無人島に生きる変態イケメン

一章 チュートリアル的な何か

第一話 変態イケメンだけど何か質問ある?

「ふっ、今日もイケてる」


 さすが俺。どこまでも端整に整った顔立ち。スタイリッシュな洋服も相まってまるで美の男神のようだ(自己視点)。


「兄貴キモっ。私の鏡使わないでくれる? 早くこの部屋から出てって」

「釣れないことを言うなぁ、妹よ。本当はお兄さまカッコイイ!! とか思っているんだろう?」

「死ね」


 強烈なローキックが決まる。身体に迸る痛みと快感。うむ、やはりこれが無いと一日が始まらないぜ。ツンデレ妹最高。


「今何を考えているのか顔みたら分かるからね! ツンデレじゃないっつーの!」


 がはっ! まさか金的を狙ってくるとは......しかし、この痛みも妹に蹴られたと思えば痛くない。むしろ、さっきより気持ちいい。


「殺す!」


 おっと、妹がガチ怒してるから逃げなければ。妹がお料理を作ってくれないとお兄さまは餓死しちゃうからね。


 アパートの一室で兄妹二人暮し。俺が学校に行きながらアルバイトで日銭を稼ぎ、妹が家事全般を担当する。まるでラブコメのラノベみたいだね。うん、女の子降ってこないかな。


 ちなみに両親はちゃんとラブコメ設定のように外国にいる。尊敬すべきマイファーザーが中東のテロを制圧してる。マミーはそこの国へボランティアで学校の教師をしている。俺も将来は人の為に働こうとは思っている。あー、可愛い奥さん欲しいな。両親は美男美女だから、俺も憧れるぜ。


 とりあえず冷蔵庫から牛乳でも取ってくるか。高身長イケメンになる為にな。後、1センチで180なので遠い未来では無いだろう。低身長の彼女と身長差カップルを、ぐへへ......いや、高身長彼女もありだな。


 何も考えずに冷蔵庫を開けると、中に草原が広がっていた。閉める。......おかしい。確かに冷蔵庫を開けたはずなんだが。もう一度開ける。草原だ。涼しいそよ風。......あんれぇ? 牛乳はどこだい? 俺は高身長イケメンにならなきゃ行けないんだけど。


「どう? 凄いですよね?」


 後ろから突然聞こえた声。妹のものでは無いが、少女の声だ。誰だ、いつの間に。いや、妹のレズ友かもしれん。しかし、妹を渡すのは俺よりイケメンか美人かつ天才だけと決めているのだ。つまり、いない(ナルシスト思考)。さぁ御顔を見せたまえ!


「全く。普通に妹の友達と考えれば良いものを、レズ友とか......。まぁ、別に良いんですけどね」


 な、なぬ! こいつ、いや、この子美人力53万だと!? 美の男神(ナルシストの自己視点)である俺と同等とは、こいつもしや美の女神!?


「神ってところは合ってるけど、美の女神では無いですよ? そう言って貰えるのは嬉しいですけど。それに私の話聞いてませんよね」


 さっきから、俺が言ってないのに会話している? 心を読まれてでもいるのだろうか。もしも、本当にそうならガチの神様かもしれない。それを確かめるには......あれしかないな。ゴメンなレズ友ちゃん。よし、俺の頭の中でちょっと体張って貰うぜ。


「え? ちょ、ちょっと待っ、そんなぁっ、えぇ! 初っ端からそんなに!? だ、ダメだよダメだってぇ!!」

「ねぇ誰の声? もしかして、女でも連れてきたの? しかも、朝からなんて馬鹿じゃないの?」


 丁度よく入ってきたな妹よ。今、お兄さまの脳内では、レズ友ちゃんと妹の激しい愛が繰り広げられているのだ。断じて俺ではない。流石に失礼だからな。くそ、この妄想現実化しないかな。


「うわぁ。やっぱり女だし。ゴミ兄貴鼻の下伸ばすな。ハァハァ言うな気持ち悪い」

「ひっ! 私を攻めないでぇ! 激しスギィ!」

「何この人。兄貴と同じで頭逝ってんのかな? 私を見てそんな事言うなんて死にたいって事でいいよね」


 うーん、妹は脳内から消そう。これ以上この子に失言されても困るし。それに流石に妹には興奮しないからな。代わりにクラスメイトの伊集院さんに交代だぜ。うん、さっきよりいい。


「え? 何? 取っかえ引っ変えなの? あぁっ♡」

「変態だこの人。ヤバい人じゃん。兄貴、いつ連れ込んだ」


 俺は突然、美の結晶を見つけただけだ。


「知らない人。お前のレズ友だと思ったんだけど」

「死ね粗大ゴミ」


 流石妹。罵倒は容赦ないが人前で蹴らないからな。しかし、粗大ゴミは死なないんだぜ?


