第8話 魔法

安宿の一室で、羊平は明日の初ゴブリン狩りの準備をしていた。


「こんなもんかな?」


いつものリュックに、水筒、干し肉、ナイフ、木槍。毛布や替えの着替えは宿に置いていく。

異空間には、お金と紙や筆記用具を入れている。

紙なんかは今後のために買ってみたが、地味に高いので貴重品扱いで異空間に入れている。


魔銃も異空間に入れる。

話した感じだとエリオットたちは悪い人ではなさそうだが、油断することはできない。悪気はなくても、ピンチに陥ったならば俺より自分の女たちを優先するであろうし。


最後の切り札として、魔銃はいつでも、手を縛られていても異空間から取り出せるように軽く練習しておく。


物のチェックを終えたら、次はステータス確認だ。なんだかんだと今日は細かくチェックする時間がなかった。


************人物データ***********

ヨーヨー(人間族)

ジョブ ☆干渉者(6↑)サバイバー(4)

MP 6/13

・補正

攻撃 G

防御 G+

俊敏 G

持久 F-

魔法 G

魔防 G

・スキル

ステータス閲覧Ⅱ、ステータス操作、ジョブ追加Ⅰ、ステータス表示制限

消化機能強化

・補足情報

なし

***************************


午前中に魔銃を使っていたので、MPは中途半端だ。どうやら時間経過で回復する模様。


そうだ、他のジョブは解放されたかな。サバイバー(4)をポチっとしてジョブ選択候補を表示。


旅人(3)

市民(1)

ごろつき(1)

サバイバー(4)

短剣使い(2)

魔法使い(1)

魔銃士(1)


ほおおおっ!? 魔法!? 魔法使いきたー!


どこで条件を満たしたのか分からないが・・あるとすれば魔銃を使ったことか。

あれでいいのか。

とにかく魔法だ。魔法があるなら使わざるを得ない。


さっそくセットしてみる。


************人物データ***********

ヨーヨー(人間族)

ジョブ ☆干渉者(6)魔法使い(1)

MP 13/20

・補正

攻撃 G

防御 G

俊敏 G

持久 G

魔法 G+

魔防 G+

・スキル

ステータス閲覧Ⅱ、ステータス操作、ジョブ追加Ⅰ、ステータス表示制限

火魔法、水魔法、土魔法、風魔法

・補足情報

なし

***************************


おお。ゲームでもお馴染みの4元素魔法ってやつかな。とりあえずやってみよう。


火、火、火・・


集中して、人差し指の先に火が灯るイメージを強くしていく。何も起こらない。何も起こらない。バチッと火花が散って終わり。


・・えっこれが火魔法?


気を取り直して、水、水、水と念じてみる。


何も起こらない。


こういうときはアレだ。

よくあるのが、空気中にある水分を集めて水にするイメージ・・おっ!チョロっと水出た。


しかし疲れてこれ以上出せそうにない。死ぬほど疲れた。これが魔法か。


************人物データ***********

ヨーヨー(人間族)

ジョブ ☆干渉者(6)魔法使い(1)

MP 4/20

・補正

攻撃 G

防御 G

俊敏 G

持久 G

魔法 G+

魔防 G+

・スキル

ステータス閲覧Ⅱ、ステータス操作、ジョブ追加Ⅰ、ステータス表示制限

火魔法、水魔法、土魔法、風魔法

・補足情報

なし

***************************


あ、MPがゴッソリ減っている・・。

燃費悪っ!

そうか、スキルがあればすぐにファイアーボールとか撃てるようなシステムではなくて、習熟していかないといけないということかな?

とにかく、今は魔銃の方がずっと使えるということは良く分かった。


魔銃士の方も確認しておく。


************人物データ***********

ヨーヨー(人間族)

ジョブ ☆干渉者(6)魔銃士(1)

MP 0/16

・補正

攻撃 G

防御 G

俊敏 G+

持久 G

魔法 G+

魔防 G

・スキル

ステータス閲覧Ⅱ、ステータス操作、ジョブ追加Ⅰ、ステータス表示制限

魔撃微強

・補足情報

なし

***************************


魔銃士のスキルは魔撃微増か。魔銃で攻撃するときに威力が微増、かな?

