第5話 勇者になりました
目を開けると室内だった
木製の簡素な家でテーブルも椅子も木製である。
なんだろう落ち着く雰囲気。
壁にかけてあったこの時代では高価であろう小さい鏡の前に立つと自分の姿が映った。
元々の姿だ、自分で言うのも何だが平凡な顔、だが異世界においては確実に最底辺の顔だろう。
はぁとため息を漏らし室内を見て回った後外に出てみる
どうやらここは小高い丘の上の一軒家だったようで家から出て右の方向に村が見える。
ここからなら大体徒歩20分ほどだろうか?
小高い丘の上だからか風が気持ちいい、家の周りに畑を作るのも面白いかも知れない。
最近良く聞く異世界スローライフだ!
一度室内に戻るか。とドアノブに手をかけるとダダダッという音が聞こえてきた──
とっさに身を低くし音の方向を見ると30人程の騎士達がこちらに向かって来ている様であった。
鎧がピカピカと輝き先頭の騎士の持つ赤地に狼の紋章の旗がたなびく。
どうするべきか、敵か味方か分からない。
だが籠城した所でこんな簡素な家だ、燃やされたら逃げる事も出来ないだろう。
では走ったら?馬から逃げられる脚力は...ない。
残った選択肢は...これ位かなぁ?
「ドヤってみるか。」
両手を胸の前で組みドヤ顔の仁王立ち
最初が肝心だ!ナメられてはいけない。
近くまでやってきた騎士達は止まりその中の一人。
旗を持っている彼が馬を降りてこちらに向かってきた。
そして膝を付き
「初めまして!私はオルベリア王国赤狼騎士団団長のサグドール・ベルシュと言う」
強そうな雰囲気をさせた30代後半と思われる騎士団長サグドールが挨拶してきた。
「どうも、何のようですか?」
僕は短い挨拶と用件を尋ねた
サグドールは言う勇者様を城にお連れせよとの王の命です。と──
サグドールの配下の中に魔法使いがいて彼の魔法で城まであっという間にたどり着いた。
体が魔力に包まれ空に浮かんだと思ったら一直線に飛んだのだ。
城に着くと可愛らしいメイド二人に連れられて部屋に入りバスタブに入れられた。
服を脱がされ体を洗われる、こんなの初めてで恥ずかしい。
体をタオルで拭かれた後、服を着さされる。
自分でやると言ったが仕事ですのでと感情なく言われ人形になったみたいで恥ずかしい。
顔のせいで似合っていない上等な服に着終え剣を腰に着けると年配の執事が音もなく横に来ていた。
「これより謁見の間で王にお会いしていただきます。」
そう言い終えると執事は歩いていく
付いてこいってことか。
金箔なのかメッキなのか分からないが金で装飾された壁や高そうな壺や絵画を見つつ大きな門の前で止まる。
狼と赤い旗を持つ女神...だろうか女性が描かれた大きな門いや、これは扉というのか?
分からないがそこの前で待たされる。
暫くすると門が開き中に招かれた。
中は王が玉座に座っており、その傍らに妃と姫様だろうか若く美しい女性が立っていた。
こちらから見て王の左側に兵士ではなさそうな数人がいてこちらを見ている。
後は近衛兵と思われる者達が一定の間隔で壁際に立って微動だせず起立していた。
「君が勇者か?」
50代半ばで白髪混じりの王が聞いてくる。
クラスとスキルは勇者の筈...だがどうなんだろう?どうやって確認すれば?
悩んでいると美しく巨乳でいかにも魔法使いといった格好の薄い金髪に所々桃色のメッシュというのだろうか?そんな髪の若い美女が話しかけてきた。
「左右どちらかの手に魔力を込めてステータスと念じなさい。」
声も可愛かった
神は二物も三物も与えたようだ。
魔力の込めかたなんて知らないぞ?
だが右手に魔力が集まるイメージしてみると出来た様だ。
ポゥとステータスが浮かび上がる。
ステータスは自分自身しか見えないので読み上げなさいと言われたので言われた通りにする。
「Lv30クラス勇者HP190MP180 物理攻撃190 物理防御190 魔法攻撃180 魔法防御180 素早さ160 幸運100(上限)
スキルは勇者専用スキルって書いてあります。あと何故か商人「そこまでで良いわそんなクラス戦闘には意味がないし」
見えないんじゃなかったのかよ!心の中でツッコんだ。
大きなどよめきが起こる。
多くは近衛兵達からでどうやら平均より高いようだった。
「この者であれば大丈夫であろう?」
王が横の数人に問いかける。
彼らもこれならいけますねと返事をしていた。
ならば、と
「勇者よ魔王を倒すのだ!見事成し遂げた暁には姫と巨万の富、永遠の名誉が約束される」
え?姫?王の横にいる美しい少女を見るとペコリとお辞儀したきた。
「頑張ります!」
そう答えた僕の元に先程の集団がやってくる。
「よろしくな勇者!」と強そうなイケメン剣士
「あなたならきっと成し遂げられます勇者様。」とさっきの美女魔法使い
「...」ペコッとお辞儀する可愛い貧乳のエルフの女弓兵
「こいつは無口でなぁすまん許してやってくれ」と勇壮なサムライ
「エルフとはそんなものよ!よろしく頼むぞ」とドワーフの槍兵
「一緒に頑張りましょう神が見守っていますよ勇者様!」と可愛らしい金髪の僧侶
どうやらこの6人が僕と共に魔王を倒すパーティーのようだった。
「では行きましょう。」
美女魔法使いが両手を上にあげ何か呟くと足元に大きな魔法陣が現れる。
そして光を発すると体が別の場所に転生されていく───
最後に見えた光景は涙を流し崩れ落ちる姫をなだめる王の姿だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます