第7話 魔王と勇者
「魔王はさ、魔族の王様なの」
そうミカゲさんは語り始める。
「魔王はこの世界に5人居たの。それでみんな仲良く過ごしていた。
でもそこにある1人の人間が来てこう聞いたの」
「この中で誰が一番強いのか」
それで5人は戦ったらしいヒマだしという理由で
戦いは三日三晩続き、魔王レギルザインという魔王が勝利したのだという。
「レギルザインは中央大陸に住んでいて戦ったのもそこだったんだけど
私を含めた4人は負けたのが悔しくてさ~、次は負けないとか今度こそ勝つって捨て台詞はいて自分の住む他の大陸に帰っていったんだよね。」
あの時はホント悔しかったなぁ~言葉ではそう言っているがミカゲさんの顔はとても楽しそうに見えた。
「それから数日してある知らせが届いたの。レギルザインが討たれたってね。それから中央大陸も消滅したとか言ってたわ」
大陸が消滅!?一体何を言ってるのか実感が湧かない。
魔王とはそれほどの存在なのだろうか。ならミカゲさんも...
そこで「フフフ...勇者アデリウス様が魔王を倒したのです!」
声高々にユーアが言った。
「その通り。勇者アデリウスが攻撃したの。疲弊したレギルザインを相手に世界中の名高い剣士魔法使い、そして他の4人の勇者を引き連れてね」
その瞬間光の剣が飛びミカゲさんに当たり消滅する
ユーアが魔法を使ったようだその瞳は
「ハハハッ痛いなー怒んなって!」
笑うミカゲさん、服は破れた様だがその体には傷すら無かった。
「その様なデマかせを言うな!人を惑わす怪物め!アデリウス様は一人で挑まれたのだ!それを卑怯なレギルザインが大陸の人々を人質に取り自爆を──」
そこまで言うとユーアが静かになった
見ると寝ているみたいだ
うるさかったからとアルカが言う
どうやら魔法で眠らされた様だ。
「あんたもレギルザインと戦ったんでしょ?」
「さぁね」
「ま!これが今の世界と魔王についてだよ。私はっていうか私もあなたと同じで異世界転生したの。誰にも偉そうにされない位偉くなりたいって神様に言ったら魔族として生まれ変わっててビックリしたものさ。」
一つ聞いても良いですか?と言うとなぁに?とミカゲさん。
「この城の他の、魔族の人はどこに行ったんですか?それになんでそんなことに...」
それじゃ2つじゃんと笑うミカゲさんが悲しそうに答えてくれた。
「私は武器を司る魔王だからね。友達や仲間...配下には魔剣や魔法の防具を持たせてたんだ。みんなその6人組が相手でもヨユーで勝てる強さだったんだけど...その魔法使いにやられてね。」
そう言いアルカを見る、アルカはそんなに強いのだろうか?
「その魔法使い即死魔法と補助魔法、状態異常魔法を極めててね」
そう言い苦笑するミカゲさんに極みになんか達していないと言い返すアルカ
どうやら即死魔法によって城の魔族は一掃されてしまったようだ。
その時だった、ダンッ!と扉を蹴り開けて4人組が入ってきたのだ。
「もう良いだろう?殺させて貰うぞ!」オーリンが言い
アルカがユーアの魔法を解いて目覚めさせそして謝っている。
「さぁ殺せ!」
オーリンが自らの剣を僕に渡してきた。
え?僕がやるのか?
目覚めたユーアが言う、魔王は勇者にしか殺せない。だから殺して下さい!と...
殺せ!さっさとしろ!殺せ!ヤレ!コロセコロセ...
6人組が僕に命令してくる。
「でも...」
そう言いかけた時にミカゲさんが話しかけてきた。
「構わないよ。拷問にはもう疲れたんだ。せめて一撃で終わらせて欲しいけどね。」
僕がやらねばこの拷問がずっと続くのだろう。
やりたくはない。
同じ異世界転生者だし
やりたくはないけど...
