4.5
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夜までお預けですか。
言われた通り、私は犬かもしれない。
お座り、伏せ、お手、お預け・・・全部彼に言われるままだ。
実家で飼っている芝犬のクーは、今ではすっかり老犬だけど、子犬のときは躾に苦労したなあ。かわいかったけど(いや、今でもかわいいよ)。
んー、実家のペットのことを思い出すのは現実逃避かな。
だって、ほんとにこの急展開、意味わからないなと思う。
そもそも私は性的な話をするのが苦手だ。
割と古風な田舎の家で育った一人娘。兄弟姉妹から性の知識を得ることもなかった。いや、知識ばかりは増えていったけど、その・・・リアルな話というか、実体験の話はレディースコミックと同じくらい別世界の話だ。
高校のときに、私から告白して付き合った彼氏がいた。告白するまでは少女漫画で、OKを貰ったあとは成年漫画(彼にとっては)。
私は恋に恋していて、彼は年相応のやりたい盛りだった。
私は「エッチは結婚してからするもの」と思い込んでいたせいで、彼の要求を拒み続けて、結局振られてしまった。それが高校2年の冬。
あとは受験勉強。そのまま女子大へ。
女子大は楽しかったけど、仲良い女の子の友達とばかり遊んでいた。男の子は別世界。
卒業してから、就職のために実家を出て、初めての一人暮らし。
中小企業の事務で働いていて、職場の女の子たちとは仲がいいけど、付き合ったとかやったって話にはついていけない。
男性社員からの「ご飯行こう」とか「飲みに行こう」は意味がわからない。
私の性の冒険は、フィクションと自慰。
「大切にしていたはずの処女」はおもちゃに捧げた。
でも、可愛がってたイルカちゃんが最近調子悪くて、動いたり動かなかったりなので、新しい子ほしいなぁ・・・と週末の夜に近くのお店へ向かった。
週末には見たかった映画を一人で見に行って、夜はちょっとだけえっちなこと、しよ。
いつも通りの週末。
・・・のはずだったのに。
彼は、気づいたときには私のパーソナルスペースに完全に入っていた。
えっと、お弁当屋さんの人だっけ?
あまりにも普通に「こんばんは」なんて言うから、私も普通に返してしまった。
男の人がこわいのは、じわじわと遠くから入ってこようとするのがわかるからだ。
それを上手くいなして、上手い関係を作るのが大人の女だとか言われてもピンと来ない。
でも彼は、出会ったその瞬間から、私の中にいたんだ。
そのときに世界がふわふわしたみたいに変わって、なんだか現実感がないまま、私は彼を部屋に招き入れた。
あぶないとか、おかしいとか、もちろん常識的な私も顔を出すけど、そんな声に構っていられなかった。
目の前に、男の人のアレがあった。
硬いし熱い。脈打ってて、人工物でできた今までのペットちゃんたちとは全然違ってた。
口に含むと、匂いもして、頭がくらくらした。
口を動かしたら、時々喉に当たって、うぇってえずきそうになったけど、そのときに「私は我慢することも好きなんだ」って思った。
精液の味、すごかったなあ。
苦くて生臭い?けど、頭の中までとろけそうな味。
それに、口の中を爆ぜる勢いもすごくて・・・。
身体、見られたり触られたり舐められたり・・・一人じゃ絶対こんなのできなくて、他人の息の熱さとか、ああ・・・。
「おちんちん、ほしいなぁ」
って声に出したら、なんだかすごく頭が悪くなったような、真面目って仮面から少し解放されたような、そんな気持ちになって。
夜が待ち遠しくて、
私は自分で自分を慰めた。
本物を知ったその日に買ったおもちゃは封も開けてなかった。
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