十一、封じの枷

見張り男はそこらに転がっていたロープで縛り上げておく。


「ところで、貴方達は誰?見たところ、冒険者のようだけど」


作業が済んだところで少女に話しかけられた。訝しげに全身を見回されて落ち着かない。というか名前を聞くなら先に名乗るのが礼儀じゃなかろうか、と溢れそうになったところでイリスが先に口を開いた。


「私はイリス。こっちはカナメくん。盗品の捜索依頼でここにたどり着いたの。貴方は?」


見ず知らずの相手にすぐ素性を明かすのはどうかと思う。でも言ってしまったものは取り消せない。仕方ないので黙って頷いておく。


赤い少女は僕らを観察しながら、


「私はフレアよ。フレア・フェアブレンネン」


そう名乗って目を細めた。

しかし、へぇ、よろしくねなどと特別な反応もせず流す僕らに、様子を伺っていた彼女は、はぁとため息で返す。


「守護者に数えられるフェアブレンネンの名を聞いてノーリアクションだなんて。貴方達、近隣の出身ではないのですわね」

「えぇっ守護者……!?」


目的の人物にこんなところで出会えるなんて。イリスの顔を見やると彼女も驚いている。探しているのは彼女じゃないのか?それとも、実際に会ったのは初めてだったのか。


「君が探してたのは彼女じゃないの?」

「えっと、男の人のはずなんだけど……」

「私は赤色を司るフェアブレンネン家。貴方が探しているのは他色の血筋の方かもしれませんわ」


それにしても守護者なんて厳つい肩書きなもんだから、もっとおじさんおばさんくらいを想像していた。おっと、ここで会話を弾ませている場合ではない。


「何はともあれ無事助けられた事だし、ここを出よう」

「待って、この封印錠が外れないと、私困りますわ」


そういえば彼女の両腕には何やら装飾の彫られた手錠がつけられている。何ぞやと聞けば、魔術師の術発動を阻害する呪術が込められた拘束具らしい。どうにか外せないかと調べると鍵穴を見つけた。


「どこかに鍵があるはずですわ。その見張りの殿方は持っていないの?」

「所持品は一通り調べたけど持ってなかったと思うよ」

「そんな……このガラクタの山から探せというわけですの!?」

「それか盗賊の誰かが持ってる可能性も……いずれにせよ、鍵を見つけるのは現実的ではないよね。壊すとか、他の方法でどうにかならないかな?」

「『解呪』は魔術の中でも特殊よ。魔術師でさえそう巡り合うものではないのに、解呪のできる魔術師なんて……」

「そいつは残念だな!嬢ちゃん一生そのまんまかもしれねぇぜ」


僕らが思案していると、突然、耳障りで豪快な声が僕らの会話を打ち消した。

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