「わかりました。」
短く決意を込めて言う
人間と同じだから心臓を貫いてというミカゲさん。
ごめんなさい。そう言って力を込めた剣はミカゲさんを貫く。
そして僕にだけ聞こえる様な小さな声で囁いた。
「ありがとう。生まれ変わったらお礼はするからさ。先に行って待ってる。さようなら勇者」と───
アハハハハハ!と大きな笑い声が後ろから聞こえてきた。
ついにやったと魔王を殺したと
振り向くと6人が歓喜の声をあげている。
そしてこちらに武器を向ける
何故?そう考える頃には激痛が走っていた。
オーリンによる一撃。
オーリンの持っていたもう一本の剣の一撃で5m以上吹っ飛び壁に激突する
左肩から右脇腹にかけて斜めに切り裂かれていた。
「やめっ」やめてそう言おうとした僕に矢が刺さる、両足と胸に3本の矢が刺さっていた。
僕は立つことが出来ず壁に寄りかかり座り込んだ。
何故だ?どうして?どうして...涙を流す僕を見下ろしオーリンが言う。
「他の4人も早くやれ。やらないならこいつの仲間入りだぞ?」
わかっているとナツユキが刀で刺し、モルが槍を突き刺す。
そしてユーアが駆け寄ってくる。助かったヒールしてくれ!そう言いたいが声が出ない。
「勇者様、あなたが死んだらその体は私が丁重に保存致します!純潔の私が永遠にその棺を守りあなたの側に寄り添います!そして!あなたの活躍を広めると誓います!勇者は死んでこその勇者なのですから!」
そういい満面の笑みでナイフを突き刺された
なんだこいつら狂ってる...
「私は攻撃魔法は苦手なんだけど」
アルカが両手を前に出すと魔方陣が出て稲妻が放たれた。
僕の体から肉の焼けた臭いがする。
「どうして」
言葉が出た。正に最後の言葉だろう。
「どうして?簡単な話さ。魔王城を攻略し魔王の自由を奪って5年。それだけの間俺たちはお前を、いや勇者を待っていたんだ!魔王は勇者じゃないと殺せない。
切っても焼いても凍らせても元に戻る。だが勇者の一撃で死ぬんだ!」
そう言って斬撃をミカゲさんの遺体に放つオーリン。吹き飛ぶ遺体。
「そらみろ死んでも魔王だ俺では斬れない。」
おそるおそるみると本当だった。服は切れているのにかすり傷程度だ。
「これで国に帰ってみろ!英雄はお前だ!お前だけだ!俺達は?露払いでしかない!」
それにと付け加えるオーリン。
「俺は姫リーシャと婚姻していたのだ!なのに...」と睨まれる。
「私は、盟約を守った。魔王倒した。人間キライ!早く国に帰りたい。」とフローレア
「俺は金の為だ。恨むなよ?みんなで決めたんだ。」とナツユキ
「ワシも金は欲しいが何より名声が欲しい!魔王討伐の名声ならドワーフの王にすらなれるかも知れんガハハ」とモル
「私は勇者様をお守りしたいのです。伝説となるあなたを多くの民が崇拝するでしょう」とユーア
「私はどっちでも良かったんだけど勇者は嫌いなの。私の魔法で死なない魔王を殺せるなんて世界の理から外れている。だから魔王も勇者も虫酸が走る。」
自分勝手だろ!...そう思ったが彼らの気持ちがわからないでもない。
ポッと出の今日転生してきたばかりの異世界人が一番の功績を得て何年も戦っていた彼等は勇者の“パーティーメンバー„と呼ばれるのだ。
おそらく勇者は魔王と相討ちになったとでも言われるのだろう。
でも、それでも!仲間を殺すなんて!!
ミカゲさんにしてきた事も許せない。今すぐ一発殴ってやりたい!
だがそんな事を考える事も出来なくなってきたようだ。
眠い...疲れた......もう休むとしよう。
僕はゆっくりと瞳を閉じた───
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