の神髄はこれだろう。遠くからネチネチと魔力波を飛ばすのもいいが、剣技と合わさり「ガード不可の斬撃」を見舞う。対抗するには、攻撃を受けるのではなく避けるか、魔法防御を高めるくらいしかないのではないか。

『剣士』と比べるとかなり身体が重たい感じがするが、それはステータスの差だろう。『魔剣士』のレベルが上がっていけばある程度克服できる。


「おら、おら、おらぁ!」


コツを掴んだ「魔剣術」を使って何度も斬り付ける。

後ろにいたゲッタンが仲間を助けようと棍棒を突き出してくるので、身体を捻ってやりすごす。

危ない、危ない。


「しばらくは『剣士』をメインに、ここぞという場面で『魔剣士』を使うか」


距離を取りながらごちる。前方から何かが投擲され、ウィンドシールドを貫通して兜を掠る。


「チッ……投げて来たのは……なんだこりゃ」


てっきり投石でもしてきたのかと思ったが、サイズが違う。どうやら木を引っこ抜いたものをそのまま投げてきたらしい。

とんでもない膂力だ。


何個か連続して飛んでくるが、分かっていればエアプレッシャーで横に跳びつつ回避できる。

避けつつ魔力を練り、お返しにファイアアローを撃つ。


奥にいた1体に命中して、叫び声が辺りに響いた。

その左右でまた木の幹を持ち上げたのが見えたところで、右から人影が躍り出てゲッタン達を襲う。


「やっと登場かよジン」


前線のゲッタンの注意を惹きながら、左右に素早く目を配る。

左では盾使いがゲッタンの棍棒を正面から受け止めており、そのゲッタンをキスティが斬り付けている。2体ほどいるが、うまく立ち回っているようだ。

右の盾使いは3体のゲッタンを相手にじりじりと後退している模様。

しきりにアカーネの魔力波が飛んでいっている。

助力すべきかと考えるが、突出した形になったゲッタンに、ジンの部隊が背後から攻撃をしはじめた。

とりあえず、正面の3体を相手どれば良いようだ。

1体はもうほとんど動けていないので、残り2体。


それにしても、想定が狂ったな。

そこまで戦いづらい相手ではないが、タフさがハンパない。

斬れども撃てども、なかなか戦闘不能にならないのだ。

最初に遠距離攻撃で倒した個体も、起き上がって参戦してくる。


俺が倒した1体と、キスティが斬り倒した1体くらいしか倒れ込んでいるものがいない。


最大30体いるらしいから、残り28体……。

魔力が持てば良いが。


3体中、2体が大振りに振り被ったのでそれを最小限で避け、残り1体が遅れて振り被ったところで飛び込み、喉を斬る。血が飛び散り、膝を突く。


激高したゲッタンがもう一度棍棒を振り回すが、それを避けて小手。棍棒を取り落としたところで回り込み、もう1体に対する壁にする。なおも手で掴もうとしてくるので火球で防御し、胸の辺りを一突き。そのまま魔法を連打すると、煙を上げながら前に倒れた。


さて、残り1体。おっと、また木が飛んできた。丁寧にバックステップして見送る。


「グリャォ……!」


もう1体と睨み合う。

大振りは当たらないと気付いたのか、あちらも慎重に出方を窺っている。


そこへ、顔に矢が刺さり大きなスキが生まれる。

魔法を纏わせた剣で首から胸にかけて一撃。「強撃」も発動した一撃は、ゲッタンにとっても致命傷を負うものだったようだ。


倒れ込む巨体の音を聞きつつ、戦況把握。

キスティと盾使いは順調に2体目を倒し、最後の1体をボコっている。

右の盾使いと、援護に来た部隊は3体のゲッタンをまだ相手にしているが……あ、飛んで来た木が当たって1人、槍使いが吹っ飛んでいった。大丈夫かよ?


3体のうち2体は身体中ボロボロで何とか立っているようだったので、まだ元気な1体に魔法を投げて注意を惹く。

こちらに注目が来たことを確認し、方向転換し森の中へ。


さっきから木を投げているやつにファイアアローを投げ、急接近。

魔力を纏わせて一撃加え、離脱。


木を投げていた部隊のほとんどはジンたちと交戦状態に入っているので、こいつだけだ。

これでもう、投石ならぬ投木を気にせずに戦えるはずだ。


魔力を確認する。

残り20を切っている。

魔剣術、まだまだ燃費が悪いな。


「ヨーヨー、残り半分だ!」


右手から、アラゴのものらしい怒鳴り声が聞こえた。

魔力も半分だが、敵も半分か。

『剣士』に固定して、「強撃」で戦うスタイルに切り替えて省エネで戦えば魔力切れには至らないだろう。


剣を握り直して、再度敵を睨み付けた。



***************************



体感では3時間は戦っていた気がしたが、1時間も経っていなかったらしい。

目の前には積み上がった亜人の死体。


「ふう、しんどいな」


アラゴが息を吐きながら最後の獲物を積み上げた。

ジンたちは木で飛ばされた奴と、まともに棍棒を受けた2人が骨折しただけで、死者はいなかったらしい。

亜人のなかでもタフなやつが前面に出てきていたので、迂回組の相手取ったのは小さな個体やそこまで力がない個体だったということ。

結局一番危険なところは俺が担っていたわけだ。


ジンはワリィワリィと謝って、素材は半数近く俺のものになった。

といってもジシィラ達の馬車に載せていくわけにもいかないので、魔石や目玉など軽い部位のみ取るわけだが。


「うちの斥候に先に報告に戻ってもらっている。しばらくは素材でも剥ぎ取りながら、ここで待機だな」


ジンはゲッタンのモツを鉄板で焼いて食っている。

珍味らしいが、なんか気持ち悪いので俺は遠慮しておいた。

食欲魔人のサーシャが「遠慮します」と断っていたので、相当クセのある味のようだ。


「もっと奥の方まで捜索しなくていいのか?」

「余力がありゃ、な……。だがとりあえず、報告に上がってたのは排除したし、良いだろ」

「そうか」

「褒美はあるかね?」

「褒美って、言われたもんを倒しただけだろ?」


護衛代のなかに含まれているんじゃなかろうか。


「だが、危険な魔物を相手にすりゃ、褒美が出ることもあるだろう? 実際、こいつらが残ってたら、下の道を通っているうちに馬車に木が投擲されてたかもしれねぇんだ。それを考えたら、ボーナスの1つも欲しいね」

「それは、そうだが」


アカーネが用意してくれた、魔力の回復を早めるという薬湯を呑みつつ雑談にふける。

爽やかなハーブのような香りがして、俺は嫌いではない。

薬草の知識は、ポーションについて調べていると自然と知ることになるらしい。魔道具だけではなく、薬品とか素材とかの専門家に育ってくれるといいな。


「キスティ、今回はよくやってくれたな」

「は、はい!」


キスティはほっとしたような笑顔だ。

キリっとした女戦士がそんな表情を見せると可愛いが、狙われそうだからあまり外で兜を外さないでほしい。


「主、この前の件は許してくれたか?」

「この前って、賊が襲撃してきたときだろ? だからとっくに許したってか、そこまで怒っちゃいないよ」

「そ、そうか」


キスティはまだ何か言いたげだったが、それ以上に言葉を重ねる事はなかった。おそらく、怒られ慣れていないのかもしれない。

ずっと、いいとこのお嬢さんをやっていた奴だからな。

狩りの後の充足感を感じつつ、薬湯をズズッとすすった。


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