第2話 カルトハンターと化け物
時々、カルトハンターをしていると一部の依頼人に「お前たちは神話生物が怖くないのか」と聞かれることがある。また、多くの一般の方々や知識人が、まるで化け物と戦い撃退する我々をみて、まるで我らが命知らずの狂人であり、我々こそが神話生物の一種であるかのように見られる事すらある。
まあそちらの言いたいことがわからないこともない。確かに我々カルトハンターが自ら神話生物や危険に近づいていっているのは確かだ。ある時は自分の何倍もの体格もある化け物へと突っ込んだり、接触したり、そんな背筋を凍るような化け物と会話し、使役することも珍しくない。そんな姿を一般人が見てしまえば、我々が化け物を制する化け物であるかのように思われてしまうのも仕方ないと思う。しかし、だからと言って、我々カルトハンターの殆どは外宇宙やカルトクリーチャーへの【恐怖心】を決して忘れたことがない、それだけははっきりと断言できる。
そう、それはたとえどんなに魔道に優れ、優れた資質を持ち、邪悪への知識があったとしても、我々は神話生物や邪神への恐怖を一瞬たりとも忘れたことはないし、あるいは侮って相手するなんてことは決してない。少なくとも私が見てきた範囲ではそうだ。
では、なぜ私たちがわざわざそんな化け物どもと長く関わるようなこんな職業についているか。それこそ、まさしく我々こそが普通の人よりも【いっそう臆病】だからだと思っている。なぜなら、私自身がそうだからだ。
少し筆者の過去についてお話させていただくと、私は俗にいうよくいる不幸な奴であった。私の生まれた場所はいわゆる地方の怪しい辺境と言うやつであり、わかりやすく言えば魔境、もっとわかりやすく言うならば神話生物が身近に闊歩する、そんな場所で生まれてきたのだ。無論、そんな町であるがゆえに多くの村の住民はだいたいは3種類に分かれる。そう、適応するか、忘れるか、もしくは死ぬかだ。
しかし、そういう環境にいてなお、そういう化け物相手に適応する程の協調性もなく、自殺する勇気すらなく、ましてやそれらを見て見ぬ振りができないほど半端者が私のような【カルトハンター】の末路である。絶対に敵わないとわかりながら【神話生物】についての対抗策を考え、身を壊す毒だとわかりながら【超常現象】への知識をためる。そのような無駄と諦めの悪さが極まった社会不適合カルティストこそが我々【カルトハンター】の本質なのである。
さて、ここまで長々と書いたことに対して、諸君らは私に対して一種哀れを感じるかもしれない。だが、心配はご無用。心の恐怖を乗り越えるのはいつだって情熱、努力、知識そしてちょっとした休息だ。何よりも今こうして私が生きて呼吸し、呑気にこんなエッセイを書けているのが何よりの私が元気な証拠というものである。昔は只々無力感と困惑しか感じなかったが、人間やろうと思えば案外やれるし、恐怖ばかりの人生ではあるものの時々は幸せだって感じる程度にはまともな人生を送っれているつもりだ。
恐怖への逃避で入ったこの業界ではあるがそんな業界内でも幾人かの友人はできたし、趣味や多少の精神的余裕も持つこともできたし、なによりもある程度恐怖に打ち勝つ力はあることができた。
最も私自身が真に人間のままかどうかは甚だ疑問ではあるが、それでも私は今現在の自分にそこそこな満足感は得られている、そういう意味ではこの道に入って後悔の類はしていないつもりだし、臆病な新米カルティストの方々もぜひぜひ尾道に入るなら積極的に足を踏み外していただきたいものである。半端だと死ぬが、肩まで潜ると生ぬるく意外と居心地は悪くはないものだ。
さて、以上を踏まえて、ここまでこの文章を読んでいる皆さんにどうしても伝えておきたいことがある。
それは【カルトハンター】たとえ、魔法やら化け物に詳しいからと言って、君たちと同じ心と体を持つただの人間だから、無茶な扱いはやめてね!ということだ。そう、例えば、怖いからという理由でこちらを猛獣用の檻に入れて対応しようとしたり、カルトパワーが見たいからと言って突然こちらに向けて発砲したり、ちょっと挨拶に行っただけなのに生贄を渡されたりとか、こいつらは人のことをなんだと思っているのだ。果てには観光目的の散策中になぜか旧支配者をけしかけられたり、挙句にはそれが制御できないかったから何とかしてくれだと?冗談はよしてほしい。こちとら、平時ではただの一般人である。何事にもちゃんと加減やプライベートというものがあることを理解するべきだ、まともな一般常識を持っているならそう対応してほしい。そう一般カルトハンターである私は思うのであった。
というわけで、この記事を読んでくださった皆様に、カルトとカルトハンターへの偏見が少しでも減りますように!いあ!いあ!くとぅるふ ふたぐん!!
週刊・僕らのネクロノミコン どくいも @dokuimo
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