悪くはない。

とりあえず明日はサバイバーに戻しておくか。サバイバーと言ってしまったし。


翌日、普通の町人服をローブで誤魔化し、木槍を携えて傭兵ギルドへ向かった。


エリオットたちは先に待っていたようで、にこやかな笑顔で挨拶された。


「やあ、元気かい!いいゴブリン日和だね」

「えーまあ、そっすね」


昨日に増してエリオットのテンションが高い気がする。

何かいいことでもあったのか。

きっと昨日奴隷たちといいことでもしたに違いない。


「ふむ、君、防具は着けてないのかい?」

「あ、まだお金がちょっと・・そろそろ買おうと思っているけど」

「そうかい」


少し残念そうにしながらも笑顔を崩さない。まあ、前衛が防具着けてなかったら使いづらいか・・。


「まあいいか。今日は僕が中央、マリーが左、君が右で前線を組もう。少々の怪我なら、パッチが治してくれるから安心したまえ!」


『癒術士』か。それがあるだけでも、パーティを組んだかいがある。


「『癒術士』ってのはなるのは難しいのか?」


ゴブリンの領域が近い、北門へ移動しつつ質問する。


「それなりに、かな。なること以上に、使いこなすことが難しいジョブだね」

「使いこなす・・」

「前衛のジョブなら、スキルは発動すればそれでいい。魔法使いなんかも、魔法理論とかいろいろと勉強する必要があるが、発動できるようになれば大丈夫だろう?」

「ふむ」

「だが、癒術はどういった症状について、どのようにスキルを働かせるか、常に意識しなければならない。スキルが発動できるようになって終わり、ではないのさ。だから、頭の良い人でなければスキルが無駄になってしまうのさ。パッチのような頭のいい子でないとね!」

「パッチ、すごいんだな・・」


後ろからしずしずと付いてくる女衆に目を向けると、小柄なパッチが少し照れたように目を伏せた。

それからエリオットの言ったことを自分の頭で咀嚼してみる。

普通は発動できるようになればいい、しかし『癒術士』はそこから更に1ステージあるから、使いこなすのが難しい。


ということは、スキルは保持しているだけでは発動できず、練習が必要。なかには癒術のように、発動後について練習する必要があるスキルもある。といったところだろうか。

『魔法使い』のスキルがショボかったのも、自分が今まで魔法理論の勉強や魔法スキル発動の練習をしていないから、ということか?

なるほど。


「君はずっと『サバイバー』でやっていくつもりなのかい?」

「いや、まだ駆け出しだから、情報収集をしてから考えようかな、と思っているんだが」

「そうかい? ジョブは早目に決めてしまったほうがいいけどねぇ」

「・・そういえば、トリエシエラの『性術士』ジョブを、戦闘時だけ戦闘用ジョブに変更するといったことはしないのか?」

「そういう人もいるけどねぇ。僕はしないよ」

「何故だ?」

「非戦闘用のジョブでも、レベルが高ければ補正値も大きい。無理に変更するより、ジョブを1つに絞ってやった方が無難さ。それに、いちいち狩りに出るたびに教会に金を払っていたら、いくら金があっても足りないよ」

「・・!! そうか、確かに言われてみればそうだな」


ごまかしつつ、また1ついい情報を聞けたと思う。


教会、でジョブを変更するのか。

そうか、『干渉者』のジョブがなければ普通は自分のステータスも閲覧できないとすると、ジョブを自分で変更できるはずがない。

第三者のジョブを変更できるジョブなり道具がある、と考えるのが自然か。


これは、かなり重要な情報を聞いた気がする。さっそく明日にでも教会に行くか・・いや、その前に図書館でジョブについて調べてみるか。

ジョブについての一般常識みたいなものを俺は知らなさすぎる。


ほどなくして北門へたどり着き、定住証明証を預けて手続きをして外に出ると、エリオット達が待っていた。


「さあ、出発しようか」


そこからはもう安全地帯ではない。

エリオットを先頭にして、矢印型の陣形になりながら北西に移動する。

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