「どうでもいいこと考えてんのは分かってる。で、この人何なの?」

「少なくとも、俺が牛乳取りにキッチン入るまでは居なくて、冷蔵庫でおかしなものを見たら、ダイニングから声掛けられた」

「ごめん意味わかんない」

「俺も」


 ていうかこの子、何気に俺の心読んだままだな。やはり神なんだろうか。同期にはいなかったはずだけど(暗に自分も神だと言いたいだけ)。


 俺の思考が他のことに回されていたせいか、神?であるこの子はもう復活していた。くそ、精進しなければ。もう一度脳内アタックだ。


「こほんっ」


 顔を赤らめながら咳をする神(暫定)。やはり効いているんだろう。


「まず言っときますけど、私は変態じゃないです」

「いや、変態でしょ? あんな事言ってて変態じゃないとかもう無理だよ」

「本当に変態じゃないんですっ! .....そして、私はお兄さんの方が考えている、神という存在です」

「やっぱりか.....ようこそ、美の同士よ」

「いや、別に同士なんかじゃないです。その神である私がここに来た理由が」

「理由がなんなの?」

「分かったぞ。冷蔵庫だな」

「変態思考の貴方にしては、よく頑張りました」


 失礼な。変態な事以外できないんじゃなくて、しないだけなのに。実は出来る男ってカッコイイよね。


「冷蔵庫がどうしたの? イマイチ状況が掴めてないんだけど」

「見てくれば分かる。お前も驚くはずだ」


 妹がキッチンに入り、冷蔵庫を開ける。すると、「え.....マジか」という声が聞こえてきた。驚いたか妹よ。俺は驚いたぞ、とてもな。


 妹がこっちに戻ってきて一言。


「牛乳がないんだけど!?」


 だよな。牛乳どこ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「.........という訳なのです」

「ふーん。で、私達兄妹にこの草原がある、無人島を開拓して欲しいと」

「そういうことです」


 妹が牛乳が無いことを騒いだ後に、神に説明して貰ったのだが、簡潔にまとめると、冷蔵庫は異世界の無人島の草原に繋がっているらしい。また、俺達兄妹はその無人島に国を建てて開拓して欲しいと言うことらしい。わけわかめ。


「なんでそれに選ばれたのが私達兄妹なの?」

「.....正直私も分かってないんです。100%当たる占いの結果なだけで」

「えぇ.....私達が失敗しても知らないからね」

「大丈夫です。この占いは必ず当たりますから」

「そっ。まぁやるけど。で、こういうのに定番のチートスキルとかないの?」

「もちろん完備してます」

「チートスキルとはなんだ妹よ」

「チートスキルって言うのは、その世界の法則を崩すレベルに凄い能力みたいなものの事。ラノベ好きの兄貴なら持ってるんじゃないの? チート系の本」

「うーん、俺はラブコメ部分しか読まないからなぁ。そう言われてみればあったかも」

「なら、説明めんどいから自己解決して。で、神様そのチートスキルは?」

「そうですね、簡潔に説明させてもらうと、お兄さんの方が戦闘能力と人口を増やす為のガチャ能力。妹さんの方が生産能力と防衛能力ですね」

「へぇ、生産無双かぁ。うん、いいかも」

「スキルの詳細についてはあちらの世界でステータスと唱えれば出てきますので」


 ついていけないな。まさか、妹がこういうものに詳しいとは。自分磨きに集中していたせいで、その手のゲームには詳しくない。でも、大人の為のゲームには割と詳しい。自分磨き(意味深)をしていたからな。


「......基本的な部分は妹さんに任せますので頑張って下さい。冷蔵庫の中に入るとチュートリアルが始まりますので、よろしくお願いします」


 そう言って、神様は消えていった。くそっ、写真ぐらい撮っておけばよかった。


「ところで本当にやるつもりか?」

「もちろんだよ! お兄ちゃん今日は早く帰ってね!」

「お、おう」


 唐突に出てきた妹のお兄ちゃん呼び。機嫌がいいのだろう。これを聞くと、お兄さま呼びじゃなくてもいいやと思える。My sister is an angle.



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