第3話 転生そして
闇夜をかける一台の馬車と4人の護衛達
美しい母親が怯え、されど不安を見せない様に作った笑顔で大丈夫よルカと言った。
馬の手綱を操る男性が後ろの母子をチラリと確認する
「ルカ起きたのか...大丈夫だからな!絶対に大丈夫だ」
どうやら僕の年齢は5才といった所か。
両親であろう二人の服装は良い生地を使っている上等な物だと見てわかった。
僕自身も貴族の子供って感じの服装であるし馬車の内装も装飾が中々凝っている様に思える。
しかし何やら急いでいる。
いや、慌てていると言えば良いのか?
そう言った緊張感が漂っていた。
キャアアア!と言う若い女性の声が後方から聞こえてくる。
「クソ!シェラを話しやがれ!」
男性の声も聞こえてきた
馬であろうか?動物の悲鳴と何かと交戦している様な音が聞こえる。
「チクショウ!マルセロの奴!親友だと信じていたのに騙しやがって!すまないルルナ、奴に騙されたせいで...」
そう父は涙を堪えながら後悔混じりの言葉を漏らした。
「きっと神様は見てくれているわライル。マルセロに罰を与えて下さる筈よ」
笑顔を崩さない母だがその頬を伝い涙が僕にこぼれた。
「母上...」
母は僕の声に気付き大丈夫だからねと頭を撫でた。
「ルーファン様これ以上逃げても追い付かれます!私達が時間を稼ぐのであなた方だけでもお逃げ下さい!」
鎧を着た騎士2人が馬車に並走しながら声をかけてくる
しかし、と言う父の言葉を遮って2人は言った。
「どうせ死ぬならカッコ良く死なせて下さいよ!」
「マーカスとシェラの仇を取ってやりますわ!」
2人の騎士はそう言った後、御武運を!と一言残し踵を返して後方に突撃する。
母と僕は馬車後方にある小さな窓から外を見た。
なんだアレは?犬や狼より一回りは大きいだろうか
昔動物園で見た虎やライオンの様に大きく夜に溶け込む赤黒い体毛、眉間から尻尾の先まで一直線に続く真っ白な馬の様なタテガミをした犬科ではなく猫科を思わせる大きな生き物。
それが見えているだけで数十匹追いかけて来ているのだ。
騎士達の攻撃をヒラリと避けつつ爪で切り裂いていく...
それはもはや戦い等ではなく虐殺でもない。
ただの遊びであった。
母はそれを見ながらブラックホーンめ!と唇を噛み見つめていた。
どれだけ走っただろう
数分?数時間?騎士達が殺されてからしばらくたった。
後ろを見たがブラックホーンとやらは見当たらない
諦めたのか逃げきれたのか...
「ハンナとジェフが時間を稼いでくれたお陰で助かった」
そう言い終えると父の姿が暗闇に飲まれる。
何が起きたのか理解するのに数秒を要した、父は右側から来たブラックホーンにくわえられ連れていかれたのだ。
「ライル!」
母の叫びと共に馬車が横向きに倒された───
砂ぼこりが辺りに舞う中で母が立ち上がる。
母は頭から血を流していたが僕は大きなケガはしていない。
母がとっさに守ってくれたのだ。
「私達が死んでもルーファン家の血は途絶えない。絶えたりしない!ルカ...私が守ってあげるからね。」
そういって腰にある短刀を抜いた母は馬車を出て外へ行く
母は実は強大な魔術師で父は偉大な剣士だから僕は助かる。
─そんな筈はない
なら僕のスキルが発動して
──都合が良すぎる
近くを通りかかった英雄や達人が
───現実を見ろ!
前を見ると口の周りに血を付けた一匹のブラックホーンが馬車に入って来ていた。
そしてその大きな口を開けると血に濡れた鋭い牙がこちらを見つめる。
僕は瞳を閉じてその時を待った。
そして街道に聞こえたのはブラックホーンの由縁たる金管楽器の様な遠吠えの音───
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